第37話 幕間 坂本翔平のゲーム取材記録
「ここがハワイか。そろそろ夏で、暑さもすごいなァ」
500万を握りしめてやってきたハワイ。
観光客が押し寄せ、活気ある商店街や、店がある海辺のビーチ。
まずはここで、取材をしていこう。
そういう訳で。
「えっと、すいません。ホエールウォッチングを予約してました。坂本ですが」
「おお! 坂本さんですね! ようこそハワイへ! どうぞどうぞ! 是非楽しんでください!」
海の近くにある鯨の看板の小屋へいき、褐色で陽気なアロハシャツのおっちゃんと話をする。
うん。耳に入れている翻訳機……VRゲームの技術をもとに作られた、世界翻訳機械の調子はいいようだ。普通に喋れている。
そうして、小屋の隣の海に浮かんでいる、大きな船ってか、モーターボートに乗り込む。
俺以外にも客はいるようで、子供連れの夫婦や、老夫婦。カメラ持ってるおっさんや、『今からホエールウオッチング! IN ハワイ! 盛り上がっていくぅぅう!!!』っていってる、配信者っぽい青年がいた。
ああ、確認は取れてるが、ホエールウォッチングでの撮影は可能だ。なので、彼もスマホを使って撮っているんだろう。
……まァ、波しぶきでカメラが壊れても自己責任なんだが、そこを分かってるかは怪しい。
ちなみに、俺はそれを把握したうえで、ごついカメラをカバンから出して、撮影を開始している。
船の様子を撮る。というよりは、ピントと音声調整。データ取り込みの速度・調子の確認だ。
(よさそうだな。これならいいデータが取れるだろう)
ホエールウオッチングの目的は、ズバリゲームのデータとりのためだ。
海を出すなら、海洋生物のモンスターを出したい。
しかし、一からデザインは時間がかかるし、外注やレンタルで作るには、金がかかりすぎる。
そこで、ホエールウォッチングでクジラや海洋生物を撮影し。そのデータをゲームに取り込んで、モンスターに加工する。撮影法をしているのだ。
これだと、動きも滑らかで、攻撃ムーブも作りやすいしね。
作る方も楽なんだよ。うん。
てなわけで。
「それでは、出発! いざ! ハワイのホエールウォッチングへ!!!」
「「「「「『『『『『!!! おおおお!!!』』』』』」」」」」
俺が船に乗ってから、10分後!
大きなボートの席が、ほとんど埋まってから! ホエールウォッチングへ出発!!
おお! 結構早い! 風が気持ち良い!!!
波もそれほど高くなく、潮風がいい気持ちだ!!!
大海原の様子に、船の様子もGET!!!
海賊船を運転させたり、魔法でボートっぽくしてもいいな! うんうん!!!
って、思っていると!!
「あ! イルカだァァあ!!!」
! おお! 確かに!
子供が言うように、船の周りにイルカの群れが!!!
バッシャン! バッシャン! 跳ねている!!!
これは、良いデータだ! 撮影撮影!!!
「ィヤッホー! 皆見てるかァ! イルカの群れだぜぇ! イエーーー!!!」
俺の後ろの方で、青年・ヨーチューバーがうるさいが無視。
できるだけイルカや、波しぶきを撮影する。
って、え!?
「!!! GGGGGAAAAA!!!」
海から出てきた、鮫!
その鮫の口に咥えられている!!
「!!! ブッシャー!!!」
だ、ダイオウイカ!?
ええええ!?!?
『『『『『「「「「「!? ええええ!?!?」」」」」』』』』』
まさかだ! ダイオウイカを食っている、サメが現れた!?
え、ダイオウイカって、もっと寒い所のでじゃなかったっけ?
あと、鮫ってダイオウイカ食うの!? マジで!?
いや、そんなことはどうでもいい!!!
ダイオウイカは、クラーケン!
サメは、鮫系モンスターにぜひ欲しい!!!
一心不乱に撮影だ!!
