第3話「幸せだったころ」

 日付: ◯月◯日


 今日も学校でいじめられた。私はいつも笑顔で強がっているけれど、心の中では本当に辛い。彼らは私をからかい、嘲笑い、傷つけることで楽しんでいるのかもしれない。


 私の容姿や性格を理由に彼らは私を選んだ。それが何かの罪だとでも思っているのだろうか。なぜ私だけがこんな目に遭わなければならないのだろう。友達はいないし、誰にも話せない。ひとりぼっちで辛い思いをしていることを誰も知らない。


 毎日のいじめで自信を失っていく。自分がどんなに頑張っても、どんなに笑顔を作っても、彼らは私を見下し続ける。私はただ自分を守りたいだけなのに、なぜこんなにも苦しまなければならないのだろう。


 朝の教室で、結衣は静かに席に座り、本を手に取って読んでいました。彼女は落ち着いた表情で物語に没頭していましたが、心の中では悲しみと孤独感が渦巻いていました。


 すると、いつも結衣をいじめる女子グループが彼女に近づいてきました。リーダーの女子Aがニヤリと笑いながら彼女の前に立ちました。


 女子A: 「おはよう、結衣ちゃん。また一人でいるの?」


 結衣は本から視線を外し、少し緊張した表情で女子Aに向き直りますが、内心では心が震えていました。彼女は強がりを装って、女子Aに対して勇気を振り絞ります。


 結衣: 「おはよう。はい、一人で読書しているだけですよ。」


 女子A: 「ふふ、本が好きなんだったっけ。でも結衣ちゃん、そんなことしても友達はできないよ。」


 他の女子グループのメンバーたちも笑い声を上げながら結衣を囲みます。彼らの冷たい視線と揶揄する言葉に結衣の心はざわめきますが、彼女は自分を守るために強がりを続けます。


 結衣: 「私は本が好きだから読んでいるだけです。友達がいなくても平気です。」


 その言葉に結衣は微笑みを浮かべながら言いましたが、内心では寂しさと傷つきを抱えていました。彼女は自分自身に言い聞かせるように、強がりを続けるしかないのだと思いました。


 しかし、女子Aはその言葉を鼻で笑うと、結衣に向かって言い放ちました。

 女子A:「嘘だね。本当は寂しいんでしょ?素直になりなよ。」


 そう言うと、女子Aは突然結衣の頬を強く叩きました。するともう一人の女子が結衣が読んでいる本を奪い取りました。そして本のページを破り捨てると、さらに結衣のお腹に強く蹴りを入れました。


 女子B:「あんたなんか誰も相手にしないんだよ!」


 女子C:「調子に乗るんじゃないわよ!!」


 結衣:「うぅ……。痛い……!やめて……」

 結衣はお腹を押さえてその場にしゃがみ込みました。その様子を見た女子たちは大声で笑い出しました。彼女たちは結衣を痛めつけることに快感を覚えていたのです。


 そして放課後結衣は上手く逃げて結衣は学校から帰宅し、静かな家に一人で入りました。彼女の両親は忙しい政治家としての仕事で、普段は滅多に家に帰ってきません。結衣は一人で夕飯を作り、静かな食卓で食事をしていました。


