第10話 ダンケン鮭川達彦の目線、ライバル登場かもしれん
「今回発見されたモノ⋯⋯以降は『作品』と呼ぶ事にする。この作品は現在三種類のダンジョンで回収されてる。ダンジョン科で作品の現物を所持しているのは、愛知、東京、愛媛だ」
俺、
「ダンジョンでの事件は大抵、解決しずらい。証拠が残りにくいからな。だが、中には残るモノもある。そこら辺の知性が欠けた奴らだな。今回も同じ類の人間だと思われる」
俺達か抑えてる作品は二つしかない。
確保しに向かった人の話では、二人の少女に見られたとか。
まぁでも、他の人も発見しているだろうから、誰がネットに拡散したかは分からない。
「同じ類って事は、魔力暴走ですかね?」
「ああ。そうだと思う。⋯⋯だけど、今回は異質だ。ここまで丁寧に扱ってるんだからな」
魔力暴走、本来身の丈に合わない魔力を手に入れると病気になったりして、高確率で死ぬか植物状態に陥る。
しかし、その魔力過剰に適合する人間が現れる。
すると今度は増えすぎた魔力に侵されて、暴走状態になる。
暴走状態にならずに扱える者はひと握りしか居らず、そんな人はとても強い。
暴走になると凶暴化する。
「それじゃ、おさらいは終了。作品の解剖が済むまでは各々の仕事に集中してくれ」
ひとまず解散となる。
とまぁ、俺達ダンケンと呼ばれている人間はダンジョンの謎について調べるのが仕事な訳だけど。
「桜、何見てるんだ?」
結構自由な集まりだからな。
「あ、死神探偵の動画見てたんですよ」
「あー知ってる知ってる。謎解きをする、良くある配信者だろ?」
「ちょいちょい! いくら達彦くんでも、死神探偵ちゃんをバカにするのは一ファンとして許せませんよ! この人は本当にダンジョンの謎を解決してるんです! 魔力の流れがおかしくなった原因とか、魔物の動きがおかしい原因とか!」
「へいへい。分かった分かった」
死神探偵の熱狂的信者ってのは分かった。
実際、それができているから俺の耳にも届くんだよな。
でもよ桜。
「今は仕事中だろ?」
「これも立派な情報収集です。ほら、コレ見てくださいよ!」
「なになに?」
死神探偵も今回の事件、作品を追っているようだ。
見た感じ若そうだけど、顔がいまいちわからない。
だけど、俺達と同じ目線で考えて確かなる答えを言っている。
「結論が同じだな」
縫い目の丁寧さ、血が無いのに血流の良さそうな見た目、その辺は俺達でも把握済みだ。
『全部女子高生だったりして⋯⋯』
そんな呟きが聞こえた。
「どうします達彦くん! 死神探偵は殆どの謎を解決しちゃってるんですよ! ライバルですよライバル!」
「警察が本気出したら趣味、動画のネタでやってるような奴に負けるかよ」
その自負はある。
俺達が調べる事件はダンジョン絡みで人間が関わったモノ、コイツはダンジョンに関する謎を調べている。
そもそも調べる対象が違うんだ。
「つーか、これって規則制限とかに引っかからないのかよ?」
「ダンジョンはそこら辺ゆるゆるなんですよ。簡単にダンジョン内部の情報が手に入るので、出向く必要がない⋯⋯中には迷惑系もありますけどね」
命の駆け引きがされる場所で⋯⋯でも女子高生か。
確かに、あの作品の顔に使われた人達はかなり若そうだった。
「⋯⋯そういや、行方不明の女子高生が過去に多発してたよな? ちょっと調べるか。桜も来い」
「え、嫌ですよ! 自分は今、死神探偵ちゃんの動画を楽し⋯⋯いえいえ、情報収集をしているんです!」
「ほら行くぞー」
その後、他の仲間も呼んだ。
俺が信じている人間達だ。
こき使っている駒とも言えるけどな。
実力と知能は折り紙付きだ。
「たっさん」
「要、仕事中はせめて名前で言おうぜ?」
「俺達の中じゃないっすか。⋯⋯んで、今回の犯人の属性の検討はついてるんですか?」
「現状まだだな。ダンジョンでバレるような犯罪をする奴は大抵が魔力暴走⋯⋯魔力属性に引っ張られるけど、今回はあんまりだ」
魔力属性、生物の全てに魔力は存在するけど、その内なる属性は各々違くてバラバラなのだ。
俺は魔力を見る事ができないのだが、要は違う。
だから、その属性さえ分かれば犯人は見つけやすくなる。
魔力暴走で暴れる人間はその属性に引っ張られるので、やり方が似たり寄ったりになるのだ。
しかし、今回は暴れたってよりも作品の披露だ。
属性が分からねぇ。
「死神探偵ちゃんの言っていた目立ちがり屋⋯⋯案外当たっていたり?」
「どうだろうな。それを調べるのも本来俺達の仕事だ」
過去の事件が確認できる資料室に来た。
今ではほとんどがデータ化されてパソコン一つで確認できるけど、俺は昔ながらの書類に目を通す方が良いと思っている。
ちなみに他の皆はパソコンで調べ始める。
「たっさんも現代っ子だったんだから、パソコン使えば良いのに」
「俺は機械音痴なんだよ!」
ちなみに付き添いで雪姫が寄り添ってくれる。
クールながらその優しさは最強だと思う。
⋯⋯あれ? なんか書類を変な形で見てる?
