圧倒的なキャラの魅力

ひとことにも書きましたが、文章でキャラクターたちの容姿・表情・立ち振る舞いがパッと心に浮かんできます。それがどこまでも魅力にあふれているのです。
昔の名作エロゲ・ギャルゲのような、と評することが褒め言葉として適切であるかはわかりませんが、僕らがあのころ夢中になった、キャラ同士の掛け合いが本当に楽しい、見ているだけで時間を忘れる素敵空間がここにあるという感じです。
それでいったらこれも一昔前の文化になってしまいますが、きらら系のような萌え4コマに近いものもあるかもしれません。
しかしそれよりも、よりギャルゲのほうに近しい気配を覚えるのは、陰キャを気取りつつもやたらに突飛な脳内思考と、決然たる行動力を併せ持つ主人公の立ち回りが、ヒロインのみならず全キャラの魅力を補強し際立たせてくれている構造のためでしょう。

まず本作はそもそものこととして文章力が高くて、語彙も豊富でわりと込み入った言い回しを頻繁に用いる文章なのに、するすると内容が頭のなかへ入ってくる。
その文章力に支えられた独特な台詞のセンス、いちいち挟まる主人公の辛辣な各人評などがものすごく楽しいのです。

これだけ地の文が楽しすぎると、仮に漫画やアニメなど文章を削らざるを得ない媒体になったとき危惧を感じてしまいそうですが、そこも心配は無用というもので、同様の文章力とセンスによって生み出されるキャラたちのセリフがすべて、あまりよそで見かけない世界観を持っているし愛らしい。

もっと人気が出て、せめて書籍化して、このキャラたちの姿を絵として見たいなあという気持ちを込めてレビューさせていただきます。
WEB小説としては更新は早くないかもしれませんが、この品質を粗製乱造などできないことは、自分で文章を書いたことのある人なら誰でもわかるでしょう。味わうように続きを待ちたいと思います。