第9話 目標
試合終了後
「流石に勝つのは難しいかぁ・・・」
俺は最終セットで田中に勝つことは出来ずに敗退した
最終セットも相手の苦手コースを攻めるというのを続けていたが、最後にはそのコースにも慣れられ、あっけなく負けた
「もっと攻め手が欲しいな。サーブもう少し出来るようになったら点数取れたかも」
今の俺は1年生よりも弱いという事は分かったので、これからの目標は1年生に勝てるようにすることだ
「大ちゃん!次私の試合やから得点板やってもらっていい?」
「良いよーもし間違ってたら教えてな」
1人で色々考えていると、関から得点板の依頼がやってきた
「あ、大ちゃんやん。得点板宜しくねー」
「はいよー」
関の対戦相手である
関と姫川の試合はそれなりに長く続いた
関はペン式で少し攻撃よりの打ち方が多いが、ラリーなどの動作はどことなく丁寧であり、姫川はシェイクで相手の球を返し持久戦で戦いながら隙を見つけて鋭い球を打つカットマンと呼ばれる打ち方をしていた
(女子のラリーって長いよな、やっぱり男子よりも球速でないから持久戦が大事になるんか)
俺はというと二人の試合を眺めながらそんなことを考えていた
(逆に男子の卓球って、球早いからそこまでラリーを意識したこと無いな。今度試合することがあったらラリーで戦ってみても面白いかも。そのためにも練習しないとな)
男子とはプレイスタイルが違うが、俺からしたら女子の戦い方も取り入れなければ、これからも他のメンバーに太刀打ちできないと思う
(明日からの練習で意識しながらプレーしよ)
今日何度目か分からない目標を心の中で立てた
最終的に関と姫川の試合は2-1で関が勝つという結果に収まった
姫川の粘りもかなりしつこく感じたが、関が姫川を前後に動かすようにプレーをするようになってからは、関の独壇場になっていた
得点板をしながら二人のプレーを見ていたが、二人の試合は学ぶところがすごく多かった
試合形式の後はすぐに片付けに入り、短いミーティングの後に解散となった
卓球部の練習はバスケ部ほど長くすることも無く、これまでよりも早く家に帰れるという点が俺が気に入っている一番の点だ
家に帰ってもまだ冬香は帰ってきてないので、冬香に対して帰宅の報告をし疲れた体を癒す
(暇やな・・・)
家に帰ってもテレビも見れなければ、スマホも無い。雀の涙程度のお金はあるけど何か買いに行く元気も無い
(久しぶりにあれやるか)
俺は自分の部屋に行き、電子辞書を取り出す
(次はどこを覚えようかな)
俺の唯一の娯楽になり得る道具である電子辞書を眺めながら考える
俺は趣味として、各都道府県の市町村の名前を覚えるという他人に話しても理解してもらえないという事が判り切っている趣味がある。今まで中国四国地方の市町村は全て覚え、その各市町村毎の特徴まで覚えたものだ
(我ながら意味わからん趣味してんなぁ)
自分で自分の趣味を理解できないことも多いが、この時間が他の事を考える事無く、嫌な気分にならずに時間を過ごせるので、この時間が好きである
「ただいまー」
しばらく趣味に時間を費やしていると冬香が帰宅してきた
声を聴く限り今日の冬香は機嫌が良いらしく俺は少し安心する
「お帰りー!そういえば今日は―――――――」
機嫌が良いと俺も冬香と会話がしやすいので、機嫌を損ねないように今日あったことを報告をして過ごしていく
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