 結衣は普段から一人で過ごすことには慣れていましたが、時折、家族の温かい食卓や会話を思い出し、胸が痛みます。


 結衣は静かに夕飯を食べながら、部屋の隅にある写真立てを見つめます。そこには幸せそうな笑顔の両親の写真が飾られています。


 結衣: (つぶやく)「また一人で夕飯か…。いつも一緒に食べたかったのに。」


 結衣は胸の中で悲しみを感じながらも、涙を流さずに我慢します。彼女は両親の忙しさや仕事の大切さを理解していますが、それでも時折、寂しさが彼女を襲います。


 結飾は食事を終えると、一人で風呂に入ります。お湯に浸かりながら、彼女は思い出に浸ります。両親との楽しい夕飯や温かい家族の時間を思い出し、心の中で涙が溢れます。


 結衣: (声を震わせて)「両親、私たち一緒に夕飯を食べれる日が戻ってきますように…。」


 結衣は悲しみと寂しさを抱えながらも、心の中で家族との絆を大切に思い、自分自身を励ましていくのでした。


 結衣は家で一人で過ごしていると、携帯電話が鳴りました。彼女は電話に出ると、母親の声が聞こえました。


 結衣: 「はい、ママ、どうしたの?」


 母親: 「結衣、ごめんね。急用が入ってしまって、今日の買い物に一緒に行けなくなったの。」


 結衣は母親の言葉を聞いて内心でがっかりしました。一緒に買い物に行くことは、彼女にとっての大切な家族の時間であり、母親との絆を感じる機会でもありました。


 結衣: (声を少し落ち込ませて)「そ、そうなんだ…。わかった、ママ。急用なら仕方ないよ。」


 結衣は口では理解を示しながらも、心の中では寂しさが広がりました。彼女はずっと一緒に買い物に行くことを楽しみにしていたので、予想外の変更に落ち込んでしまいました。


 母親: 「ごめんね、結衣。また別の日に一緒に買い物に行こうね。」


 結衣: (微笑みを浮かべながら)「うん、わかった。楽しみに待ってるよ。」


 結衣は落ち込みを隠しながら、母親に対して前向きな返答をしました。彼女は母親の忙しさを理解していましたが、それでも少しだけ寂しさが募ります。


 結衣は電話を切った後、一人で深いため息をつきました。心の中で、本当に一緒に買い物に行ける日が戻ってくることを願いながら、自分自身を励ましていくのでした。


 夕食後、結衣は一人で風呂に入るために準備を始めました。彼女はシャワーの水が流れる音を聞きながら、なんとも言えない悲しみを感じていました。


 結衣は湯船に浸かることなく、シャワーだけで身体を洗いました。その間、彼女の心は重く、深い悲しみに包まれていました。


 結衣: (声を震わせながら)「なんで…なんで私だけこんなに孤独なんだろう?」


 彼女は水滴が頬を伝って落ちるのを感じながら、自分の感情に押し潰されそうになりました。風呂場で一人きりであることが、彼女にとってますます寂しさを募らせていきました。


 結衣は水を止め、シャワーから出てタオルで身体を拭きました。鏡に映る自分の顔を見つめながら、彼女の瞳からは悲しみがにじみ出ていました。


 結衣: (小さな声でつぶやきながら)「いつか、本当の意味で家族の温かさを感じられる日が来るのかな…。」


 彼女の声はか細く、寂しさと無力感が込められていました。結衣は深いため息をつきながら、悲しみと戦いながらも、明日への希望を胸に抱いて風呂場を後にしたのでした。


 結衣は明るい朝日が差し込む部屋で、学校の制服を着たまま布団にくるまっていました。彼女の顔には疲労と憂鬱さが浮かび上がっていました。


 結衣はクラスメイトたちとのいじめに疲れ果てており、学校へ行くことがますます苦痛になっていました。彼女は自分を守るために強がっていましたが、内心では悲しみと孤独感に溺れていました。


 結衣は時計を見ると、もう朝の授業が始まってしまっていることに気づきました。しかし、彼女は立ち上がる気力もなく、布団の中に身をくるめたままでした。


 結衣:「もう…行きたくないよ…」


 彼女の声は弱々しく、自己嫌悪と無力感が混じったものでした。彼女はいじめから逃れるために学校をサボることにしたのですが、その結果として自分自身が孤立してしまったことを痛感していました。


 結衣は窓の外を見つめながら、涙が頬を伝って流れ落ちるのを抑えるようにしていました。彼女は自分の心の傷を隠しながら、一人で戦い続けるしかないのだという思いが胸を満たしていました。


 しかし、その一方で、結衣は本当に一人でいることを望んではいませんでした。彼女は友達が欲しくて仕方なかったし、誰かに支えられたいと切望していたのです。


 結衣はまた涙を拭いながら、自分の心の中に葛藤を抱えながらも、明日からまた学校へ行く覚悟を固めました。彼女はいじめに屈せず、少しずつ自分を取り戻していく決意を胸に秘めていました。


 結衣は制服のまま布団の中で横になっていると、突然家のインターホンが鳴りました。結衣は何事かと思いながら玄関に向かい、扉を開けるとそこには結衣の母親が立っていました。

