94.崩壊と予言って何?
いっぱい覚えて頑張って、にゃーは偉くなった。だから話せるようになったんだよ。にゃーと話せたら、好きなご飯も聞けるし、遊ぶ時も楽しい。
でも……
「コテツ、はなすの?」
コテツもお話できるようになるかな。そう聞いたら、コテツは違うみたい。残念だけど、いつかお話できるかも。にゃーだって最初は話さなかったもん。
皆は違うお仕事があって、僕とメリクはにゃーを連れて帰るのがお仕事なの。
「あのね、イル。実は名前がにゃーじゃなくて、シアラなんだけど」
お名前、にゃーじゃないの? 呼んだらお返事したから、にゃーだと思っていた。
「メリク、ちがうの?」
「ああ、シアラだな」
「しあら……」
ちゃんと覚えて呼ぼう。お名前を間違えるのはいけないことだよ。もしかして、コテツも違ったりする?
「コテツは?」
「コテツで大丈夫だ」
「うん」
よかった。もう間違えていないみたい。シアラは呼び慣れないけど、ちゃんと覚えよう。背中を撫でたら、シアラの尻尾が大きく揺れた。お返事みたいだ。
メリクが足元に丸い模様を出した。丸の中にいっぱい文字と絵が入ってる。きらきらと精霊みたいに光った。その上に僕を抱っこしたメリクが立って、シアラが乗る。ぴかっと眩しくなった後、お家の前にいた。
「ただいま、おかえり」
両方言ってお家に入る。シアラはお部屋をぐるりと回って、すぐ戻ってきた。ゼルクと作った籠を見せて、シュハザが褒めてくれた絵を出す。後で、ルミエルとお庭に蒔いた種も教えるんだ。
にこにこする僕に、シアラは一緒についてきた。メリクはお茶とお菓子を用意する。食べようと呼ばれて走ったところに、いきなりサフィが来た。
「大変よ、崩壊が始まったわ」
「……くそっ、予言通りか」
ほーかい? よげん? 初めての言葉に首を傾げる。僕に触れたシアラがびくっと揺れた。何か怖い響きのような気がする。メリクは怖い顔をしていたけど、僕に気づいていつもの笑顔になった。
「大丈夫だ、イル。怖くないさ」
「うん」
メリクが怖くないなら、僕も平気。抱き上げるメリクに手を伸ばす。首にぎゅっと腕を回して、いっぱいくっついた。なんでだろう、嫌な感じが消えないの。
「崩壊はどの程度だ」
「まだ若い世界からよ。そうね、十数個かしら」
「もっと早い」
ゼルクが怖い顔で現れた。何もないところに、突然いたの。声がして振り返ったらだよ? 玄関じゃないところから入ったのかな。
シュハザやルミエルも来て、皆、怖い顔をしている。嫌なことが起きているんだ。そう思った。僕を撫でるメリクの指先は優しくて、温かくて。このまま何も変わらないといいのに……。僕は何も出来ないのかな。
「イルちゃん、遊ぶのはまたね」
「イル様は笑っている方がいいですよ」
ルミエルやシュハザは玄関から帰っていった。皆、どこから出たり入ったりしているのかな。不思議だね。きょろきょろと部屋を見回したら、おかしなことに気づいた。
精霊、どこにいるんだろう。いつもお部屋に必ずいたのに。
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