名瀬夜々
夜々への想いを言葉にした途端、身体が自分のものでなくなるような感覚があった。
座っているはずなのに座っている気がしない。意識が切り離されて身体の背後に浮かんでいるように感じられる。
憂は現実感を繋ぎ止めるべく身体を動かそうとして――膝の上の拳を握るに留めた。それだけで十分効果があった。手から全身へと力が伝わり、自身の輪郭を引き直すことができた。
告白。
心の中を打ち明けること。
好きな相手に好きだと告げること。
伝わっただろうか。
伝わるように伝えられただろうか。
姉倉憂から名瀬夜々へ。
あなたのことが大好きです、と。
まだ告白は折り返し――返事までがワンセット。
憂は腹の中心に力を込めて、目を逸らさずに意識の全てを正面の夜々へ集中させる。
対する夜々はというと。
丸っこい目を見開き。
ほっぺた全体を赤らめて。
言葉が出ないと言うように――言葉を選んでいるように。
音を発さず口の形を忙しなく変えたのち、きゅっと唇を結んで真剣な表情を作り上げた。かと思えば、どうしても堪えられなかったという風で表情を崩し――ふにゃりとしたあどけない笑顔になる。
が、すぐに両手で顔を隠すと、上体を倒して丸くなってしまった。
「ご、ごめんね。ちょっとだけ待ってください……」
夜々は弱々しい声で言って、深呼吸をする。
この反応は一体何事だろう。即応できないだけの気掛かりな点があったりするのだろうか。
後ろ向きな思考が憂の脳内を駆け巡ったが、直前に見た夜々の笑顔でそれら一切を塗り潰し、ただただ黙って続きを待つ。
そして数秒が経った頃、夜々に動きがあった。
圧し掛かる沈黙を振り払うように勢いよく顔を上げ、そのまま憂を素通りして空を向き、
「やっぱりむり!」
と、天高くに宣言して。
すぐさま顔を正面へ戻し、立ち上がりつつ右足で踏み切り――憂の胸へ飛び込んだ。
夜々を抱きとめた憂は勢いのまま後ろへ倒れ込む。
そうして仰向けとなった憂の上に夜々が重なる形が出来上がった。
いきなりの大胆に、憂の心臓が跳ね上がる。
夜々は憂の左胸に右耳をくっつけて、ちょっとだけ済まなそうに微笑んだ。
「はしたなぶるでごめんなさい。嬉しくて嬉しくて、うれしくて……ぜんぜん抑えられませんでした」
「……僕も嬉しい。こうやって思うままを行動にしてくれるところも、好きだから」
「憂くんに好きって言われるの、好き」
「じゃあ、たくさん言うね」
「うん。たくさん言って」
甘えた声でそう求めた夜々は、「だからその前に」と間を取って。
次いでゆっくり身体を起こし、憂の腹あたりに跨るような格好になる。
そして憂の顔を覗き込み。
目が眩むような曇りない笑顔を憂に向けて、続きを口にした。
「私も憂くんのことが好きです」
くっきりした発音の、力強い声音。
まだ続きがあるようで、「よーく聞いてね」と両手を憂の頬に添え、心から嬉しそうな笑みをさらに深めて――
「大好きっ!」
と。
言ってくれた。
名瀬夜々から姉倉憂へ。
あなたのことが大好きです、と。
返してくれた。
求めていた言葉に、震えるほど嬉しいその言葉に、憂がじっとしていられるはずはなく。
身体を起こす勢いのまま、思うまま、夜々を強く抱き締めた。
夜々もまた憂を抱き締めてくれる。
込めた力がそのまま返ってきたかと錯覚するほどに、強く。
「僕も夜々さんが好きだ。大好きだ」
確かな感触が、熱が、これが現実なのだと教えてくれる。
離せる気がしないし、離すつもりもない。
「ずっとこのままでいてもいい?」
「うん。私はそのつもりだよ?」
「苦しくない?」
「足りないくらい」
「夜々さんが僕を好きになってくれて、嬉しい。嬉しくて仕方ない。大好きだよ」
「私も。好き、大好き。憂くんのことがだーいすき」
「大切にする。ずっと一緒にいよう」
「ずっと一緒にいてね。私も憂くんのこと、たくさん大切にする」
「夜々さん」
「憂くん」
「夜々さん」
「ふふっ、なあに? 憂くん」
「もう一つ、聞いてもらえる?」
「どーぞ。聞かせてちょーだい」
「好きだよ」
「……もー。それじゃ私からも一個、聞いてもらう」
「うん、聞きたい」
「好き」
「嬉しい。夜々さんは僕のことが好き」
「憂くんは私のことが好き」
「両想いだ」
「両想いだね。両想いだよ」
「ねえ夜々さん」
「なあに憂くん」
「大好き」
「大好きっ」
