第2話 わたしは案内人をしています
わたしは
今日も仕事が舞い込み、わたしはカッコイイ格好に変身している。
「真っ黒なローブにフードを深く被る⋯⋯完全に真っ黒、超黒。夜に溶け込む情報屋みたいな格好⋯⋯カッコイイ」
長くしていると怒られるので、ママ達に「行ってきます」と言って外に出る。
すぐさま指定された場所に向かう。
「ちょっと君、こんな時間に何してるの?」
「⋯⋯けっ!」
警察がこ、この案内人であるわたしになんの用だ!
こちとらJKだぞ!
一歩でも近づいみてみろ、「痴漢!」って世界に轟く程の大きさで叫んで、お前の社会的地位を失望させて抹殺するぞ!
「君、高校生だよね? こんな時間に⋯⋯」
「⋯⋯」
「ちょ、逃げるな!」
逃げるなと言われて逃げぬ輩が何処にいる?
しかし、体力もある訳ではないため、さっさと路地裏に入る。
「あれ? 何処に⋯⋯」
警察はわたしを見逃して、どこかに消え去った。
ふっ、これが黒い格好の理由なんだよ。
「さて、どうやって降りたもんか」
壁キックで建物の屋根に登れたが、降りるとなるとまた話が変わる。
ちょっと、いやかなり怖いや。
「警察に見つかるのも厄介だし、このまま行こ」
建物の上を移動する忍者の様に、わたしは指定された場所に到着した。
「遅いぞ」
「ごめん」
「どうせ警察にでも接敵したんだろ? ちゃんとパトロールルートは把握しておけと何度も⋯⋯」
地黒さんの話は無駄に長いし、ド正論なのでただ聞くことしか出来ない。
悔しいです。
「まぁ良い。依頼人に会いに行くぞ」
「うん」
顔を見られないように深くフードを被る。
ラノベとかである『認識阻害』的な能力はこのパーカーには無いので、しっかり隠す。
わたしの魂とか見れるタイプだったら、先にわたしが邪眼で見つけられので、その時は全力で逃げる。
「おまたせしました」
地黒さんは仮面を被り、顔を隠して依頼人と会う。靴に細工がしてあり身長が誤魔化されている。
高身長に見える地黒さんは本当は165くらいだ。
トップシークレット急の秘密なので、組織でもごく一部の人間しか知らない⋯⋯事になっているが全員知っている。
「それで、案内人にどう言ったご要件で?」
普通の男性かな?
「はい。実はわたし、冒険者をしているんですが、魔物の集団に会い、嫁に助けていただいて⋯⋯」
泣き崩れたかのように倒れる男性。声的に男性。
「なるほど。もう言わなくて良いですよ。奥さんにもう一度、会いたいんですね?」
「はい。情けない話です。案内人の力ならもう一度会えると聞きました。お願いします。大切な家族なんです。本当はわたしが守りたかったのに⋯⋯」
泣き声かな?
とりあえず依頼は理解した。
冒険者、ダンジョンを探索して魔物を倒し魔物がダンジョンから出て来るのを阻止し、内部を探索して資源の回収、時には未知のエリアを見つけ出す人も居る。
ダンジョンは命の危険があるが一攫千金を狙う人も居る、命懸けのギャンブルのような場所。
「分かりました。引き受けましょう。な?」
わたしは頭を前に倒した。
「あ、ありがとうございます!」
土下座をしているんだろう。きっと。
場所は変わってギルドである。
ここからゲートを通り、目的のダンジョンに向かう事が出来るのだ。
ギルドから冒険者カードを受け取る。
これは冒険者講習を受けて、冒険の許可を得た証であり、ダンジョンに行くならこれが必要だ。ここで登録してある武器も渡して貰える。
経験やらなんやらでランクも用意されている。
わたしは登録している武器が無いので素手で向かう。このカードも偽装である。
大抵の冒険者は筋トレや魔力操作訓練で戦う準備をする。
それ以外にはアイテムの力を使って戦う人もいる。
レベルやスキルと言った概念はないが、魔力を使えばそれらしい事は再現可能。
魔力が身の丈に合わない程に多いと病気になったり、逆に少ないと生命維持が困難になる。
魔力とは生命エネルギーのようなモノなのだ。
ゲートを通り、今回は『ハイエナ街道』のダンジョンに向かった。
ここは空間が広がり、馬車が通りそうな道があるダンジョンだ。
夜なので、アンデッド系の魔物が多く徘徊する。
ただ、アンデッド系の魔物はわたしに近づいてくる事は無いので、安心と言える。
「それでは案内します」
依頼人の案内により、案内人であるわたしは奥さんと別れた場所に向かう。
ここにはあまり来ないんだけど(遮蔽物が少ないから)そこそこ人気な場所だと知識的には知っている。
出て来る魔物が倒しやすくて、そこそこ数が多く、そこそこ弱い為に、冒険者を始めた人達が金稼ぎに来るらしい。
「ここです」
歩くだけなら体力はあまり使わないからありがたい。
到着した場所には何も無い草原っぽい場所である。
わたしを中心に一定の範囲内にアンデッドは来ないので、余計に静かに感じる場所だ。人も居ない。
