第8話 試合

「よし、じゃあ今日の練習の最後に試合形式をして終わろかー!」


卓球部に入部してから3日、俺はある程度の基礎を身に着けることが出来、1年生の練習をこなすことが出来るほどには卓球が出来るようになっていた

ただ、やはり1年生との経験値の差も大きく、安定性や精度では全く追いついていない状態だった


「やったー!久しぶりの試合形式や!ラッキー!」


周りの反応を見る限り、試合形式は最近していなかったそうで皆少なからず楽しみにしている表情だ

俺は卓球部に入部してから初めての試合になるので、自分がどこまで出来るか不安で仕方がなかった


「大輝は1年生と試合するようにしてるから安心してな」

「いや、1年生とも半年近い差があるから不安なんやけど」

「まあ、なんとかなるやろ頑張れ!」


卓球部部長である大川学おおかわまなぶは気楽そうに俺に話しかける


「じゃ、それぞれ指定された台に移動して試合開始してー!余った人は得点板やってね!」


大川が指示を出すと周りの皆もそれぞれ移動を始める


「お、赤松先輩じゃないっすか!よろしくおねがいしま~すw」

「げっ、田中かよ・・・」


俺の対戦相手は1年生の中でも上位レベルで腕が立つ田中力たなかりきだった


「あ!大ちゃんや!私得点板するから頑張ってねー!」

「よろしく、関」


うちの台で得点板をしてくれるのは関らしく、俺の中で知り合いがいる事の安堵と後輩にボコされるのを見られる恥ずかしさが同時に襲ってき、なんとなく居心地が悪い状態になった


「じゃ、先輩おねがいしまーす!」

「おねがいします」


互いに挨拶をし、俺らは試合を開始した


<1セット目>

1セット目は田中のサーブから始まり、初めのサーブは速い球に俺が対応できずに点を取られてしまった、2球目はなんとか返すことが出来たがラリーの末俺のミスにより失点した

次に俺のサーブになるが、俺のサーブの持ち球は2種類しかない。3日間の練習で使えるレベルまで出来たのが、普通の前回転のサーブと所謂バック回転と呼ばれる回転を用いる下回転サーブの2種なのだ

まずは実験がてら前回転サーブを相手のフォアよりに打つが簡単にリターンエースを取られる、次に下回転サーブをバック側に出すがそれも練習でなれているのか、そつなく返球されラリーの末に点数を取られた

その後も色々な手でせめて見たが、結局田中から4点しか取れずに1セット目は負けてしまった


<セット間>


「大ちゃん大丈夫?」


関が1セット目の俺の様子を見て心配そうに尋ねてきた

はたから見てたら俺はなすすべなくボロボロに1年生に倒されている図にしか見えないのでメンタル面で心配させたのだろう


「大丈夫、流石に入部して3日で勝てるとは思ってないし」

「ならいいんやけど・・・」

「まあ、せっかくの試合やから色々実験するわ~」

「頑張ってね!」

「はーい」


さて、田中には実験台になってもらいましょか


<2セット目>

2セット目が始まり、俺と田中のスコアは8-8と同点で競り合った状態になっていた

そのまま、10-10へと続き、デュースを制したのは俺だった

入部後初のセット獲得である


<セット間>

「大ちゃんすごいやん!1セット目からは考えられへんわ!」

「いや、1セット目でかなり田中の苦手なコース見れたから助かったわ」


そう、俺が2セット目で田中対手に戦えたのは俺が田中の苦手なコースをひたすらに攻め続けたからである

1セット目でサーブやラリー中に田中が取りずらそうにしている場所、返球しても球が浮いているコースを見つけるために色々なコースへとずっと打っていたから見つけれた


「えー!そんなん考えながらプレイしてたん?」

「いや、流石に技術で勝つことは出来へんから考えるしかないやん?」

「まあ、確かにそうやけど・・・けど、これならもしかしたら勝てるんちゃうん?」

「それは最後までやらなわからんかなぁ」


そんなことを話していると3セット目の準備が始まったので俺も台の前に立つ


(さて、勝てるかな)


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卓球のルールとして2本サーブをするとサーブを交代するというものがあります

あと、この話での試合は3セットマッチで2セット取った方の勝ちです

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