 母親:「おはよう、結衣。」


 結衣:「あぁ、ママ。どうしたの?急用があるんじゃないの?」


 母親:「学校からあなたが体調不良だと聞いたから来たんだけど、大丈夫なの?」


 結衣:「えっと……ちょっと体調が悪くて休んでいたけど、今はだいぶ良くなったよ。」

 母親:「それなら良かったわ。」結衣:「心配かけてごめんなさい。ママこそ仕事の方は大丈夫なの?」

 母親:「今日はお休みを取ったのよ。結衣と一緒に過ごせる時間は少ないけれど、少しでもあなたのそばにいたいと思ったのよ。」


 結衣:「そっか……。」と時間が流れる。


 次の日結衣が学校に行きと結衣は放課後、結衣は教室を出てトイレに向かいました。その間、彼女の鞄に手を伸ばす女子グループがいました。彼女たちは結衣の鞄をこっそりとあさり始めました。中には結衣の祖母から受け継いだ手作りのお守りが入っていました。


 結衣がトイレから戻ると、その光景を目にしました。お守りは取り出され、ゴミ箱に捨てられているのです。結衣の心は激しく怒りに包まれました。彼女は女子たちに向かって大声で文句を言いました。


 結衣: 「なんでそんなことをするの?!それは私の祖母からの大切な形見なんだよ!」


 しかし、彼女の言葉は無視され、女子たちは冷笑しながら近づいてきました。結衣の怒りに対して、彼女たちは悪意に満ちた笑顔を浮かべていました。


 女子1: 「どうしたの?結衣ちゃん、お守りを失くしたの?」


 女子2: 「それくらいで大騒ぎするなんて可哀想な子だね。」


 結衣は言葉を返すことができず、彼女たちの攻撃に屈しました。彼らは彼女の心を傷つけるだけでなく、精神的に追い詰めていくのでした。彼らの冷酷な言葉と嘲笑に、結衣は一人立ち尽くし、涙を流しました。


 結衣:「なぜ、こんなことをするの!私に何の罪があるの!」


 女子グループの一人:「あんたみたいなダサい奴がいるだけで私たちの評価が下がるんだよ。取り返しがつかないほどダサいんだから、もう学校来ないでくれる?」


 結衣:「私だってただ生きているだけなのに、なぜこんなに憎まれるの?」


 女子グループの一人:「あんたのせいで楽しさが台無しになるんだから、消えてくれる?」


 結衣は怒りと絶望に満ちた目で女子グループに立ち向かいますが、彼女の抵抗は虚しく、容赦ない暴力で返り討ちに遭います。


 女子グループの一人:「お前の存在がただ不快でしかないんだよ。この学校から消えてしまえ!」


 結衣は痛みと絶望の中、生気を失っていきます。彼女の心は完全に折れ、いじめによって無力化されてしまったのです。


 この場面では、結衣の苦悩といじめに対する叫びが描かれます。彼女が返り討ちに遭うことで、いじめの残酷さと被害者の絶望感が強調されます。

 結衣は泣きながら屋上に辿り着きます。心は痛みと絶望に包まれ、彼女は自分の存在意義について深く悩んでいます。風が寒く心地よく響く中、結衣は静かに立ち止まり、内なる葛藤に向き合います。


 結衣:「生きるのか、それとも死ぬのか……。私は、私は本当にどうしたらいいの?」


 彼女の声は風に吹かれて遠くに消えていきます。結衣は手すりに手をかけ、まるで心の支えを求めるかのようにしばらく立ち尽くします。彼女の目には涙が浮かび、心は傷つき疲れ果てています。


 結衣:「もう何をすればいいのかわからない……。なぜ私だけがこんな目に遭うの?」


 心の中で、結衣は過去のいじめや孤独、そして自己否定の感情に苛まれます。彼女は自分自身に問いかけますが、答えが見つからず、深い迷いに落ち込んでいきます。


 結衣:「もう疲れた……。このまま消えてしまえば、辛い思いもしなくて済むのに……。」


 結衣が屋上の手すりに手をかけ、自分の心を乗り越えようとするその瞬間、結衣は気づきます。屋上で寝ているのは工藤正志でした。彼がここで眠っているなんて、結衣には不思議な感覚が広がります。


