第12話 旅

中心部の見慣れた街並みを過ぎると山に入った。商人たちが賑やかな街をどんどん過ぎていく…。街を過ぎると、山が出てきた。緑が豊かなこの山は多くの野生動物も住み、池があったり、綺麗な川があったり、私はここによくラルクとお供とルークとお忍びで遊びに来ていた。



何だかもうそれもないのかと思うと懐かしい気持ちになる。楽しかった思い出を思い出すたびに私の心は少しずつ崩れていくようだった。



山の中で一旦休憩をとった。侍女が私の好きなストレートティーを用意してくれた。ラルクは馬車の近くを走っている。自然の中がラルクは好きなのだ。少し休憩してまた馬車に乗り旅が再開した。



この山を越えて、帝国の西側の街に着くとそこで一旦泊まる。私たちが泊まるのは家族御用達のルベリアルホテル。有名ホテルで豪華でありつつとても優雅で落ち着きのあるホテルだ。そこは、湖が近くにあるので高い部屋だと湖が一望できる間取りになっている。久しぶりに止まるので楽しみだ。




ホテルに着くと、案内人が待っていた。彼は私たちを一番最上階の部屋へ案内してくれた。昔一度泊まった時のように大きな湖が広がっていた。何事も吸い込むような美しさだった。



わたしは1時間ほど外のベランダのスペースでお茶を嗜んだ。ジャスミンも人がいないので、楽しそうにお菓子を頬張っている。広い部屋にわたしと侍女の2人の人間しかいない…。やはり寂しい気持ちになった。



もうホームシックかしら…。





青い大きな湖を見ながら、ウエスターナでなにをするかを考えた。こちらでは読めなかった本を読もうとか、ウエスターナのお菓子はどんなものなのかとか、どんな人と出会えるだろうかとか。私は寂しさを紛らわすために思いついたことを、侍女のイリーナに話した。




「お嬢様ならきっと素敵な方々に恵まれますよ。たくさん楽しみがある方がいいと思います。」



と私のことを肯定してくれた。彼女の優しさに浸りながら、私は夕食を食べ、寝る準備をした。

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