第13話 職業体験
あれから、何度か正樹との衝突も発生したが、周りの目もある事からそこまで大きな事になることは無かった。ただ、クラスの皆はどこか俺と正樹との衝突を気にしているような雰囲気に包まれていた
俺自身としても、正樹とはあまり衝突したくないので(面倒くさいから)、前までは昼休みにグラウンドでサッカーをしていたけれど、図書室に通うようになった
他の皆も同じ考えだったようで、図書室内での俺達の学年の生徒の割合は常時8割を超えるという異常な状態になっていた
図書室にいる人は、ほとんどが卓球部員であり、そこにテニス部員が何人かいるような状態だった。この二つの部員は正樹の行動に対して反対派の人が多いおかげで俺も楽しく会話をすることが出来た。
始めは司書の先生が注意をしていたが、基本的に周りに他の人がいる時には静かにしている事と、本の整理を手伝っていることから、図書室での会話を許される形になった
「大ちゃん卓球部には慣れた?」
「やっと慣れてきたよ、というかやっと1年の顔と名前が一致するようになってきた」
今日も昼休みに図書室に行くと、姫川がいたので軽い雑談をしていた
「やっと!?遅くない?」
「いや、俺もそう思うんやけど、どうしても人の名前と顔を一致させるのが苦手なんよなぁ」
「はえー、そうなんや」
俺が、人の顔を覚えるのが苦手という事を伝えると姫川はとても驚いていたが、確かに俺は自分の学年のメンバーを覚えるのに時間がかかった記憶が無いので仕方がないのかもしれない
まあ、それでもこの学年にいる双子の兄弟だけは見分けれるようになったのが、中学校に上がってからで学年の中では一番遅いのだが、バレなければ問題ではない
「というか、今日の朝にさ、職業体験のお知らせ来てたけど、姫川はどこに行く?」
「あ~、確かに来てたね。私は幼稚園に行こかなって考えてる。将来そっち系に進みたいし」
「あーね、俺も将来の夢を優先したら建築系の場所がいいんやけど、どうしよかな~」
「なんで悩んでるの?」
「いや、バスケ部の先輩たちが、飲食店に行ったらお土産もらえるって話やから、それ目当てで行くのもありやなぁと」
俺がまだバスケ部にいた頃に一度だけ聞いたことがある。飲食店を選ぶとたい焼き屋さんに行く事になり、そこの職業体験の最後にはたい焼きを何個かもらえるらしい
タダでもらえるものは貰いたいという精神とやりたいことをした方が良いという考えが今の俺には両方あり、どちらを取るかで悩んでいる
「へえ!お土産貰えるんや!ちなみに何貰えるの?」
「飲食店は国道沿いのたい焼き屋になるらしいからたい焼きやね」
「たい焼きおいしいよね~。いいな~」
「・・・もしもらえそうやったら姫川の分も貰おうか?」
「え!いいの!?ありがとう!」
そんなに物欲しそうな目で見られたら流石に提案せざるを得ない
「それ!私も欲しい!」
いきなり声が聞こえたのでそちらを向くと、元気そうな顔をした関が立っていた
まだ増えるのか・・・
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