今すぐ一段降りなさい
分かりましたよ、といってすぐ降りる。おれは世界で一番素直だから。
だからって、この星で一番賢いなんて思ってるわけじゃない。それは穿ちすぎだ。
そうやって掘り進めていって、地球の反対側にいったら?
昨日見た本から引用すれば、『面白くもない仮定は、手に負えない。』
だけど、あの本は間違ってもいる。つまらない仮定よりつまらないものは?
しっかりと足を付けた地面そのものだ。
だから、今からするつまらない話は、現実のことだと仮定する。
うーむ、これは困ったな。
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だからおれは、ふざけた微睡みから自分を叩き起こして、ミルクを口にした。
―だからと言って、こればっかりは...
あんな言葉、弁護士センセが言うかよ?ああいう肩書は、イエスをノーにするか、その反対だけであって、その中間は存在しない。だけど、アイツの苦労も分かる。おれ達の相手とは、怒りそのものだった。どうやって形ないものに、形を与える?
そいつは立法者か、助産婦の仕事だ。
―サイボーグなんてのは、どうなんですの?
―奥さま。失礼ながら、ああいったフィクションを少しでもお読みになったことは?
―それじゃあ、説明してくれるのね、親切に。
―ああいうのはあくまで人体の延長にすぎないんです、つまり。
おいおい、結論を急いでくれるな。おれだって物書きじみた真似もしたい。
―あのイカれた若造は?
―ご存じないんですか。
どうなったか知りたきゃ、テレビでも点けなと言いたげだ。お前らも、そうだろ?
おれも知らないが、別に知りたいとは思わない。人の入ったトースタの中を覗いてみたいか?いやもっとひどいはずだ、椅子型の交流電流の悲劇だな。
―それじゃあ、だれがチンパンジーに人権を与えたの?
―違いますよ、彼らは取り戻しただけです。
―動物保護なんて、まるきり欺瞞だわ。
―仕方ありません。それは利益を生むこともあります。
こんな風に意図的に発言を切り取るのもいいなぁ、物書きの特権だろう。それはそれとして。
この夫人の発言が、おれの初出馬の初めの一歩。
おれは亡き議員閣下の生まれ変わりであり。
そうでなくても、立派な人格を有したヒトとして。
おれは12歳にして、おそらく史上初の、ネコ科の議員になった。
そしてここから、おれの華々しい6年間が始まるわけだが、別にそれをお前らに教えるつもりはない。
読み聞かせられた本の一節を借りれば、『これが猫の物語である以上、ここで締める他あるまい。これ以上は、議員の一生になってしまうためだ。』
そして最初に戻れば。
どれだけ現実がおもしろくなろうとしてるか、分かるはずだ。
あまりに小さくて気づかなかった @o714
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