第18話 プレイヤー・岩国伝次郎の日常


「おーし! オーラ―オーライ!!」


「親方ァ! こっち、終わりましたー!」


「よーし! いいぞぉ!」


「チャリンさん! これお願いします!」


「はいはい、じゃそこへ置いてね。んじゃ、錬成!」


 ――パァァあ!!!


「「「!!! うおおお!!!」」」


 大工の職人たちに、錬金術師のチャリンさんの錬成。


 そのおかげで、復興進んできたなァ。と、思う今日この頃。


 俺は、始まりの街で、響く! トンテンカン! トンテンカン! な、ハンマーで、教会を直す音と。


 バァァあ!!! っと、錬成する光を見聞きしながら。


「うん! 旨い! ベーコン・ハム・サンド、最高!!!」


 うっまい食事を、楽しんでいるである!!!


 うん! やっぱり、ファンタジーな技術を見ながら、壊れたものが直るのを見ながら、食事はいいねぇ! へへへ!!!


 これは俺の趣味だが、あんまり分かってもらえないんだよなァ。


 こう、現実では絶対に見ることができない。ファンタジーな復興工事!!!


 職人のハンマーと、技術を使うすぐ隣で!


 物資を浮かせ、魔法を飛ばし、錬成の輝きで、一瞬にして作りあげる!!!


 それが両立していて、美しい!!!


 そんな、美しい光景を見ながら、旨い飯を食う!!!


 それがいいんだ! うむ!!!


 でも、なかなか理解されない。


 山登って、握り飯食うのと一緒なのにな。


 まァ、俺は山登り嫌いだから、よくわからんけど。


 でも、このサンドは格別だぜ! へへ!!!


 っと、一人大満足していると!!


「待てぇぇえ!!!」


「倒してくれ! そいつPKだ! 潜入してたんだ!!」


「へへん! 捕まるかよぉぉお!!!」


「あ?」


 冒険者たちに追われる、盗賊姿のPKが!


 俺の方へと、逃げてきたのだ!!


 ああ、これは最近の人気イベント。スパイ・ゲームだな。


 これは、PKとプレイヤー。両方に出てるイベントだ。


 変装して、始まりの街や、PKの基地に忍び込み! 


 暗殺や、破壊工作。毒殺に盗みをして、街の復興や、要塞化を邪魔するのが目的!


 潜入された方は、スパイを見つけ出して殺すっていう、ゲームだ。


 俺はしてないが、友人は結構これにハマっている。


 友人曰く『人狼ゲームをしてる感じがして良い! 暗殺も、直接の殺しや、毒、爆弾など、手段が豊富で! 普通に暗殺アクションとして、素晴らしい出来だ! めっちゃ楽しいよ!!』っとの事だった。


 それを聞いて、俺は絶対にプレイしないと決意した。


 いや、勘違いしないでくれ。俺も、暗殺ゲームは好きだ。


 その手のシリーズは結構しているし、友人とオンラインでやることもある。


 聞いた話では、魔法・銃・スキルを用いた暗殺や、正面からの切り合い。罠。


 朝、昼、夜の時間経過や、その場の環境・物を利用した、ユニーク・キルなんかもあり。


 プレイヤーによって、無限大の暗殺が可能!!


 それを聞いたときは、まじでやってみたくなった。


 PKに扮して、拠点に侵入・荒らし! 暗殺祭りに、大立ち回り! 


 それらを夢見て、心躍ったとも! ええ!!


 でも、無理だ。


 俺、頭良くないから、人狼ゲーム苦手なのである。


 うん。アリバイで嘘ついたり、誰かに罪をナスったり。逆にPKを特定したり、推理したり。


 そういう知識や知恵を使うゲーム。したくないのである。


 俺が好きなのは、もっとアクション重視!


 ぶっちゃけ、通り魔的な犯行や、死んでも何度もトライ&エラーを繰り返せる!


 脳筋でもできる暗殺ゲーが、好きなのだ!!!


 故に!


「オラァ!! ヘビー・パンチッッッ!!!」


「!? ぐえ!」


 俺は嬉々として!


 向かってくるPKを、殴ったのさ!!!


 こういう、誰がPK! 犯人か分かってて、殴れるのは大好物だぜぇ!! 


 イエーーー!!!


 っが!


「流れ!!」


 ――ギュォォォンンン!!!


「!!! む!」


 相手は、中級クラスのPKだったらしい!!!

 俺の、ヘビー・パンチに『流れ』……最近、PKで流行りだした。カウンター技術。VR格ゲーから引っ張り出されてきた、高等技術である……を合わせて、ダメージを軽減!!!


 それどころか!


「そいやァァあ!!!」


 っと、回転によって加速した! 蹴りを!


 俺の側頭部に、叩き込もうとしてきやがった!!!


 こいつ、強いぞ!!!


 だが!


「サイバー・ビーム流! 発動!!! オラァァあ!!!」


 こんなこともあろうかと! ヘビー・パンチの間に、先行入力してた、聖なるビーム→アピール! で、サイバー・ビーム流を発動!


 それによって生じる、攻撃判定のある光! 

 

 それが、俺の全身から発光され!!


「!? ぐわあああ!!!」


 PKに、大ダメージ!!!


 うむ! 彼の、流れ・カウンター・キックに! 俺の、サイバー・ビーム流の、輝き攻撃が! カウンターHITしたのである!!!


 これぞ、サイバー・ビーム流! 流れ破り!!!


 全身・発光! カウンター返し! 『頼光よりみつ』じゃーい!(今命名)


 んで!


「どっせい!」


「!? が!!」


 ダメージを受けた彼の顔を持ち! そのまま、『光速で地面にたたきつけ』!!


 ドゴン!!! っという破壊音と、地面にひびが入り!!


 PKのHPが、砕け散った!!!


 ウイーーー!!!


 よし、これで一件落着だな!!!


 スパイ・ゲームでは、HP0になると、逮捕になるらしい。


 なので、あとはこっちに走ってきているプレイヤーたちが、上手くやってくれるだろう。


「あ、ありがとうございます。伝次郎さん! こいつ、かなり変装やムーブが上手くて、もう5人も殺されてたんですよ……オラ、立て!」


「くそー! チクショー!」


 え、そんなに凄い奴だったの?


「ええ、あと一人殺されてたら、イベント失敗! 僕らの負けでした! いやー、推理全部誘導されて、負け負けでしたよ!! 伝次郎さんが助けてくれなかったら、マジでヤバかったです!! ギルド爆破しようとしてたらしいし」


 マジか。やばいな、それ。


「ええ、防げてよかったァ! ホント、感謝です! これでイベント・クリアできます! あとで、お礼の品を届けますね!」


 あ、そうかい? 


 じゃあ、遠慮なく。有難う!


 うん! 好きに暴れて、感謝され、お礼も貰える!


 いいことづくめだぜ!! へへへ!!!


 やっぱ、俺には脳筋戦法のできる、ゲームの方がいいな!


 人狼とか、頭使うのより断然あってる!


 あんな、人の考えを誘導する。めっちゃ頭いい奴とかと頭脳で勝負したら、絶対に丸め込まれるしね!


 難しい推理とか、メタ読みとか、俺には無理。


 やらんで正解だわ! ええ!!


 って、お?


・シルフィ

伝次郎。暇なら、ギルドへきて。依頼だ。

 

 ……噂をすれば影とやら。


 俺の友人にして、スパイ・ゲーム大好きっ子のシルフィから。


 呼び出しを食らったのであった。

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