第7話 Mr.器用貧乏

 卓球部の練習は、準備運動、筋トレから始まり、ラダートレーニング等で基礎体力を鍛える練習をする

 それから2年生はラケットを持ち、打ち方練習を開始する。1年生は打ち方練習はまだせず、ラケットの扱いに慣れるために、ラケットの上でピン球をはねさせ一定時間落とさないようにする練習を開始する。俺も1年生と同じ練習をする


(これくらいなら、別に難しくないな)


 卓球は今まで遊びでしか触れたことが無いが、このラケットで遊ぶことは一人でも出来る事だったので、昔暇な時間にやっていたことがある。それが功を奏し、俺はこの練習ではあまり苦労することなく過ごすことが出来た


「よし、1年生も打ち方練習をしよかー!」


 部長からの指示が出たので、俺を含めた1年生は卓球台へと向かい打ち方練習を始める


「赤松はちょっとこっちで打ち方について教えるわ」


 松本先生から呼び出され、俺は練習から引きはがされた


「赤松が使ってるラケットってペンやったっけ、シェイク?」

「ペンですね、こっちが使い慣れてるので」

「わかった。じゃあペンの持ち方はこうやな」


 卓球のラケットにはペン式とシェイクハンド式の二種類あり、どちらも名前の通り、ペン式はラケットをペンのように、シェイクハンド式はラケットと握手をするように持つ。俺は、遊びの時にペン式を使っていたことからペン式を使っている

 松本先生からペン式の正しい持ち方を習うと早速打ち方について教えてもらう


「打つときは基本的に肘は閉じた状態で打つように。それと、頭のてっぺんから鉄の芯が撃ち込まれてるような感覚で腰から上を回すように動かして打つのが良いぞ」

「こうですか?」

「そうそう、そんな感じで打つのがフォームになるから体に覚えさしや。じゃあ、これから1年生の打ち方練習に合流しよか」

「わかりました」


 松本先生から打ち方を一通り教えてもらうと打ち方練習に合流しても良い許可が出たので早速台に向かう


「あれ、大輝もうこっちに合流していいん?」


 台に向かうと1年生に球出しをしていた志摩恭輔が話しかけてきた


「うん。松本先生から実際に打ってフォーム覚えろって言われた」

「なるほど、じゃあ最後尾に並んどいて」


 俺はその台にならんでいる1年生の列の最後尾に並び、順番が来るのを待つ


 順番が来て台の前に立ち、さっき教えられて通りに球を打つ


「あれ、大輝上手くね?やったことあるん?」

「遊びでやったことならあるけど、フォームとかは全部一新してるからほぼ初めてやで」

「にしては上手いな。センスあるんじゃない?」

「いや、俺は器用貧乏なだけやから初めだけやで。どのスポーツも初めは周りよりも上手くできること多いけど時間が経てば普通に俺が一番下手になるから」

「そういうもんなんか」

「そういうもんや」


 そう、俺は基本的に個人競技であれば器用貧乏なのだ。ただ、チームスポーツになると周りよりも下手になる事が多い。特に野球やサッカーは上手くプレーをすることが出来ない


 それからも俺の器用貧乏が上手く働き、その日の練習で1年生相手ならラリーを続けられるほどには上達することが出来た

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