第11話 死神探偵は優秀なのです!
ネットでまずは、被害者霊さんから聞いた学校名を検索する。
「お、一番上に事件ってある」
『それだけ世間を騒がせたって事じゃな』
「そうみたいだね」
事件を検索して、一番最初に出て来たのは三年前、とある女子高で連続行方不明事件が発生した。
合計人数は十人、その年に近くの地域で十三人が行方不明になり、未だに誰一人と発見されてないらしい。
「そこから始まったのが、多発女子高生行方不明事件か」
ネット記事にまとめられていた。
かなりの人が行方不明になっているらしい。
その全てが同じ犯人だとすると、今頃は全員作品になっているだろう。
行方不明って事で顔写真も広まっていた。
「あ、これです。自分」
「⋯⋯林凛」
二文字のフルネーム。
「ニックネームはリンリンでした」
「そうなんですね⋯⋯」
興味無い。
ふむ。確かに顔立ちは良いな。
被害者の共通点はやっぱり顔か? 顔なのか?
「学校への聞き込みもしたいけど、一配信者が行けるかな? あの人に協力を仰げば行けるか」
まずは被害者霊の学校を特定した。
次に住所を聞いたので調べて家の場所を特定。
そこから通学路を聞いてメモメモ。
「バスとか、電車、他には何か使ってたりする?」
「ううん。自分は歩きだけ」
「わ、私も歩きだけです」
新参者の被害者霊がゆっくりと教えてくれた。
二人の共通点は性別、容赦の良さ、それと歩き通学か。
「他の被害者については何か知りませんか?」
⋯⋯何も知らないのか。
とりあえずどの道で普段帰っていたのかだけは確認できた。
後はそこら辺を漂っている地縛霊とか浮遊霊とか色々な霊に聞き込みすれば良いだろう。
長く生きた霊ほど知性とかも高くなるしね。
「だけどこれはネットなんだよなぁ。テレビとかの切り抜きもあるけど、完璧に信用できるモンじゃない」
『そんな信用できる情報どっから得るんじゃ?』
「情報屋。信頼第一だからね、それ相応の報酬を払えばきちんとした情報を絶対にくれる。嘘ついてバレて、敵は作りたくないだろうからね」
後は地黒さん経由で情報屋を紹介してもらおう。
地黒さんなら沢山の情報屋と繋がっているはずだ。
『構わないが、おかしなことしている訳じゃないんだな?』
そんなメッセージが来た。
『全く違う』
と送っておく。
『わかった。俺が紹介する情報屋はデータには残さないために直接会って情報を受け渡しする。良いな?』
おっとそれは良くないぞ。
先生とかなら付き合いが長くて何とか普通に喋れてるし、親友の氷室さん達も話せているけども、いきなり見知らぬ大人と会話なんてできない。
いーや、今回は会話じゃなくて情報を手に入れるための手段で、情報を聞くだけだ。
そう、今回は聞き手。
聞き専なのだ。
問題なかろう。
『問題ない』
『合言葉とか必要だけど、大丈夫なんだな?』
おっとそれは厳しいよ地黒さん。
いやでも、情報屋なんだから顔を割るようなバカなマネはしないか。
なら大丈夫かな?
うん。それなら問題ない。
『構いません』
指定された場所にやって来た。
「君か。あの人の紹介で僕に会いに来た少女ってのは」
合言葉なんて使わなかったし、対面で話してきやがった。
少しは警戒して!
武器持ってたり、魔法使えたりするかもしれないじゃん!
両方とも正解だけど、今は武器を持っている訳では無い。
大丈夫落ち着け。
相手は紳士そうな男性だ。
今のコミュ力レベル一億であるわたしなら自然な流れで会話できるんだ。
大人気配信者を舐めるなあああああ!
「⋯⋯」
ダメだ!
コミュ力あっても目を合わせれない!
案内人の服装で来ているから、わたしの正体してるくせに、事実確認してくるなよ。
「えっと、だんまり?」
「ちっ」
「舌打ち!」
違う!
「違う、そう言う訳では無い」って言いたかっただけなのに!
噛んだ!
初っ端から噛んで誤解された!
わたしそんな乱暴な性格じゃない!
ど、どうすれば良いんだ?
こ、凍らすか?
『バカもんか。我に代われ』
死神ちゃん取引できる?
『お主よりかはできる自信はあるのじゃ』
語尾要らなくない?
代わったらその語尾辞めてね?
『我のチャームポイント! まぁ良い。代われ!』
わたしの中身が入れ替わる。
髪の毛が白くなった。
おばさんみたい。
「すまんな。間違いないよ。そもそも、地黒のじいさんからの紹介でこの格好だ。疑ってないよね?」
「⋯⋯ッ! いきなり饒舌だね。ああ。案内人、死者と生者を繋げる役目を持ちながら、死人を特定の場所に逝かせることができる。その後は誰もわからないけど」
「仕方なかろう。死後の世界なんて死なないとわからぬモノだからな。それより、内容は把握しているか?」
し、死神ちゃんがまともに会話できている、だと?