想いが通じ合ったことで生まれた高揚感により、理性という歯止めを失った二人は、しばらくの間ずっと、抱き合ったまま、同じようなやり取りを繰り返した。
好きと言って、好きと返す。
大好きと言って、大好きと返す。
もはやこの応酬は何者にも止められないかと思われたが――しかし、互いが相手を好きすぎるが故の閃きによって、あっけなく終わりを迎えることとなった。
抱き合ったままでは相手の顔がよく見えないと気付いたのである。
というわけで一度抱きしめる力を緩め、至近距離で顔を見合わせたところ、二人は瞬く間に顔いっぱいを赤熱させたのち、硬直した。
顔を見たことで待機していた好意が溢れ出し、処理能力を超えたためだ。恐らく夜々も同様の事態に見舞われたのだろう。
ぎこちなく視線を逸らす二人。
けれどやっぱり顔を見たいらしく、すぐに視線がぶつかった。
「夜々さん、可愛い」
「……ゆ、憂くんこそ。すっごく赤いよ」
二人は恥じらい交じりに微笑み合い、座り直して横並びになり、景色を見遣る。
憂が右側へわずかに体重を預け、夜々は左側へ身体を傾け、肩を寄せ合う。
柔らかな静寂に、風を受けて揺れる枝葉の音が混じる。
「……憂くんはさ、私のどんなところを好きになってくれたの?」
心地よさの中に夜々の声も加わる。
遠慮がちではあるが、期待しているのがありありと伝わってくる、そんな声だった。
「明るいところ。表情も性格も、生き方も。眩しいくらい夜々さんは明るいよね」
好きな部分は山のようにあるけれど、まず一つを即答するならこれがいい、と憂は思った。
「以前の僕はなんでも自己完結して分かった気になって、一人でいることが正解のように振舞ってたけど、本当は誰かと一緒にいたかったんだ。そのくせ自分じゃ気付いてなくて、見えてなかった。でも夜々さんが僕の行きたい方向を照らして、示してくれた。灯台娘って名称は伊達じゃないね」
憂が笑いかけると、夜々は照れくさそうに頬を掻く。
「時には強引にでも人と関わっていく夜々さんから、段々と目が離せなくなって。大事なことを言葉にする――僕に教えてくれた大切な在り方を、僕が目指す生き方を、怖くても貫こうとする強さに惹かれたんだ。四人でピクニックに行った、あの日に」
今なら分かる。
夜々が家族と向き合うことを決断したあの日から、彼女に惹かれていた。
「みんながいてくれたからだよ。私一人じゃ無理だったもん」
「一人じゃできないって言ってくれて、嬉しかった。弱い部分も見せてくれたことが、僕達を必要だって言ってくれたことが、本当に、嬉しかったんだ」
憂が理想とする生き方を貫こうとする強さに触れて。
そのための一歩を踏み出せなかった弱さに触れて。
眩しいくらい明るい彼女にも、誰かの力が必要なのだと知って。
そばにいたいと、そう思った。
「そんな強くて弱い夜々さんと、支えたり支えられたりお互いを必要としながら、一緒に歩んでいきたい」
「……うん」
「他にも好きなところはたくさんあるけど、ここはあえて一言で。まるごと全部好き」
「ひゃー! もー。そっか。そっかぁ」
にへら、という擬音が似合う笑顔を見せた夜々が、憂の肩に頬をスリスリする。
「私にも聞いて」
甘ったるい声で憂に求める夜々。
だだ甘え。
「夜々さんは僕のどんなところを好きになってくれたの?」
「ぜんぶ!」
憂が言い終えた直後、被せ気味で夜々は答えた。
誇らしげな調子が愛らしく、とにかく嬉しくて堪らなくなった憂は夜々を抱きしめたい気持ちでいっぱいになったが、夜々が続きを語り始めたため我慢した。
「全部好きだけど、一番最初は、同じ深さで色んな愛情を持ってるとこを好きになった」
そう言って夜々は頭を倒し、憂の肩に乗せる。
「憂くんから、私達のこと大好きなんだってすごく伝わってくるけど、同じじゃない。同じくらいなのに同じじゃない。みんな自分だけの憂くんを知ってる」
大切なものを自慢するように言って、夜々はくすぐったそうな吐息を漏らし。
会ったばかりの頃は、と過去を懐かしむ前置きをして、続ける。
「今と違って素直じゃなかったよね。それでも私達一人ひとりに合わせてくれてた。嫌がらせを気にしてないって言った葉火ちゃんには、何も言わず気にしてない感じで。ちょっと口下手だった三耶子ちゃんには、憂くんから踏み込んで。私のこと、すごく気にしてくれてるのに、私から話すまで待っててくれた。ずっと見ててくれた」
