2年生編

第1話 春の陽気に包まれたい

「2年生って何があったっけなぁ」


 そんなことを考えながら学校までの道のりを歩く

 去年よりも少し寒いが、桜は満開で新しい季節が始まったことが嫌でもわかる

 学校に着くと、廊下に新しいクラス分け表が張り出されている


「あ、松本先生が今年は担任か」


 松本先生は俺達の学年主任をしている先生で、怒らすと怖い事で有名だ。去年も、一度学年集会で松本先生が怒った際に、怖すぎて泣いている生徒が出たくらいだった


「怒らせないようにしないとなぁ」


 といっても、怒らせなければ優しい先生ではあり、担当教科の理科について話をしてくれると色々な知識を教えてくれる先生でもある


「はーい。予鈴鳴ってるぞー。席につけ―」


 朝学活の時間になり、松本先生が俺たちに席に着くように言いながら教室に入ってくる


「えー、みんな知ってると思うけど、今年のこのクラスの担任の松本です。よろしくおねがいします」


 松本先生が軽く挨拶をすますと、連絡事項を生徒に伝え最後に


「2年生は特に気が緩みやすい時期やから、しっかりと気を引き締めて活動してください。変な問題を起こさないように」


 と、注意喚起をして退出していった

 俺としては、また何か問題を起こしてしまわないかと不安に駆られる

 その原因は前の方ではしゃいでいる

 そう、今年も正樹と同じクラスになってしまったのである


 2年生始まって初めての学校だったこともあり、午前中だけで学校は終わった

 部活の時間になると、顧問の先生から連絡が入る


「来週から、一年生の部活見学期間やから、やさしく一年生に教えてあげてください。あと、なるべく普段通りの練習風景を見せてください」

「はい!」


 部員が返事をすると今日もいつも通り練習が始まった

 俺は春休み前に右手親指を骨折をしていたが、今では完治し、周りの練習に参加していた

 骨折中に左手を使う練習をしていた成果か、左手でのプレーが少し得意になり、ドリブルで相手を抜ける事が増えてきた

 あと、最近は正樹のラフプレーにも慣れてきたので、自分が怪我をしないかつ正樹が嫌がるディフェンスを出来るようになっていた。正樹のプレーは単調なので、癖に気づくと止めやすいのだ


「片付け―!」

「はーい!」


 部長からの号令で、俺たちは練習を終わり、片付けに入る。この時間になると、だいたい先輩たちは靴ひもをゆるめ、くつろぎモードに入るが、一年生は掃除をするという時間になる


「あれ?正樹は?」


 俺が正樹がいないことに気づくと、先輩が教えてくれた。どうやら腹が痛いらしい。ここ最近はずっと練習が終わると腹が痛くなっている


 腹が痛くなるなら練習も休めばいいのに・・・(棒)


 これがサボりであることは、先輩たちも含めて全員知っているが、誰も咎めない。というよりも全員から諦められている

 正樹がサボっていることにより、俺は体育館の半分を俺一人でモップ掛けすることになった。もう慣れているので、一人でモップを2本持つことで、二人でやる時と大差ない時間で終わらすことが出来る


 その後、ミーティングを行い、明日の部活の連絡、今日の反省点について話された後、解散となった


「おつかれさまでしたー!」


 体育館の外に出ると、空は暗くなり始めており、長い時間部活をやっていたことが判る

 俺の住んでいる北区には、ほとんど生徒がおらず、唯一家が近い野本秀介もお祖母ちゃんの家に行く事が多いので、今日も1人で家路につく



 家に着くと、珍しく冬香が先に家に帰ってきており、いつもよりも少し早い晩御飯と、風呂を済ませると自室のベッドにつく

 自室への物の持ち込みは制限されているので、俺の部屋には、ベッドと少しの本棚しかない、本棚の中身も漫画や小説は無く、昔読み聞かせられていた絵本が今も本棚の中に入っている

 自室に入ってもやる事が無いので、今日も眠りにつく


(今日は穏やかな日だったな、毎日これなら、幾分か過ごしやすいんやけど)

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