第32話 迫りくる珍イベント ④




「──ふっふっふ、タイガにばかり良い格好はさせませんよ」

「ちょっ、おま! 何してんだ!?」


 おもむろにスカートとセーターと白ワイシャツを脱ぎ捨て、下着の上に白衣だけを纏った姿という、ロボのロリロリしい見た目の年齢を考えると犯罪臭しかしないフォームへ変身を遂げた相棒。

 ここに半裸白衣のメスガキと、見た目ロリっ子を背負った上半身裸の男という、最悪という言葉以外では表現できないような、恐るべきチームが発足してしまったのだった。


「こ、後輩くん、バケモノがこっちを向きました!」

「よっしゃあ大浴場まで逃げんぞ、ロボっ!」

「心得ました」


 もはや羞恥心を捨て去ってまで無理をした甲斐はあったようで、いつの間にかバケモノを追う側から追われる側へと、シフトチェンジすることができたのだった。





 結局何がどうなったのか、事の顛末を説明しよう。


 肌の露出を増やして実験体を大浴場に誘い出した俺たち三人は、憎きエロモンスターと死闘を繰り広げるお風呂場大戦争を勃発させた。


 相手が人外未知の謎生物とはいえ、弱点を知っていて尚且つ人数差でも有利な俺たち。


 お湯が出る聖剣シャワーソードと、必殺武器お湯がいっぱい入ってる風呂桶ハンマーを駆使して戦い──遂にこの戦いに終止符を打つことが出来たのだった。


 まさに紙一重の熱い攻防だった。

 秋乃先輩の的確な指示や、ロボの献身的なサポート、何よりこの世界に来てから戦闘訓練で鍛え磨き上げた俺のフィジカルがベストマッチしたおかげで、あの大悪党をこの世から葬り去ることが出来たのだ。


 しかし、俺たちは戦闘の際に少しだけかすり傷を負ってしまった。

 バケモノの毒がまとわり付いている触手での攻撃を少しだけ受けてしまったわけだ。

 幸いバケモノ本体の核は秋乃先輩の武器でブッ壊せたものの、受けた毒は少しの間体内に残留するとのことで。


 性欲の暴走まではいかないが、俺たち三人はバケモノ撃破後の爆発で吹っ飛ばされたあと、痺れたまま動けなくなってしまい、誰かに見つかったら人生が即終了するようなヤバい体勢で固定されてしまった。


 ──上半身裸の男の俺が、下着姿のロボとびしょ濡れの秋乃というあられもない姿の美少女二人を、よりにもよって女子大浴場のど真ん中で押し倒している体勢だ。何の法則がどう作用したらこんなありえない形になるんだよチクショウ。

 こんな姿を見られたら終わりだ──なんて心配したのも束の間。



「……柏木くん」



 騒ぎを聞いて駆けつけてきた冬香に見つかっちゃいました。テヘヘ。


「初日のうちに貴方を殺しておくべきだったのかもしれないわね」

「ご、ごかいです」

「なら早くそこを退いて二人を解放しなさい」

「むっ、むりなんです……」


 それは痺れて動けないため。

 これでも相当頑張って痺れに抗って口を動かしているので、言葉の続きがなかなか言えない。

 俺の寿命を縮める行為ランキング堂々の一位だ。しくじった、これなら何も喋らない方が誤解を与えずに済んだのに。

 やっばい。ヤバいやばい。

 これ冬香の好感度、確実にゼロを下回ったでしょ。全ての努力が水の泡だ。


「こ、後輩くんっ、腕が脇腹にこすれて……ひゃうっ♡」

「きゃあ、タイガのえっち。このままじゃ私たち、くんずほぐれつのセンシティブな大乱闘スマッシュシスターズされちゃいます」


 お前ちゃんと喋れるなら誤解を解けよバカやろう!!!!!


「事故とはいえ博士の慎ましやかなお胸を正面から無遠慮に鷲掴みした罪は重いですよ、相棒」

「ふか、こうりょくぅ゛……!!」


 本気で泣きたかった。というより俺は多分泣いていた。

 マジで誰も味方がいない。

 助けて三春。

 たすけて主人公。

 キミならきっとこの状況を見ても、必ず察してくれるはずなんだ……!

 

 三春ーッ!! 早くきてくれェー!!!


「後輩くっ、手を離してぇ……んぁっ」

「……柏木くん……もう、あなたを自室から出すことはできないわね」


 ──しかし結局助けてくれる救世主は現れず、俺はセクハラのお仕置を甘んじて受けるk十になったのであった。理不尽……。

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