「おまっ、漫画読むなよ」
「あ、⋯⋯」
「読み進めるな読み進めるな!」
そんな感じの部署だ。
二時間ほどの時間を使ったが、見つけることには成功した。
連続女子高生行方不明事件。
色々な高校の女子高生が行方不明の状態で現在も発見されてない。
「被害者写真と作品の顔を照らし合わせるか」
「⋯⋯」
雪姫はずっと漫画読んでたし、途中から桜は死神探偵の動画見てたし、要は寝てた。
おサボり集団だよ、ちくしょう。
だからココでも俺達の肩身は狭いんだよ。
ちゃんと成果だしてるのにさ、サボりが目立って⋯⋯。
「ま、良いや。鑑識行ってくる」
結果はすぐに分かった。
俺の考えは当たっていたようで、作品と被害者の顔が一致した。
死神探偵とやらからヒントを得たのは悔しいが、今回ばかりは感謝しよう。
「今から被害者家族と作品を合わせようと思うんだけど、要は一緒に来い。二人は来るか?」
「行ってらたっつー」
「行ってらっしゃい達彦くん」
「え、俺強制なの?」
「うんじゃ、行くぞー」
作品は丈夫だったり、精密すぎて未だに解剖が上手く進んでいない。
隙間から中の魔法陣は見る事ができたらしいけど、魔除けくらいしか分からなかったらしい。
もう一つ何かの効果があるらしいけど、現在は不明の状態だ。
被害者家族の家に到着した。
インターホンを押して、出てもらう。
一応俺は警察だからな。
「な、なんでしょうか?」
「怯えないでくださいな。実はですね⋯⋯」
俺は娘らしき人を発見したと伝えた。
すぐに車に乗せて向かう。
その間に覚悟してもらう事にした。
ただ、死ぬんじゃなくて冒涜されている事を。
「そ、そんな⋯⋯」
母親は絶句した。
作品を一目見た瞬間に⋯⋯氷固まったようにピクリとも動かなくなった。
次には溢れ出す感情の全てを表した涙と共に、作品が保管された部屋中に響き渡る絶叫。
この声はこの仕事やってても⋯⋯ずっと馴れねぇなぁ。
俺達は対面で座る。
被害者の母親はきちんと家まで送り届けた。
犯人を捕まえるから待って欲しい、そう伝えて。
「絶対に犯人を捕まえるぞ」
「たっさん。いつものパターンでも、良いですよね?」
「ああ。ゲス相手ならゲスの方法⋯⋯それが俺達だ」
暴走しないでダンジョン内で犯罪する奴は、見つかる前提も考慮している。
魔物に殺された風を装ったり、食われるまで待ったりする。
そう言う奴らを罪に問うのは難しい。
だから俺達は相手が考える、『ダンジョン内なら犯罪は隠せる』をそのまま返す。
ダンジョン内なら人権も法律もクソもねぇ。
自らやったと自白させるまでよ。
ま、確証を持たない限りできないけどな。
だから世の中から拷問は消えたんだ。
暴走した奴らの場合は何も考えず犯罪をするから、犯罪を立証できる証拠が残るケースが多い。
今回は暴走しながらも知的だと考える。
「犯人追い詰めて、それでも罪を認めないって言うなら、とことん付き合うだけだ。相手は何十人と殺害して分解して組み立ててる、クソ野郎だからなぁ」
ダンケンは表向き、ダンジョン限定の警察だ。
実態は結構黒いけどな。
だけど、犯罪を犯しておいて自由気ままに生活するなんて⋯⋯許せるはずがない。
「まずは学校関係者って事で絞るぞ。現在の被害者は女子高生だけだからな。⋯⋯幸い、俺達の管轄の学校だ。俺らで捕まえるぞ、犯罪者を」
「うっす」
「はーい」
桜の声が聞こえなかった。
「もしかしたら⋯⋯死神探偵ちゃんが捕まえちゃう、かもです」
「んなっ!」
コイツ⋯⋯被害者特定を終わらせてる!
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