 結衣は工藤正志が屋上で寝ていることに驚き、少しツッコミを入れながらも、彼が起きていないことに気づきます。しかし、結衣は工藤正志の名前を知らないため、彼を呼びかけることができません。


 結衣:「えっ、なんでここで寝てるんだろう?でも、名前も知らないし……どうしよう……。」


 結衣は困惑しながらも、彼がなぜここにいるのか理解しようとします。しかし、工藤正志が寝ている姿勢から、何かしらの事情があるのかもしれないと思います。


 結衣:「もしかして、彼も私と同じように悩んでいるのかな?でも、名前も知らないし、どうやって話しかければいいんだろう……。」


 工藤が突然目を覚ますと、目の前には結衣が手すりに手をかけて自殺しようとしている姿があります。彼は驚きと恐怖を抱きながら、すぐに行動に移ります。


 工藤:「結衣!やめろ!自殺なんてするな!」


 絶望に満ちた結衣の表情を見て、工藤は慌てて手すりに向かって駆け寄ります。彼は結衣の手を必死に掴み、彼女を引き留めようとします。


 工藤:「何をしてるんだ!こんなことは絶対に許さない!」


 結衣は驚きと戸惑いながら、工藤の声に耳を傾けます。彼女の心にはまだ絶望が漂っていますが、工藤の存在が少しずつ彼女の意識を引き戻していきます。


 結衣:「なんで……なんで私を止めるの?私なんてどうだっていいんじゃないの?」


 工藤は結衣の言葉に困惑しながらも、彼女を強く見つめます。


 工藤:「君は一人じゃないんだ。だから、自分を傷つけたり、命を絶つなんて絶対にしちゃだめだ。」


 工藤の言葉は優しく、同時に力強く結衣の心に響きます。彼は自分の手を握るまま、結衣に向かって真剣なまなざしを送ります。


 工藤:「君がどんなに辛い思いをしているのかは分からないけれど、僕は君を支えることができる。君は一人じゃないんだから、頼ってくれ。」


 結衣の目から涙が滲み出し、彼女の心の中に少しずつ希望の光が差し込んできます。彼女は工藤の手をしっかりと握り返し、彼の言葉に寄り添います。


 結衣:「ありがとう……工藤くん。」


 二人は屋上で出会い、命の危機を迎えた瞬間、互いの存在が結びつき始めました。工藤の優しさと結衣の強さが交わる瞬間、二人の関係が始まるのです。


 結衣:「工藤、なんでそんなことをしたの?教えてくれない?」


 工藤:「ごめん、結衣。実は俺にも事情があってさ。」


 結衣は疑問を抱きながらも、工藤の言葉に耳を傾けます。


 結衣:「事情?どういうこと?ちゃんと教えてよ。」


 工藤:「実は俺もいじめられていたんだ。君と同じく辛い経験をしてきたんだ。だから、君の気持ちが少しでも分かるつもりでやったんだ。」


 結衣は驚きの表情を浮かべます。彼女は工藤が自分と同じような苦しみを経験していたことを知らなかったため、彼の行動に対する理解が深まります。


 結衣:「工藤、それを知らなかった。ごめん、ちょっと感情的になってしまった。でも、どうして親に相談しようと思ったの?」


 工藤:「君と話しているうちに、いじめの辛さを再確認してさ。一人で抱え込むのは限界だと思ったんだ。親に相談すれば、一緒に解決策を考えることができるかもしれないと思ったんだよ。」


