第38話 発見
「さて、次は……と」
イメアは興味を失ったのか、倒した
右手を軽く上げ敵のいなくなったはずの空間に、岩影を利用して刃を生み出し。
イメアからは死角になっている岩場の裏側に刃先を伸ばした──直後。
「いやんっ!」「あはんっ!」
野太い悲鳴と甲高い悲鳴が同時に上がり、身を隠していた者たちが、イメアの視界内に飛び出してきた。
「隠れていても無駄だ。俺様から逃れられると思うなよ?」
見つからないよう隠れていたバルムとリーシャの存在を視認し、イメアはニヤリと口角をつり上げる。
イメアは強い者と戦いたいという渇望を持っている。それを知っているがゆえに、バルムとリーシャは隠れ、
しかし空間内が暗闇に満ちたときに、
「見つかってしまいましたわよ」
「リーシャのトイレの芳香剤みたいな香水のせいで気づかれたんじゃないの?」
「失礼ですわね。私のはフローラルで上品な香りですわ。むしろバルムの筋肉の暑苦しい熱気でバレたのでしょう?」
互いに見つかった原因を擦り付け合う兄姉の醜態を、イメアは無言で見つめる。
カインであれば二人のバカなやりとりに呆れてツッコミを入れているところだが、イメアは冷淡な瞳を向けるだけだった。
「お前たちも以前より強くなったのだろう? どれくらい実力が伸びたか俺様が測ってやろう」
兄姉を挑発し戦いを挑む姿勢を見せるイメアに、二人もとっさに身構える。
本来の人格であるカインと違い、魔王は何者も恐れず、非常に好戦的な性格をしていた。死ぬほどの恐怖から逃れたい、誰よりも強くありたいと心の底から願ったことが叶った姿と言っても差し支えないだろう。
二年前にイメアに変貌し戦ったときは、カインが化け物と評価しているバルムとリーシャを半殺しにまで追い込んだ。
そのときよりは確実に実力も成長しているとはいえ、現在二人は手負いの状態で、イメアに人格が入れ替わっているカインは怪我もなく絶好調だ。まともに戦えば勝ち目はない。それでも、
「おほほっ。可愛いカインと違って、生意気なあなたには遠慮しませんわ」
「うふふっ。俺様力が全開な男は好きだけど、私たちのカインを返して貰うわよ」
リーシャとバルムは体をズラして半身になり、傷ついた部分を相手に見せないようにしながら宣戦布告をした。
血縁という意味ではもちろんのこと、カインの性格が好き──むしろ家族として愛しているからこそ、悪逆非道なイメアのままでは死んでも嫌だと二人は思っていた。
「この体は俺様のものだ。取り返せるものなら取り返してみろ」
トラウマから生み出された別人格だろうと、俺様は俺様だとイメアは告げ。
影の球をいくつも飛ばしながら、地面を蹴って滑るようにバルムとリーシャに迫ってきた。
「舐めないで貰いたいですわね!」
リーシャは鞭を細かく振るい、飛び来る球をすべて叩き壊す。
肩を大怪我してもなお、人間離れした技の速度とキレを誇るが、やはり堪え切れない痛みが襲ってきたのか、綺麗な顔に苦痛の表情が浮かぶ。
それを愉しげにイメアは見つめると、拳に影を纏わせてリーシャの胸を目がけて振り被り。
「させないわよ!」
その拳に吸い込まれるようにバルムも
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