と、差異を一つずつ丁寧に並べ、間を空けて。
「嬉しかったよ。すごく、嬉しかった。私を一人にしないでくれて」
声のボリュームを抑えてそう言いながら、夜々は憂の右腕を両手で抱いた。
「そうやって少しずつ憂くんを知っていくうちに、もっと大切にしてもらいたいなって。私しか知らない憂くんがたくさん欲しいって欲張るようになっちゃって……」
はしたなぶるです。
と恥ずかしそうに言い、夜々は一度話の軌道を変えた。
「前に私が将来のこと考えてるって話したの、覚えてる?」
「覚えてるよ。屋上と、夜々さんの家で話したよね」
「あれね、憂くんへの気持ちのことだったんだ」
「……そうだったの?」
「うむ。それでね、文化祭が終わって……家族とのすれ違いがなくなって、視野を広く持てるようになって、改めて考えてみたんだけどさ」
そこで夜々はたっぷり空白を設け、屈託のない微笑みで繋ぎ――言った。
「その時にはもう大好きになってた!」
一点の照れもないストレートな好意。
あまりにも直線的で嬉しい言葉に憂の方が照れてしまった。
「だから私のことも好きになってもらいたくて、憂くんの好きな女の子になりたくて、そこからは猛アピールの日々。結構手応えありでした。憂くんってば私の欲しがってる言葉をたくさんくれるから、これはもう両想いでは!? ってはしゃいじゃってたよ」
「煮え切らない奴でごめんね。思考の迷路に迷い込んで、気付くのが遅くなった」
「いいの。告白されたいっていう私のわがままもあったし、それに――おかげで三耶子ちゃんと葉火ちゃんと、これからも親友でいられるから」
風が頬を撫でたからか、それとも思い出が心地いいからか、あるいはその両方か。
夜々は桜を見上げて気持ち良さそうに微笑する。
それから「こっちを向いて」と続けて、応じた憂の視線を独り占めにした。
そして。
そして――
「私を好きになってくれてありがとう。憂くんのことが大好きです」
と、今日何度目か分からないほどに見せてくれた、けれど少しも飽きのこない自然な笑みを浮かべた。
その表情に心奪われて。
飽きる日なんて一生来ない、と憂は思った。
「僕の好きな子が可愛すぎる……僕の彼女が可愛すぎる!」
俯きながら憂は言う。
「か、可愛いって言われると照れちゃうんだよね、私……」
「諦めるか慣れるしかないね。普段から可愛いんだから、照れたら当然可愛いよ」
「こ、こやつめ」
「そんな夜々さんが隣にいてくれるのが嬉しくて、ドキドキする。絶対誰にも譲らない」
「……私もー」
と、再び好意の渡し合いを始めようとしたところで、憂はなにか引っかかりを覚えて口を噤んだ。
その正体が何かはすぐに気付いた。
「……ごめん。僕の告白、ちょっと抜けてた」
「ぬけ?」
「一応補足というか、ちゃんと言葉にしておかないと」
そう前置いて、憂と夜々は正座で向かい合う形になる。
夜々を好きだと伝えた。
ずっと一緒にいたいと伝えた。
そして受け入れてくれた――だから必要はないのかもしれないけれど。
言っておくべきだと思ったから、夜々の目を見て、言葉にする。
「僕と付き合ってください」
彼氏彼女の関係になってください――と、わざわざ、生真面目に、そんなことを憂は言った。
既にプロポーズじみたセリフを放っているのだから、順序がおかしいのはよく分かる。
けれど。
これから先の長い道のりを一緒に歩いていくからこそ、現在地を明確にするべきだ。
曖昧な灰色には、しない。
そんな憂の思いを汲んでくれたのだろう夜々が、そっと手を伸ばし。
憂の右手を両手で握ると、自身の胸元へ持っていき。
「はい」
無垢な笑顔で頷いた。
〇
好意が溢れるあまりついにはお昼寝という名の囁き合いが始まったりもした二人のお花見は、辺りが暗くなってきたのを頃合いにお開きとなった。
片付けを済ませ、手を繋いで公園を出る。
バス停までの道のりを緩やかな足取りで進む。
「戻ったら三耶子ちゃんと葉火ちゃんに報告だね」
「二人とも心待ちにしてくれてるだろうから、誰より最初に伝えないとね」
「ね! その後は、姉倉家のみなさん、名瀬家一同、マチルダちゃんに――」
と、夜々は荷物を持った右手の指を開いたり畳んだりしながら、色んな名前を口にしていく。
「美奈子ちゃんにもお世話になったね。手繋いで会いに行こうか」
「言い触らされちゃうかもよ?」
