3
いつからだろう?
最初はすごく不思議だった。
そして気付いた……わたし自身が
ーーだから
そう思うようになっていた。
だけど、月日が動いていく毎に、そんな状況を受け入れて、
多分、それが終わりだったんだと思う。
わたしの幼い恋の……
そして
「どう、今は『その子』とは上手くやってるの?」
自分の口からこんな台詞がすらすら出てくる日が来るとは思ってもみなかった。
厭味になる響きさえなく、乾いた言葉だった。
「……『そんな子』、始めから居なかったよ」
「
「当たり前でしょ! わたしJKの時からもてまくりだったんだから」
「そっか、良かったね! どんな人?」
何故強がった見栄を張ったのかわたしにも判らない。それでも
「イケメンよ。ただ、それだけ……それ以上でもそれ以下でもないわよ」
「それは違うでしょ?
「ううん、わたしは『男を見る目ない』から」
「僕もその中に入る……かな?」
「当たり前じゃない……『浮気した』くせに……」
その冗談が気まずくならないようにわたしは出来るだけ口の筋肉を使った。思ったより上手く行ったように感じられた。
「
「大学生院よ。しがない」
「
「社会人として自立出来ないって言いたいわけ?」
「ち、違う!
「当然でしょ」
ふと
碧い空の下で、乾いた風の中で、緑の高原で……夜のベッドで……わたしたちは未来を何度も語り合った。まるで、それしか知らないように。
沢山抱えた不安を
わたしたちは語り、お互いを受け入れた。
それによって、わたしたちはお互いに安堵感をもたらした。
わたしたちの大事なコミュニケーションの一つの方法だったし、この二人だけの会話が大好きだった。
「
「就職している」
「何処で?」
「会計事務所で働いてるんだ」
「ふぅん、じゃあ税理士を目指そうとか、考えちゃってるわけ?」
「……まだまだ新米で副所長から叱られっぱなしだけどね。いつかなってみせるよ」
「オトナになったわね」
わたしが微笑むと
わたしたちが共有している今の時間は過去という有限の事物であり、わたしたちはそれを大切にしてきたのだと思う。
だから
おそらく、わたしたちがその過去を過去にしていなかったら、こんな風に落ち着いた空気に身を置いて、微笑みあったりなど出来ないだろう。
優斗だけじゃなくて、自分自身もオトナになった気がした。
そう、あの時のわたしよりもずっと何かが変わった。
わたしはオトナになった。なりたくなかったオトナになった。
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