第2話
1781年 3月 プロイセン
朝、使用人達に着替えさせられた後に家族達と食事を取る。食事の作法などは体が覚えているようで怪しまれることはなかった。食事がもうそろそろ終わりそうな時に父が口を開いた。
「お前が熱を出し寝込んでいたことに国王陛下は心を痛めていたという。そこで、完治したという報告に行こうと思っている。そして、お前も連れて行こうと思っている。どうだ、体調は大丈夫か?」
「大丈夫です。動きたくて仕方がないぐらいです。」
私がそう返すと、父はそうかと返しながら笑っていたが少し国王と会うのを嫌がっているように感じた。仲が良くないのかもしれない。そう考えながら食事を終えると母は寝室に向かっていってしまった。どうやら昼夜逆転した生活を送っているらしい。再び自室に戻り着替えを済ませると、父と一緒に馬車に乗りサンスーシ宮殿という場所に向かった。
宮殿に到着し、馬車から降りると父は慣れた感じで庭を進んでいく。どうやらこの先に国王がいるらしい。しばらく進むと軍服を着た老人が椅子に座り、犬と戯れていた。父が老人に話しかける。
「陛下、私めの息子が病気から回復したこと、陛下のお見舞いえの感謝を申しあげに、息子と参りました。」
「うむ。彼をここに。」
国王に呼ばれて彼の近くによる。すると、自然と背筋が伸びるような雰囲気を感じた。すると国王が口を開いた。
「まずは、君の病気が治ったことを喜ぼう。あと、記憶が混濁していることも聞いている。」
「陛下のお気持ち感激の極みであります。」
私がそう答えると、国王は黙ったままうなずいた。どうやら、話し方が変わったことも知っているようだ。そして彼は自らの名を名乗った。
「余の名はフリードリヒ二世である。」
その時、私の頭の中ですべてが繋がり、同時に体中に電流が走った。そして自分が一体誰に転生したのかが確定した。私はフリードリヒ・ヴィルヘルム三世に転生したのだと。間違いない、霊感があり、昼夜逆転した生活をしている女性を妻に持つ男は私が知る限り一人しかいない。フリードリヒ・ヴィルヘルム二世。後世に肉の機械と呼ばれる漁色家だ。そして、あの雰囲気にも納得がいった。目の前の老人は、かつてフランス・ロシア・オーストリアの列強を相手に七年間戦い抜き、最後に勝利した大王であるからだ。
この後、何を話したかは特に覚えていない。気づいたら自分の部屋に戻っていた。私は今、これからどうすればよいか、深い思考の沼に潜っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます