第22話 シルフィVSドスヤクザ! そして、裏取引の人食いの傀!?


「っはあああ!!! 分身・アロー!!!」


「連続・ワープ! ワープ・スラッシュ!!!」


 ――ガキンガキンガキン!!! ガッッッ!!!


「く!」


「へへへ!!!」


『『『『『うおおお!!!』』』』』


「「「「「すげえええ!!!」」」」」


『『『『『「「「「「ヒューーー!!!」」」」」』』』』』



 うおおお!!! やっべえええ!!!


 よくやった! シルフィ! よく、ワープ斬りを躱した!!


 ああ、幽霊モードで見学してるが、凄いぞ! この戦い!!!


 シルフィのサイバー・ビーム流は、弓とナイフ! そのうち、弓でめっちゃ攻めているが! 


 ドス・ヤクザは、連続ワープや、ステップ、ドスでの捌きや撃ち返しで、その猛攻をしのぐ!!!


 っで、クールタイムが終わったら、ワープ斬りという糞技で、めっちゃ遠い所からでも、一瞬で近づき! 切り降ろし!!!


 この技が、めっちゃクソ!!!


 なんでかと言えば、表裏の2択を押し付けられるからだ!


 うん! 俺もやられたからわかる!!


 ワープ斬りでは、ボタンの微妙な長押しと、放つタイミングで!


 『前からの攻撃か、後ろからの攻撃かが、超見分けづらい』!!!


 なぜかといえば、ワープして降りてくる攻撃の絵面が、そのままで! 


 攻撃判定のみが、前か後に発生する。その違いしかないから!!!


 見てても、判別がつかない!


 流れの中での人読みで判断するか、前か後ろに賭けて防ぐ! 運ゲーが始まるのである!!!


 守護霊かけてたら、それを防いでからの流れ狩りか、バクステ移動狩りに話が移り変わるんだが。


 俺たち、光速の戦術を手に入れたサイバー・ビーム流に、絶対防御はない!!!


 それゆえに、シビアな2択を押し付けられる。クソゲーが始まるのであるが!!!


 シルフィ! ずっと2択で、正解引いてる!!


 避けて、防いで、ナイフ・カウンターして!


 ダメージ稼げてるぜ!! ええ!!!


 凄い! これはもう、凄い!!!


 やっぱり、シルフィがナンバーワン!!!


 やっぱあれか? 弓矢のハンターだから、目がいいスキルとかるのかね?


 まァ、いいや!!!


 とにかく、このまま押し勝て!!! 


 このままいけば、勝てる! うん!!!


 もう俺も、実感したし、分かってたことだが!


 PKたちも、独自のスキル武術! カルマ武術を作ってるからな!


 俺は負けたが、シルフィは勝って! 相手に、プレッシャーを与えてくれ!!!


 大イベントまで、あと数日!!


 このまま開発を進めるべきか? っと、PKに疑問を与えるためにも!


 ここで、シルフィの勝利で! 一石投じておきたい!!!


 大イベントでも、勝つためにも!!!


 がんばれぇぇえ!!! うおおお!!!


 っと、めっちゃ応援していると!!!


「おお、おったわァ。ちょとええかァ?」


「え?」


 そう、声をかけられたのである!


「誰って、え!? か、傀!?」


「よーす。ちょっと情報交換しようやァ」


 同じ幽霊モードの傀に!!


 めっちゃフレンドリーに、話しかけられって。


 ええええ!?


「じょ、情報交換!?」


「せやでぇ。見学の幽霊モードやったら、配信とかしてない限り。完全防音されとるからなァ。絶好の内密モードやん。せやから、情報交換したいんや」


 えええ。


 いや、その、えええ。


「いや、ちょっとそれは……」


「そんな構えんでもええやん。明かしていい情報を交換しようってことやで」


「ほら、うちらもスキル武術を作ってたのは、予想してたやろ? なら、他にも持って帰らないと、成功とはいえのちゃう? もっと情報、欲しいんとちゃう?」


 っぐ。


 それはそうだな。実際予想してたことはしてた。


 俺たちが、サイバー・ビーム流を開発したんだから、向こうも何か作ってる。


 そういう予想はあった。


 それを確信できた……だけじゃァ、弱いよなァ。


 下手したら、俺らのところ以外の潜入チーム。即死部屋で死んでる可能性もあるし。


 情報は、ほしいか……。


 うん。


「……大イベントのために、街の破壊活動はやめてほしいな。PKは、レベルUPに必要だから、いいけど」


「それは無理や。スパイ活動でしか得られない栄養もある。ってか、そっちも送り込んでんだから、お相子やろ」


 ぐぬぬ。


「まァ、イベントもあと数日だし、やってほしい・やめて欲しいの話はなしや。うちらはかなり自由で放任主義やから、するなっていってもするやろうしなァ。無駄や無駄。もっと建設的な話をしまひょか」


 建設的?