 結衣は頷きながら工藤の言葉に共感します。彼の提案は理にかなっており、一人で悩み続けるよりも協力して問題を解決する方が良いと感じました。


 結衣:「工藤、ありがとう。私も一人で抱え込むのは限界だと思ってた。一緒に親に相談して、解決策を見つけよう。」


 工藤:「絶対に。俺たちで困難に立ち向かって、いじめを終わらせよう。一緒に頑張ろう、結衣。」


 結衣と工藤はお互いを励ましながら、共に行動することを決意しました。彼らはお互いのサポートを受けながら、いじめに立ち向かい解決へと向かっていくのです。


 屋上から下りてそれぞれの家に帰ることにしました。結衣は自宅に帰り、まだ心に抱えていた悩みを両親に相談することを決意しました。


 結衣はリビングで両親を見つけ、少し緊張しながら話し始めます。


 結衣:「お父さん、お母さん、実は最近学校でいじめに遭っているんだ。」


 両親は驚いた表情で結衣を見つめます。


 父親:「いじめ?どうして今まで言ってくれなかったんだ?」


 母親:「結衣、本当に大変だったんだね。私たちはいつでも話を聞くから、どんなことでも言ってくれればよかったのに。」


 結衣は少し涙ぐみながら、いじめの辛さや孤独さを両親に伝えます。彼女は自分の感情を素直に話し、両親に支えを求めるのです。


 結衣:「でも、昨日工藤っていう転校生が来てくれて、彼がいじめを止めてくれたんだ。工藤は優しくて頼りになる人で、一緒にいると安心できるんだ。でも、それでもまだ辛いし、いじめのことをどうしたらいいかわからない。」


 両親は結衣の話を真剣に聞き、優しく彼女に寄り添います。


 父親:「結衣、君が辛い思いをしていること、それを知らなかったことを本当に申し訳なく思うよ。でも、君が話してくれて本当に良かった。」


 母親:「私たちは君を支えるためにここにいるよ。一緒にいじめの問題を解決していこう。そして、工藤くんとの関係も大切にし、お互いを支え合いながら乗り越えていきましょう。」

 次の日、結衣の親が学校に乗り込んできた。彼女の母親は堂々とした態度で教頭先生の前に立ち、いじめの問題について訴えを始めた。


「私の娘、結衣が長い間いじめに遭ってきたことは、校内の多くの人が知っています。私たち親は黙っているわけにはいきません。」


 結衣の母親の言葉に教頭先生は驚きながらも真剣な表情で聞き入っていた。彼は結衣の母親と話し合い、いじめの問題を根本的に解決するための対策を考えることを約束した。


 数日後、学校はいじめ対策の取り組みを本格化させた。教師たちはいじめの予防教育を強化し、生徒たちに対話や共感の大切さを伝えた。また、いじめの報告を匿名で行えるシステムも導入され、生徒たちは安心して相談することができる環境が整えられた。


 結衣は学校が変わる様子を実感しながら、安心して学校に通えるようになった。彼女は以前のような苦しみや孤独感から解放され、充実した学校生活を送ることができるようになったのだ。


 工藤:「結衣、最近どうしてる?」


 結衣:「んー、最近はちょっと忙しくて疲れ気味だけど、元気だよ。工藤はどう?」


 工藤:「俺も最近はバタバタしてるけど、結衣と話すと気分がリフレッシュされるな。」


 結衣:「そう言ってくれると嬉しいな。工藤と話すと楽しいし、心が軽くなるんだよ。」


 工藤:「結衣の笑顔を見ると、俺も元気が湧いてくるんだ。本当に癒されるよ。」


 結衣:「工藤の優しさにいつも助けられてるよ。一緒にいると安心感があって、本当にありがたい。」


 工藤:「結衣がそう言ってくれると、俺も力が湧いてくるんだ。お互い支え合っていける仲間でいたいな。」


 結衣と工藤は互いに笑顔で見つめ合い、言葉にならない感謝と絆を感じながら、お互いを呼び捨てにするようになった。この瞬間、二人の絆はさらに深まり、これからも共に歩んでいく決意が生まれたのだった。


 結衣は次第に工藤への思いが深まり、彼に対して素直になれなくなっていました。彼女は自分の気持ちに戸惑いながらも、工藤との関係を大切に保とうと努力していました。


 ある日、結衣と工藤は公園で一緒に散歩していました。風が心地よく吹き抜け、まるで二人だけの世界が広がっているような気持ちになりました。


 結衣はふと、工藤に対しての気持ちを打ち明けたくなりましたが、言葉に詰まりました。彼女は何度も口を開けてはためらい、結局、素直になることができませんでした。しかし、そんな時、突然強い突風に煽られました。結衣はバランスを失い、倒れてしまいました。


