第9話 メインヒロインの尋問 ②


 と、まぁ早朝は本当に大変だった。

 寝起きから殺されかけるわ、エロゲのヒロインみたいな空気感漂わせた女の子とラブコメするわ、相棒の生みの親が派手に現れるわでもうお腹いっぱいだ。胃もたれ中なので胃腸薬貰えますかね。


 何はともあれ「話は放課後じっくり聞かせてもらうから、それまで動くんじゃないわよ」という冬香の言葉に従い、俺は強制的に授業を風邪で欠席扱いにされ、こうして大人しく部屋に監禁されているわけだ。

 ちなみに部屋を出るとブザーが鳴って、瞬足で冬香が飛んでくる。コーナーで差をつけろ。


 パニックを起こさないためなのか冬香は俺の存在を誰にも話しておらず、窓から見える生徒たちの平常っぷりからも男の侵入が公になっていないことは伺えた。

 ともかく今は安全だ。ロボと脳内作戦会議といこう。


(どうする? アイフル)

(まず博士に会いに行きましょう)

(そればっかだなお前)

(い、いえ、個人的な感情ではありません。どのみち私たちの秘密を話せるのは博士だけですから。次点で大道三春といったところでしょうか)

(どのみち冬香には話せない、と)


 しかしそう都合よくはいかないだろう。

 俺たちを捕まえたのは他でもないあの冬香なのだから、この不審者コンビをどう処分するかは彼女が決めることだ。

 事情は話せないけどここに置いてくれ、というのも当然無理だろうしぶっちゃけ詰んでいる。


(いっそのこと冬香に話さないか?)

(裏切者の可能性がある~なんて言ったら余計に怒らせるだけでしょう)

(そのバケモノに寄生された云々は置いといて、未来を変えるために来たって方の事情をさ)

(……対策される可能性もありますが──まぁ、そうですね。いまこの学園を追放されるわけにはいきません。彼女が第三者に私たちの事をバラす前に、一時的に仲間として引き込みましょう)


 そのための作戦は一任します、とのことだった。

 やはりコイツには作戦立案能力がないのかもしれない。

 しかし他力本願バディをサポートするのも相棒の役目だし、ここは俺が引き受けよう。


(……てかさ、何で今朝は女状態が解除されたんだ? 時間制限とかあんの?)

(明確な時間制限はありませんが、私とタイガの両方が気を抜くと解除される節があります。解除されたときはどちらも気絶時と睡眠時です)

(気を抜くなってことか? 普段生活してるときはともかくとして、寝るときは無理だろ)

(寝ないでください)

(ハッハこやつめ)

(あだっ……!)


 ペンダントを指ではじくとロボの悲鳴が聞こえてきた。痛覚あるのかよお前。


(うぅ。……まぁ、人間であるあなたに睡眠を取るなというのは酷でしたね。寝ている間に変身が解除されてしまう件については早急に冬香に理解を求めましょう)

(おう。そんじゃ頑張るぞ)

(えいえい、おぉ~)


 ゆるく気合いを入れなおしたと同時にドアが開かれた。


「どうやら大人しくしていたようね。聞き分けがいいところは褒めてあげる」

「えへへ♡♡♡♡♡♡」

「その笑い方をやめなさいよ……」


 ヒロイン様のご帰宅だ。語尾を気をつけつつ、お話タイムといこうか。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る