「ズバリ、そっちの錬金術師は、何してはるんってことや」


 チャリン・スキーさんの事か。


 街の復興や、銀行での業務だよ。


「ほーん。錬金術は教えてもらってんの?」


 ? 錬金術?


「いいや、あれはレベルが足りないってことで、教えてもらってない」


「ほーん。そうなんか。それはええこときいたで」


 え? 何?


 チャリン・スキーさんが、どうしたんだ?!


「どういうことだ?」


「説明してもええよ。でも、それしたら、『それがあんたの聞きたいこと』ってことで、情報交換終了や。ええの?」


 っぐ! 


 気になるが、良くないな。


「やめとこう。別の事を聞きたい」


「せやな。その方がええやろ」


 ……じゃあ、そっちのキャプテン・ビリーは何をしてるんだ?


「いろいろしてるでぇ。飯食ったり、酒盛りしたり、歌うたったり、デートしたり、戦闘訓練の相手になってくれたり、戦法やカルマ武術作りのアドバイスをしてくれたり。一緒に狩りをしたり」


 え? え? ええ?!


「デート!? 戦法アドバイス!? 何してんだ!?」


 がっつり教え込んでるってか、遊んでるな!?


「そういうキャラってことやろ。めっちゃ行動力あるかんなァ。うちのボスは」


 そうなのか……。


「せやで。でも、そっちもなんか、してくれるんとちゃうん?」


「え、いや、特には……銀行で金増やしたり、武器は買えるけど」


 特殊効果あったり、強い武器とかね。マジで助かる。


 っが、それだけだ。


 何かを教えてもらった覚えや、話は聞かない。


「ほーん。そりゃあ妙やな。キャプテン・ビリーとチャリン・スキーは、対称のキャラのハズ。なら、チャリンにも何かあると思うが……レベル以外に、条件があるとかかな?」


 条件? 


「うちらは、初めのリーダー決めで、ボスと戦ったんや。それから、一緒に遊んどるし、師事もしとる。そう考えると、バトルが全てのきっかけ。条件やったんかな? って、そう思う」


 あー、なるほど。


 そういうことね。


「っで、そっちのチャリン・スキーとは、そういうことしてないんか? っちゅー話や」


 いや、してないな。


 彼は、商人NPCだったし。


 戦う流れがなかった。


「じゃあ、してみたらええわ。ボスと対のキャラであるチャリン・スキーなら、戦いが条件の可能性もあるやろ。何か教えてくれるかもしれへんで」


 ……なるほど。そうだな。


 その発想はなかった。


 でも、いいのか?


「? 何が?」


 プレイヤーに塩を送ってって事。


 チャリン・スキーさんとの戦闘で、強くなれる可能性があるって。


 教えていいのかよ。


「ああ、それか。ええんよ。僕は、『ゲーム楽しみたい派』やから」


 え?


「さっきも言うたろ? 僕らは基本自由にやってるって」


「始まりの街襲って、弱くする。『絶対に勝ちたい派』も、当然いるけれども。うちは、『そもそもゲームを楽しみたい派』なんや」


「せやから、今回の戦いで、物足りなさを感じとるんよ。


ゲームはもう少し歯ごたえが欲しいやん? 故に、もっと強くなってくれ!!!(ニッコリ)」


「ええ……そんな理由?」


 すげぇ個人的だな。


 冒険者にも、『ゲーム楽しみたい派』は、いるにはいるけど。


 そう思ってもPKと交流する人はいないだろ。


 でも、PKにはここまで自由な人がいて、それが当然の空気みたいだなァ。話の節々でそう感じる。


 変わった文化だなァ……。


 いや、こいつが特殊なだけの可能性もあるけど。


 うーん。分からん。

 

「せやで! ゲームは楽しまんと! それに、強くなった方がお得なPK達もおるからね! へへへ!!!」


 そうなのか……。


「……ちなみに、傀。君は最後。俺の仲間のビーム弓矢で死んだんだが、あれは君が弱かったってことで、歯ごたえはあったんじゃ」


「お、そろそろ決着やな」


 え!?


 そう言われて、振り返ると!!!


「はあああ!!! 『光の嵐』! そいやァァあ!!!」


 全方位に、ビームの矢を放つ!!


 シルフィ!!


「これはまずいな! 『緊急ワープ!』」


 それをシュンッッッ!!! っと、ワープで避ける!


 ドス・ヤクザ!


 ああ、今ので、矢の薄い所へ跳んだらしい!!!


 ダメージが一番低い所へ行ったのか!!


 マジで立ち回りが、上手いぞ!!


 あのヤクザ!!