 結衣:「あっ!」


 結衣は地面に打ち付けられましたが、痛みはあまり感じず、それどころか何か温かいものに包まれている感覚がありました。


 顔を上げると、そこには工藤の顔が間近にありました。結衣は工藤に抱きかかえられていたのです。工藤は結衣の身体をしっかりと支えながら、心配そうな表情で彼女の顔を覗き込んでいました。


 工藤:「結衣、大丈夫か?怪我はないかい?」工藤は心配そうな顔をして言うが結

衣は顔を赤くして何も答えられずにいた。


 結衣:「だ、だだだだだだいじょうぶだよっ!!」


 あまりの動揺ぶりに、自分でも何を言っているのか分からなかった。工藤は苦笑しながら、そっと結衣を立たせてくれた。


 結衣:「あ、ありがとう…………」結衣はまだ赤面しながら言った。

 その後、二人はベンチに座って話し始めた。


 結衣:「そういえば工藤は高校決めた?」


 工藤「ああ俺は高校でも部活やりたいから、スポーツ推薦狙ってるんだ。」


 結衣:「へえ~。」


 工藤「結衣はどこの高校受けるんだい?」


 結衣:「私は……まだ決めてないんだ。」


 工藤:「そっか。だったら俺と同じ高校来いよ。一緒に勉強しようぜ。」


 結衣:「うん!分かった。」


 結衣:「じゃあさ、もし私が工藤と違う高校に行くことになったとしても、ちゃんと連絡してね。」

 工藤:「当たり前じゃないか。俺たちはもう友達なんだから。」


 結衣は友達の関係ではなくそれ以上の関係を持ちたいと思っていたが、なかなか言い出せずにいた。そして、とうとう中学3年生になってしまった。結衣は相変わらず、工藤との関係は曖昧なままだった。どうしても一歩踏み出すことができなかった。それでも、一緒にいるだけで幸せを感じていた。

 そんなある日、結衣のクラスでは進路希望調査が行われた。結衣は担任の教師に呼ばれ、職員室に向かった。


 結衣:「失礼します。」


 結衣が職員室のドアを開けると、そこには結衣のクラスの担任がいた。彼は結衣のほうに歩み寄り、真剣な表情で話を始めた。


 先生:「結衣さん、あなたは進学するのですか?」


 結衣:「はい、そのつもりです。」


 先生:「結衣さんの学力ならもっといい高校に行けるのに、どうして地元の高校に進学しようと考えたんですか?」


 結衣:「それは、私の志望校は自宅からも近いですし、それに、家から一番近くの公立の学校なので……」


 先生:「なるほど。そういうことでしたか。でも、あなたの成績は優秀ですし」


 結衣は工藤と同じ高校に行きたいと思い、彼の通う公立高校を第一志望にした。そのことを結衣は両親に伝えていた。


 ある日、結衣は工藤と一緒に勉強するために彼の家を訪れました。彼女はドアをノックし、少し緊張しながら待ちました。工藤の家は静かで落ち着いた雰囲気が漂い、結衣は少し興奮しながらドアが開くのを待ちます。


 ドアが開くと、工藤が優しく笑顔で迎えてくれました。彼の家は明るくて居心地の良い感じで、結衣はリラックスし始めます。彼女は工藤の家に招かれたことに感謝しながら中に入りました。


 工藤の部屋は整然としており、勉強に適した環境が整っていました。結衣は机に座り、勉強の準備を始めます。工藤も隣に座り、教科書やノートを取り出して勉強に集中します。


 二人は真剣な表情で問題を解いたり、質問しあったりしながら勉強に取り組みます。時折、結衣が分からない部分を工藤に質問すると、彼は丁寧に説明してくれます。結衣は工藤の優しさと的確なアドバイスに助けられながら、自信を持って問題に取り組むことができます。


 勉強の合間には軽い会話も交わされます。二人は笑いながらお互いの趣味や好きなことについて話し合います。結衣は工藤との会話の中で、ますます彼に惹かれていく自分に気づきます。


 勉強の時間はあっという間に過ぎていきました。結衣は工藤に感謝の気持ちを伝えながら、彼の家を後にしました。この日の勉強は結衣にとって充実したものであり、工藤との時間は彼女にとって特別なものとなりました。