夜に冒険する人は少ないよね。
「居ますね」
女の霊がわたしにはくっきりはっきりと見える。
依頼人が来た事に喜び、微笑みを浮かべているから間違いなく、依頼人の求めた人だろう。
ここからがわたし、案内人の仕事だ。
「それでは、視覚可能にしますね」
その霊にわたしは触れえて、邪気を流し込み、霊魂を強めさせる。
凄い用語の羅列に感じるが、邪気とは一種の魔力なので魔力的何か、霊魂は霊の魂であり強さの器ざっくり言えば魂だ。
それと、魔力以外のエネルギーをわたしはざっくり邪気と呼称している。本当は魔力以外に二種類のエネルギーを持っている。
「お、おお! か、カナエ!」
「りょうくん。生きてたんだね。良かった本当に良かった」
感動の再会と言うやつだろうか。
当人達はとても嬉しいそうだ。
「俺なんかのために、自らの命を持って、助けてくれてありがとう。守れなくて、すまない。すまなかった」
「ふふ。真面目なんだから。別に気にしてないよ。それに、私の意志で助けたんだからさ。会いに来てくれて、ありがとう。娘を頼んだね」
「あぁ。もちろんだ! もちろんだとも!」
ダンジョンで死んでも尚、ゴーストと言う魔物に成らずに霊体として残ったのは、さすがは冒険者と言ったところだろう。
精神力が凄い。
「良かったな。今回はクズじゃなくて」
地黒さんがボソリとわたしに呟いた。
⋯⋯さすがに、我慢できないかな。
このままハッピーエンドで終わらせるのは、案内人として⋯⋯いや、わたし自身が許せない。
『娘さんや他の女性』も可哀想だ。
「少し良いですか、カナエさん」
「そう言えば、あなたが触れてから見られたり会話できる様になったのよね。本当に、凄い力ね」
「⋯⋯一つ聞きます。アナタの娘さんは中学生ですか? 二年生くらい。髪の毛は伸ばして発育も良い」
「そ、そうです。どうして分かったんですか?」
男から殺気を感じる。
地黒さんも気づいたのか、懐に隠してあるハンドガンの引き金に指をかけた。
「⋯⋯貴女の娘さんは死んでますよ。霊体になると死に際の格好に左右されたりするんですよ。裸なので⋯⋯入浴中などに殺されたか、或いは犯されて殺されてます。暴行の痕も見えるので、長い時間苦しめられたんじゃないですか?」
「な、何を言ってるの?」
わたしは最初から、依頼人の顔などが見えなかった。
邪眼の力を抑えたら見えるけど、見たいとは思わなかったので抑えなかった。
ずっと、依頼人が『大量の女性の悪霊』によって見えなかった。
「何を言って⋯⋯」
「そうだ! 何言ってる、俺が何をしたって言うんだ!」
「⋯⋯これを見た方が早いんじゃないですか?」
わたしは依頼人に取り付いている悪霊に邪気を流し込み、誰でも視える様にする。
ま、ただ力を与えている様なモノであり、悪霊は怨念が強ければ強い程強くなってしまう傾向もあり、今なら悪霊側の力で依頼人を殺せそうだけど。
「な、なんだこれ」
「嘘、でしょ。本当に⋯⋯」
わたしは自分の憶測を話す事にした。
「今回依頼をした理由はいまいち分かりませんが、下郎の考えを理解したとも思いません。わたしの憶測ですが、こう言う事を何回も繰り返したんじゃないんですか? そうじゃなきゃ、ここまで悪霊は取り付かない」
個人への恨みだけで、ここまでの悪霊が居る。
それは依頼人がどれ程の悪行を積み重ねたのかを物語っている。
女を食い物にして、自分の欲を押し付けて⋯⋯最終的に殺す。
わたしはそんなクズが嫌いだ。
「因果応報。依頼人の罪はそれ相応の罰により、制裁されるべきだ」
わたしは地黒さんを見た。
好きにしろ、そう言っている様に目を逸らした。
「ふ、ふざけんな! こ、こんなのがなんの証拠になるんだよ! お、俺は、嫁を無くして、辛いってのに!」
「⋯⋯わたしは霊魂を運ぶ事が出来る。この人の霊を娘さんに合わせる事も出来る⋯⋯生きていれば、ね。アナタが娘さん狙いでカナエさんに近づいたのか、理由は分かりませんし興味もないです」
わたしは依頼人に背中を見せながら淡々と答える。
ただ、わたしがやる事は一つ。
「自分の背負ったカルマをどう、拭いますか?」
わたしはカナエさんの霊や悪霊達に邪気をさらに流した。
さぁ怨念達よ、自分達の屈辱を、憎しみを、今ここで晴らせ。
少しの温情でもあれば、生き残るんじゃない?
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継続してお読み下さりありがとうございます!
もう一話19時くらいに投稿する予定です。
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今後とも、悪善ちゃんをよろしくお願いします。
??ちゃん『我はもう少し先じゃ!』
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