 っが!


「!? ぐわ!!」


 そんな彼の背中に、矢が! 


 スピードの遅い! 普通の矢が、刺さって!! 


「かかった!! 『ロック・シュート』!!!」


 そこめがけて! シルフィは、すかさず技選択!!!


 相手をロックオンし、力を込めた!


 必殺の矢を放った!!!


「じゃあ、こうするね。『シルフィの前にワープ』!!」


 それに対し! ドス・ヤクザは、ワープ!!!


 シルフィの目の前に来る!!!


 く! 近い!


 あれでは、隙を晒してる! 殺られるぞ!!!


 そう、彼女も思ったのだろう!!!


 目を見開いて驚くが! 


「『ナイフ・抜刀』! せいやあああ!!!」


「!! おわ!?」


 おおお!!! 凄い!! 凄い!!!


 その可能性も、しっかり考えていたんだろう! 


 ビーム発射の間に、先行入力で、ナイフ抜刀を仕込んでいたんだ!!!


 これで、ビーム発動中の隙を潰す様に! ナイフを抜き放ったシルフィ!


 その刃が、目を見開いて驚く! ドス・ヤクザの首を狩りかけた。


 その時!!


 ――『ロック・シュート』着弾! 今!!! 


 ――ズッガァァァンンン!!!


 さっきシルフィがはなった、『ロック・シュート』が!


 ロックオンした、ドス・ヤクザを追って、着弾!!!


 奴と、その目の前にいたシルフィ!


 二人を巻き込む、大爆発を! 起こしたのだよォォお!!!


 えええ!?!?


「!?!? がっはッッッ!!!」


 ! シルフィが、ぶっ飛ばされた!!! 


 ああ、コロセウムの壁にぶつかる!!!


 でも、まだKOじゃない!!


 HPは、8割砕け散ったが! それでもまだ生きている!!!


 頑張れ! まだやれるぞ!!!


 そう、俺の聞こえない声援に応じるよう!


「っつゥ!!」


 綺麗な顔に、怒りを浮かべ!


 即座に立ち上がりかけ――ドス!! え。


「!? かっは」


 ――どさりと、倒れこむ。シルフィ。


 え。


 今、何が……?


 なんで、彼女は、倒れて。


 口から血を吐き……あ!


「うわ、えげつな~。やっぱドス・ヤクザはんは、ヤクザやねぇ」


「エルフはんの首に、『ドスを転移させて刺し殺す』やなんて」


「!!!」


 俺の隣で、うわァ……っと、ドン引きしている傀の言う通り。


 シルフィの首には、ドスが刺さっていた。


 ドス・ヤクザが、ドスだけをワープさせて。


 シルフィの首に、ドスを生やせた。


 そうして、HPが砕け散ったのだ!!!


 !!! ッッッ!!!


 これが、ドス・ヤクザ!!


 上位PKの、殺し技……!!!


 遠い! あまりにも!


 サイバー・ビーム流では、今のままでは、勝てないのか!!


 ぐううう!!!


「でも、ヤクザはんも、ぎりぎりやったみたいやね」


「え?」


 傀の発言につられ、俺は、爆心地を見た。


 ああ、そこには、血を流しているが、確かに生きているドス・ヤクザ!!!


 かろうじて! 


 『HPバーが、1割残って生きてる』!


 満身創痍の、ドス・ヤクザの姿があった!!!


 !!!


 あと1割……!!! 


 クソ!!!


 内容としては、薄氷の勝利。


 展開や、運次第では、こちらが勝っていた試合だった。


 少なくとも、俺と傀のバトルと比べたら、シルフィとドス・ヤクザの試合は、そうだった。


 それが悔しく、妬ましい。


 ちくしょう……!!!


 PKは、人食いの傀は、ドス・ヤクザは、強かった!!


 シルフィが! スパイ・ゲームに熱中してて、俺よりもPKを狩ってない、シルフィのほうが! 俺よりも強かった!!!


 その事実を突きつけられて。


 敵にも、味方にも、嫉妬して。


 忸怩たる思いを感じていた、その時!!


 ――観戦終了。リスポーン地点に戻ります。


 俺の幽霊ボディは、光に包まれ!!


「じゃ、ここまでやな! ほな次は、イベントでお会いしましょ!!」


 そう、傀に見送られながら! その場から、消えたのである。


 かくして。


「は!?」


 俺は、はじまりの街の、ギルドに! 


「!!! っがあああ!!! 悔しい! あとちょっとだったのに! ああああ!!!」


 悔しがるシルフィと一緒に、リスポーンしたのである!!!


 その後、俺達の経験と情報で、プレイヤー全体が危機感を持ち! 


 さらなるサイバー・ビーム流の開発に、磨きがかかる事になるのであった!!!

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