うん! ダイオウイカも、バシンバシン! 触手で叩き! サメもかじりついて、放さない!!!
このモーションもできるだけ写して、攻撃資料にするぞ!!
うおおお!!!
「OHマイガー! マジかよ!」
「ダイオウイカって、ハワイにいるんだ」
「鮫でてるやん! ええええ!!!」
「え、ええお客様! ハワイでは鮫とダイオウイカもバトルするんですよ! 普段は、深海ですが。なんでここらへんにいるんだ???」
大興奮の客に、困惑するボートの船長。
しかし、俺はそれどころではなかった。
なぜなら!
「!!! 船長! ボートを右に曲げろ!」
「え?」
「鯨の群れが来るぞ!!!」
「!? えって、うおおおお!?!?」
――ドッパァァァンンンン!!!
「「「「「『『『『『ホェェェ!!!』』』』』」」」」」
『『『『『「「「「「!?!? うわあああ!!!」」」」」』』』』』
クジラ! クジラ! クジラ!!!
クジラがいっぱい見える!
ああ、船の前後左右に、巨大なクジラがいっぱい!!!
子供のクジラもいるが、大人はでけぇぇえ!!!
船から数メートルって距離で、迫力がヤバすぎる!
波もデカい! 船の揺れがヤバイ!!!
「「「「「『『『『『うわあああ!!!』』』』』」」」」
「た、助けて!」
「ヘルプミー!」
「うわあああ!!!」
うわ、あまりに揺れがでかいから、皆パニクってるぞ!
船長! なんとかし『うわあああ!!!』いや、お前もかい!!!
いや、どうすっかなァ。
これ、ほっといたら並みで転覆の恐れあり? クジラがぶつかる可能性もあるし。
あと、パニックが最高潮になった客が何するかも分からんよな。
……しゃーない。
そして!
「船長! 船長! 俺を見ろ! はい!」
彼の目の前で、パチンパチン! 拍手!!
「あ?! え!?(パニック)」
「冷静に冷静に。あんたは冷静に仕事ができる。
俺が引き上げるから、ここの船のレーダーで、クジラの進む方向が分かるはずだ。
冷静に見て、冷静に俺に教えて~。さんはい!」
――パン!
「! あ、え、ああ。そうだな。クジラは、このまままっすぐ進む。いや、そろそろ左に曲がりそうだ」
「確かか? 冷静に。確か?」
「確かだ! これでもハワイの海! クジラは知り尽くしてる! クジラは、もう少しで潜り! 左へ行く!!」
OK。なら、やることは簡単だ。
やって欲しいことをイメージし、特殊な呼吸。
舌を微妙に震わせ、特殊な口笛を吹くように息を吐く。
「では、船長。船長。そのタイミングで、クジラの群れから逃げよう。安全を目指せ。安全」
「安全。安全。ああ、安全だ! 分かった!!」
よし、それじゃ!
「皆さん! 船長が安全なコースまで運転するので、船が揺れる可能性があります! しっかり捕まってください!!!」
『『『『『「「「「「は、はい!!!」」」」」」』』』』』
っと、客の安全を確保し!!
「今!! 安全!!!」
「! うお!」
ダイレクトに、右へ!!! クジラは、左へ!!!
クジラの群れから、外れたのである!!!
フーーー!!!
これで、安全だな! よし!
――パチン!!!
「……は?」
「お疲れさん。おかげで安全になったよ。ありがとう」
「あ、はい。え、え?」
解除っと。ふー。
いやー、何とかなってよかった。
昔取った杵柄だが、役に立つもんだな。
しかし、これで皆は安全で、俺はイルカに、ダイオウイカに、デカい鮫に、クジラの群れのデータ! 大フィーバーで最高だ!!!
よーし、この調子でもっとデータとりまくり! 明日には、ハワイを出るぞぉぉお!!!
っと、そうルンルンでビデオを確かめている俺に、助かったとほっとしている客たちを乗せ。
ボートは、無事に小屋へと戻ったのであった。
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