影で笑ってる

門前払 勝無

第1話 廃神社

 震えてるー。


 何かが鳥居の横で怯えている。


「おい!撮ってるのかよ」

マサルが声を荒げた。

「あ!悪い悪い」

オサムは頭を振り意識をスマホに集中させた。


 二人は撮影しながら古びた鳥居を潜って参道を進んだ。湿った廃神社の空気は淀んでいて異世界へと続いているのでは無いかと思わせる、ただならぬ雰囲気である。

「この神社ヤバくないか?」

オサムは足が震えだしていた。

「かなりヤバめってブログにあったからな…」

と言いながらマサルはオサムの方を振り返った。

「え?マジか…」

オサムの隣に若い女が立っていた。

「え?なに?」

オサムは真横に気配を感じて見ると若い女と目が合った。

「震えてるの?」

女が話し掛けてきた。

「うわ!!」

オサムは腰を抜かしてその場にへたり込んでしまった。マサルは慌てて入り口へと走って逃げた。


 へたり込んだオサムを女はニコニコしながら頭を撫でた。

 オサムは見る見るうちに痩せ細り髪の毛は真っ白になって倒れた。

 女は入り口に走ったマサルを追い掛けた。女の尻からキツネの尻尾が二本出ている。


 入り口から出れないで鳥居の横で怯えているマサルに女は悪戯な笑みを向けながら近付いてオサムと同じように頭を撫でた。そしてマサルも痩せ細り髪は白くなりながら絶命した。

 女はスキップしながら参道の奥へと消えていった。


 後日ー。

 神社の入口は閉鎖されて警察官が大勢来ている。


 鑑識係が遺体を不思議そうに見ていると後ろにジーパンとティーシャツの男がチョコモナカジャンボを食べながら立っていた。

「お兄さん!勝手に入っちゃダメだよ」

「え?藤井さんに呼ばれたんだけど」

「藤井課長に?」

「うん」

「キミは何者?」

「こういう変な事件の時に呼ばれる担当ですぅ」

「はぁ?」

鑑識係は頭を搔いた。


 鵲士郎(かささぎ しろう)は人外の事件時に呼ばれるフリーランスの調査員である。


「士郎ちゃん早いね」

「あ、藤井さん」

「藤井課長お疲れ様です」

「お疲れ様です。鑑識さんこれ難しいでしょ?たぶん化け物の仕業だよ」

「彼はこういうわけの分からない時に呼ぶ鵲士郎くんって言うの」

「はぁ」

藤井課長と鑑識係が話しているのを余所に士郎は神社の奥へと進んだ。

 地蔵の足元でガマガエルが二匹並んで笑っている。

「此処は自由だな…」

士郎はタバコを咥えた。

 スゥっと白い手が伸びてきて百円ライターで火を付けてくれた。

「ありがとう」

「どういたしまして」

マサルとオサムの命を奪った女が現れた。

「君はキツネ?」

「そそ!よくわかったね」

「尻尾出てるよ」

士郎は指差した。

 女は“あっ!”と言う顔をした。


つづく

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