第2話 新・部活体験

今年もやってきた、部活体験期間が

ただし、去年までとは違い今年は提供する側だ

つまり、新入生にバスケを楽しんでもらえるようにする必要がある


放課後になり、軽くアップをすますと新入生たちが体育館に訪れる

新入生がいるという事で、今日の準備運動は簡単なもので終わり、基本的にボールを触る時間に費やす

一年生の中には、バスケ経験者もいれば初心者もいる。経験者も小学校までとは、ボールの大きさもゴールの高さも違うので、初めはボールがゴールに届かない

ただ、経験者は流石なもので、ジャンプシュートは筋力が足りないが、レイアップまでなら打てるようになっていた。それに加え、ボールの大きさになれてからは、ドリブルスキルもあり、部員と一対一をしながら楽しんでいた

初心者には、基本的なハンドリングスキルを教え、シュートフォームを気にしない状態でのシュート練習など、どちらかというと遊びの色が強い練習をしていた

今年の一年生は身長が低い生徒が多いが、その分スピードがあり、ある程度の経験値を積むと止めるのが面倒になる事が判るほどのポテンシャルは持ち合わせていた


ほどなくして、部活体験の時間が終わり、一年生は帰る時間になった

それからは、2,3年生でいつも通りのメニューをこなし解散となる

先輩たちも一年生には入部してほしいらしく、部活中の話題は一年生たちで持ち切りになっていた


部活体験期間が終わると体育館に今まで通りのメンバーに加え、見慣れないメンバーが揃っていた

今年の新入生は6人もバスケ部に入部してくれたのだ

これでバスケ部の部員は3年生8人、2年生2人、1年生6人の新体制となった

あと、1年生の中でバスケをしたことがあるのは2人だけらしく、ひとりは小柄な体を使ったテクニック重視のプレイをし、もう一人は170cmという、中学生にしては高身長を活かした高さ重視のプレイをする子だった

なんでこの事を知っているかというと、小学校の時のクラブ活動でバスケットクラブに所属していたことを俺が覚えていたからである


1年生に負けるわけにはいかない


この思いが俺の中で強くなり、1年生の入部を嬉しく思う反面、気を引き締める覚悟ができた



俺と正樹の2年生組は1年生の教育係に付き、面倒くさがりの正樹は経験者2人と上達の早い1人を、俺は運動が苦手らしい3人を担当することになった

俺が担当している子達は気が弱く、プレーでも逃げるようなプレーが多い、俺も強く当たられるのは苦手なので、その子達に上手い逃げ方や相手のかわし方、特に一対一の状況での対処法を教えた。パス回しは皆得意で、逃げのパスはそこまで多くなかった


「一年生たち上達してきたよなぁ」


秀介君が一年生の練習風景を眺めながらつぶやく


「運動苦手って言ってる子たちもなんだかんだ言って、運動神経がいいから上達早いんですよねぇ」


俺は秀介君の独り言にもとれる発言に返事をする

一ヶ月が経つと1年生の実力は皆変わらない程に上達し、俺は内心追い抜かれないかという不安にかられていた

1年生全体の特徴として、ドリブルで細かく動き、隙ができたら高身長の1年生にパスを出しシュートを決めるというのが基本になっていた


「これからも上達してもらわないと、秀介君たちが引退してからのチームが弱くなりますしね」


そう、今のバスケ部は秀介君たち3年生が卒業すると、2年生は2人しかいないので、必然的に1年生も試合メンバーに入ってくる

うちのバスケ部は強くはなく、なんなら弱い部類に入るがそれでも、初心者だらけのチームでやるほど恥を捨ててるつもりもない

つまり、1年生たちにはそれなりに上達してもらわないと困る

俺は今の1年生たちが上達することに焦りもしていたが、嬉しいとも強く感じていたので、これからもどんどん上達してほしいと考えていた



あんなことになるとは考えもせずに

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