第5話

 キラキラとあたりに魔力の残滓が降る。

 それは雪のような輝きで。


「アリス」 


 黄金の光の中に黒衣の青年は立っていた。


「やあ、ユリエル」


 唇が少し上がった。

 それで微笑んでいるようだ。

 その姿が透けているのをみて、私は息を飲んだ。


「アリス……」 


 ああ、とうなずく。


「ここへは暫定的に呼ばれただけだから。つまりは予定外だったということ」

「あなたがいなければ、私闘えなかった」

「私たちは白と黒の魂の双子。共鳴すればなんでもできる」


 アリスはそう言った。


「それはどういうこと」

「……君は、もう一つの世界のことを覚えているんだよね」


 私は驚く。


「じゃああなたも……」


 アリスは目を瞬く。


「……」


 伏せたその目が答えだった。


「続きは王都で」


 アリスの姿が解け始める。


「アリス!」

「私はいつもあなたの側に」


 その声だけ残してアリスは消えた。



「コノ。ありがとう」


 コノは深い眠りについているようだ。

 アリスを呼んだ瞬間倒れてしまった。

 息をしていてよかった。

 布の家の寝台に横たえる。


「私は王都に行く。答えを探しに」


 返事はない。

 私は立ち上がる。

 布の家の出入り口を開いた。

 空が白んできているがこの森はどこまでも暗い。

 でも向こうに光があるなら。


「私は歩いていくよ」


 そう決意を新たに、私は一歩踏み出す。 

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聖騎士と黒のアリス 錦木 @book2017

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