 結衣はそろそろ工藤が好きな気持ちを工藤に伝えようと決心していました。結衣は工藤に対する思いが日に日に強まり、ついに告白する覚悟を決めました。彼女は胸の内に高鳴る鼓動を抑えながら、勇気を振り絞りました。


 ある日、学校の屋上に結衣と工藤が二人で立っていました。風がそよぎ、心地よい日差しが彼らを包み込んでいます。結衣は少し緊張しながら工藤の顔を見つめ、口ごもりながら告白の言葉を口にしました。


 結衣: 「工藤、私、最近ずっと考えていたことがあるんだけど…」


 工藤は驚きの表情を浮かべ、結衣の言葉に興味津々で聞き入っています。


 工藤: 「なんだい、結衣?何かあったのかな?」


 結衣は少し深呼吸をし、勇気を持って続けます。


 結衣: 「工藤、私、実は…あなたのことが好きなんです。ずっと心の中で抱えていた想いで、今、言葉にしたくて…」


 工藤の顔には驚きと喜びが交錯しています。彼は優しく微笑みながら結衣の手を取りました。


 工藤: 「結衣、本当に嬉しいよ。君の言葉、とても大切に受け止めるよ。」


 結衣の顔は緊張から安堵へと変わり、幸せそうな笑顔が広がります。


 結衣: 「本当に?私もあなたのことが大好きなんです。一緒にいる時間が本当に幸せで、これからもずっと一緒にいたいって思ってるんです。」


 工藤は優しく結衣の頬に手を添えて微笑みます。


 工藤: 「結衣、僕も君と一緒にいることが幸せだよ。これからもずっと支え合って、共に成長していけたらいいな。」


 結衣と工藤はお互いの手を握り合い、互いの想いを確かめ合います。二人の心は幸福と希望で満たされ、これからの未来への道が広がっていくのを感じます。


 結衣と工藤は恋人同士となり、初めてのデートを楽しみにしています。彼らは互いに特別な日を選んでデートプランを立てました。


 晴れた日曜日の午後、結衣と工藤は街中の公園で待ち合わせをします。結衣は可愛らしいワンピースを身にまとい、工藤はスマートなカジュアルスタイルで現れます。


 結衣: 「工藤、待った?」


 工藤: 「結衣、こんにちは!待ってたよ。」


 二人は笑顔で手を繋ぎながら公園を散策します。公園では子供たちが元気に遊んでおり、和やかな雰囲気が漂っています。


 結衣: 「工藤、どこに行きたい?」


 工藤: 「実は、映画館で新しい映画が上映されてるんだ。一緒に観に行かない?」


 結衣: 「いいね!楽しみだな。」


 二人は映画館に向かいます。映画館のロビーではポップコーンの香りが漂い、人々が映画を楽しむ様子が見受けられます。


 映画が始まる前に、結衣と工藤は劇場の席に座ります。結衣はワクワクしながら工藤の手を握ります。


 映画が始まり、二人は一緒に物語に没入していきます。笑いや感動の場面で手を握り合い、結衣は工藤との時間を大切に感じながら映画を楽しんでいます。


 映画が終わると、二人は外のカフェに向かいます。カフェではゆったりとした雰囲気の中、おしゃべりや甘いデザートを楽しむ時間を過ごします。

 結衣と工藤は楽しいひとときを満喫し、幸せな気分に包まれています。

 別の日は結衣と工藤は遊園地に行き、アトラクションを楽しみます。メリーゴーランドに乗り、コーヒーカップに乗って、観覧車にも乗ります。

 結衣ははしゃぎながら工藤に抱きつき、工藤は笑顔で彼女の行動を受け入れています。


 二人は無事志望校に合格し、クラスも同じになりました。結衣は工藤と一緒の授業が楽しくて仕方ありません。また、同じ部活に入り、放課後や休日も二人で過ごすようになりました。

 結衣はますます工藤が好きになっていきます。彼はいつも優しくて頼りがいがあり、彼女は彼の優しさに甘えてばかりです。そんな幸せな生活を送る結衣に最初の悲劇が起こる…

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