謎の女性

 彼女が表れたとき、時計はちょうど11時を指していた。

 彼女は緑色のズボンと灰色のパーカーを羽織り、また小さなリュックサックをしょっていた。

「どうも、こんにちは」彼女は短い前髪を払いながらそういった。

「こんにちは」

 そういうと彼女はニッコリした。よく見ると彼女は結構可愛い顔をしていた。

「あなたに用があってきたんです」

 なんだろう、と思っていると、彼女は僕の隣に座ってきた。少し驚いたが、表情には出さないようにした。

「ちなみに、私はアフリカツノガエルを飼っています」

「へぇ」

「どう思います?」

「別にどうとも思わないかな」

「ひどいですね」

「じゃあ僕がガラパゴスイグアナを飼っていたらどう思う?」

「すごいけど、やっぱどうでもいいかも」

「そういうことだ」

「なるほど」

 例の縄跳びがヒュンヒュンと音を鳴らす。空は青いし、救急車のサイレンも時々響いた。おそらく熱中症になったのだろう。お気の毒に、と僕は思った。あの男共はいなくなった。どこへ行ったのか知らないが、まぁどうでもよかった。

「あなたの家に行ってみたいですね」と隣の人は言った。

「来ても何もないよ」

「何かはあるでしょう」

「まぁね。でもガラパゴスイグアナはいない」

「最初から居るとは思ってません」

「そうか」

「そうですよ」

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