わたしの身体を借りて喋っているので、実質わたしが喋っているモンだよね!
赤の他人の異性の大人と会話できているわたしスゲー!
「ああ。なんでも三年前から発生した女子高生行方不明事件の詳細が知りたいんでしょ?」
「うむ。その通りじ⋯⋯だ。できれば犯人を知りたいところだが⋯⋯」
「すまないけど、それは裏社会でもわかってないんだ。だから売ることはできないね」
「そうか。ならば、テレビやネットで出ている情報は完璧に事実に基づいているのか知りたい。時系列、被害者の数、被害者、それが正しいのか」
「そうだな。結論から言うと、正しいよ。行方不明者の順番もしっかりと正しいね。それだけか?」
「うん。それだけで絞込みは可能だからね。できれば行方不明者の性格とかも知りたいけど⋯⋯」
学校関係者なのは確定だな。
ここまで一箇所の学校で集中してできるのは学校関係者だけだ。
後は誘拐した犯行時刻、タイミングなどを割出せれば良い。
その時に役立つのが通学路と、被害者達の性格だ。
性格や趣味嗜好などからどこの場所に行くのかを絞り込める。
学校であるはずだ。
お気に入りの場所が。
「悪いけど、そんな商売に繋がらない人を調べる余裕は無いね。君が望む情報はあまり持ってないや」
ダメだったか。
絞り込めたら、不法侵入で調査しようと思ったけど、きちんとした方法で調査及び潜入しよう。
被害者霊が二人(しかも違う学校)だけだと、まだまだ犯人を追うのは大変そうだ。
「あまり良い情報は売れなかったから、報酬は少なくて良いよ」
「地黒のじいさんに請求しておいて。それじゃ」
「ちょっと待ってよ。あのバケモノに取り立てしろって?」
「うん。大丈夫。わたしの名前を出せば、応じるさ」
わたしのマネをしながら地黒さんを使った。
ま、わたしもお金なかったので地黒さんに頼るつもりだったから何も言わないけどね。
ごめんね地黒さん。
払ってくれるとは思ってるよ。
地黒さんって頼られたら結局応じちゃう甘ちゃんだからさ。
家に帰って、椅子に座る。
何か一人で喋る、解説系の人風に。
「よし、始めるか」
今日は死神ちゃんが普通に他人と話せることを知れた、良い日だった。
今から始めるのは、現実で調べた結果を述べて、予想を話していく。
別にそれが犯人特定に繋がるとか、そんな考えではなく、ただの経過報告だ。
わたし自身も普通に追っているけど、動画のネタとしても追っている。
私情の復讐への道であり、エンタメでもあるのだ。
広告収入の方が儲かるし。
「皆さんこんにちは、死神探偵だよ」
わたしは用意した台本をガン見しながらタラタラ述べる。
顔を隠すように深くフードを被っているので、目線はバレない。
なので、台本をガン見していても、誰にも気づかれないのだ!
「背景を変えて、噛んだところはネタに使えるからそのままで⋯⋯台本誤字って読めなかった部分はカットしよう」
編集をちゃちゃと終えて、すぐに公表する。
これは犯人を追ってからすぐに、多くの情報を捕まえたと世間に印象付けるためだ。
死神探偵優秀って言ってもらいたい。
「⋯⋯住所とかは言ってないけど、通学路とか晒しちゃったけど、良かった?」
動画で出した新参者の被害者霊に問いかける。
「あ、はい。⋯⋯これで家族にもう死んでるよってわかってくれると思うから」
「それで生きる希望がなくなって、自殺しちゃうとか考えないの?」
「無いですね。妹が居ますので。でも、きっと悲しむと思います⋯⋯だけど、また会えるんですよね?」
「うん。約束だからね。犯人追い詰めたら、作品を全部解体して、元の形に繋ぎ合わせて、君達の霊魂も元の形にして、死体に流す。それで魂が定着したら回復魔法を少し使えば、蘇生できる」
そのためには全ての作品を絶対に手に入れないといけない。
だから確実に犯人は生け捕りにする。
ダンケンには捕まえさせない。
そしたら死体、火葬されちゃうもん。
その場合は横から怪盗の如くかっさらっていこう。
とりまコメント確認。
『さすが死神探偵! 短時間で被害者特定!』
『学校関係者で手術の腕前あるの変じゃない?』
『学校関係者だと決めるのは早いのでは? JK狙う変態かもしれない』
『頑張って死神探偵!』
『もっと死神ちゃん見たい!』
などなどの賞賛やツッコミのコメントが見られる。
「ぐへへ」
『顔面崩壊してるぞ』
死神ちゃんが素で引いた。
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