第15話 お土産

「今日は一日お疲れさまでした!」


「「ありがとうございました!」」


 俺達は特に問題も無く職業体験を過ごすことが出来た


「じゃあ、一人ひとり今日の感想を言ってもらおかな?まずは赤松君から!」


 田井さんからいきなり話を振られ驚く


「え、俺ですか?そうですね、平日昼間なのにお客さんが多かったのが印象に残りました。あとは、たい焼きってあんこが一番売れてると思ってたんですけど、カスタードとか他の味も多く売れていたので驚きました。」


「他には特にない?」


「えーっと、たい焼きを焼く工程を教わった時は簡単に感じたんですけど、実際ずっとやってると、どの板が何分だったのか分からなくなったりしたので、これを毎日続けているのはすごいなと思います」


「おー!色々ありがとう!そうだよねー。私も最初焼いてる時はどの板が何分だったか忘れてしまって焦っちゃったよー。あと、確かに今日はお客さん多かったかもねー」


 田井さんがすごく同意してくれて、変なことを言っていないと分かって安心する


「じゃあ関さんはどう感じた?」


 八木さんが関に質問を投げる


「そうですねー。作業中ずっといい匂いがしたのでよだれを我慢するのが大変でした!」


「「「え?」」」


 あっけらかんと言ったセリフに俺を含めた3人が目を点にする


「あとはやっぱり、お店を出る時のお客さんの食べたそうな顔を見ると、私がその表情を作れたっていう幸福感を感じました!」


 始めの感想には驚いたけど、二つ目の感想には違う意味で驚いた

 俺は正直、商品の売れ行きやその作業で手一杯になっていて、お客さんの顔は見れていなかった

 けど、関は仕事をしながらお客さんの顔まで見て、その表情を見て幸福感を感じている

 もとから俺は接客業には向いていないと感じてはいたけれど、普段から接客業を見ている人間の視野には驚かされる。と同時にこういう人間が飲食店に向いているのだろうと思った


「なるほどねぇ~関さんは面白い見方をするねぇ~」


「そうですかね?」


 それから、色々と雑談をしながら、最後にお土産としてたい焼きをもらった

 もらったというか、自分が焼いたたい焼きを家族分持って帰っても良いというものだった

 田井さんと八木さんにお分かりを告げて俺達は学校に戻る


 戻り際


「ねえ大ちゃん。私の感想って変わってた?」


「まあ、驚いたことには変わりないけど、すごく関らしくていいと思ったよ」


「私らしくて?」


「なんていうか、本気で他人の幸せを喜べる所とか関らしいじゃん」


「そうなのかなぁ?」


「まあ、あまり気にしなくてもいいんじゃない?別に怒られたわけじゃないんだし、なんなら褒められてたじゃん」


「え!?あれ褒められてたの!?」


「え!?気づいてなかったの!?」


 なんというか、前から感じてはいたけど、最近もっと関わるようになって確信に変わる


(関ってやっぱり頭が弱い子だったんだな)


 ただ、その純粋さだけは羨ましいと思ってしまった

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