からかうような調子で夜々が言う。
「望むところだよ。隠す理由なんて一つもないし。むしろ僕が触れ回りたいくらいかな。夜々さんさえ、よければ」
「もちろん! 私の好きな人で彼氏です!」
「僕の好きな子で彼女です!」
などとハッピーなバカップル全開で笑い合っているうちに、バス停へ到着した。
バスの本数は一時間に二・三本と少なかったが、幸いにも次は二分後に来るらしい。
ギリギリセーフ。
帰りのことを少しも考えてなかった危ねえ、と憂は命拾いした思いだった。
木製の簡素な待合小屋に小さなベンチが一つ設えてあったので、手を繋いだまま夜々と並んで腰掛ける。
「あっという間だったなー」と、夜々。
「またどこかに遊びに行こう。行き先は一緒に考えてさ」
「ひゃー楽しみ! 私、ベーグル食べ放題に行ってみたい!」
という夜々の希望を皮切りに話はどんどん膨らんでいき。
大勢でのお花見や四人でのピクニックといったすぐ近くの予定から、少し先の未来まで思いを馳せる。
まだまだ人生は続いていく。
その道のりの歩き方と、景色の見方に飾り方を語り合った。
――そんな時間もあっという間に過ぎて。
二人を迎えるバスが到着する。
名残惜しみつつも憂が立ち上がろうとしたその時、
「……もうちょっとこのままがいい」
と、夜々が呟いた。
独り言のようなそれは掻き消されることなく憂の耳へ滑り込んだ。
そして二人はバスを見送った。
走行音が遠ざかっていき、やがて聞こえなくなった。
「……わがまま言っちゃった」
「僕も同じこと考えてた」
次のバスがいつ来るのかを憂は確認していなかったが、立ち上がれば簡単に覗ける時刻表の存在を意識から外した。
バスの本数からも分かる通り、ここ周辺は賑わっているとは言い難く、人通りも少なければ走る車もほとんど見られない。
つまり、ほぼ二人きり。
まさか虎南やマチルダが近くに潜んでいるのではと疑いたくなったが、三耶子と葉火が相手をしてくれている以上、心配する必要は無い。
意識を右隣の夜々へ向ける。
夜々は小さく肩を揺らしながら、正面の景色を眺めている。
先程までと打って変わって、静かな時間。
足音一つ聞こえてこない。
その事実が二人きりであることを強烈に主張して――以前夜々と二人で過ごした夜の記憶が呼び起こされる。
憂は左の拳を握り、解いて。
「ねえ夜々さん」
告白する直前と同等か、あるいはそれ以上の緊張を覚えながら夜々の名前を呼んだ。
「んー?」
「もう我慢しないで夜々さんを好きにしてもいいんだよね」
思い返せばこれまでもかなり好きなようにさせてもらっていた気もするが、彼氏彼女の関係となった今、明確に制限が取り払われた……はずだ。
たとえば、遠慮。
これもまた無きに等しかった気がするが――とにかく。
「…………な、なにをしてくれるのかな」
「夜々さんはなにをされたら嬉しい?」
「憂くんになら……なにされても嬉しいよ?」
「ありがとう」
言って憂は右を向き、夜々と視線を交わらせる。
繋いでいる手に二人が力を込めるタイミングは、少しのズレもなく同じだった。
――だからきっと、考えていることも。
沈黙の中で二人は見つめ合う。
何も言わず、じっと互いの表情を見つめて。
微笑み合って。
そして憂は。
夜々へ顔を寄せ――頬ではなく唇に、そっと。
唇を、触れ合わせた。
瑞々しく柔らかな感触は、憂の行為を押し返さずに受け入れてくれる。
伝わってくるあたたかさが身体に流れ込んできて、指の先まで痺れるような感覚に変わる。
やがて何も考えられなくなっていき。
繋いだ手と重ねた唇以外の感覚が分からなくなっていき――
そしてゆっくりと、口を離した。
どれくらい時間が経ったのか、今自分がどんな顔をしているのか、分からない。
考える余裕なんてあるはずがない。
憂は、ただただ。
口に残った感触と。
幸せそうに微笑む夜々に心を奪われていた。
「……もう一回」
そんな憂に向かって、夜々が言った。
めちゃくちゃな発音で。
口元が緩むのを抑えきれないといった風の、今にもだらしなく笑ってしまいそうな表情で、恥ずかしそうに。
そう言って――
「今度は、私から」
私から――夜々から。
憂へ顔を近付けて。
甘えるような、キスをした。
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