幾度生まれ直しても

 転生の秘術は、意志が宿る前の心核に、私を転写する。人の性質は、心核に宿る魂が決める。だから、私は何度でも『幸運のアリスアリス・フォーチュン』だった。

 都度変わる、親に名付けられる名前は、私の本質を示さない。だから私は、変わらない遥かの金月ガルデナに、私を見た。私は、金月ガルデナのアイリフォート。


 でも、だからこそ。私はやっぱり、いつでも不幸だった。私が私である以上、定められた死運デッドラックもまた、常に引き継がれていた。


 とはいえ、私の子供達には、不幸は受け継がれなかったらしい。思い返せば、私の父さんも母さんも、特別に不幸じゃなかった。

 私だけが、どこまでも不幸だった。私の家族が不幸だったのは、私が近くに居るときだけだった。


 だから、私は家族の近くには居れなかった。居たくなかった。たとえ、その行いを恨まれても、私のせいで、私が愛した人が不幸になって、そして死んでしまうのだけは、絶対に耐えられなかった。

 私が一緒に居ても良いと思えたのは、私を欲する連中だけだった。彼らの打算のぞみは、彼らの命で清算された。

 罪悪感が無かったと言えば、嘘になる。だから、私は純粋な欲望をこそ求めた。真っ当に愛されるのは、耐えられなかった。近くに居れば、必ず死ぬから、私が愛する必要のないものしか、私の傍には居てほしくなかった。


 でも。そんな生き方を何度繰り返しても、決して満たされることはなかった。人並みの幸せは、遥かに輝く金月ガルデナのように、決して手の届かない憧憬だった。手を伸ばしても届くことのない幸福は、私の不幸を一層強く照らした。


 ねえ、神様。どうして、意地悪をするのですか。

 私に、何の恨みがあるんですか。私の何がいけなかったんですか。


 ……きっと、貴方にも意向があるのでしょう。それでも、私は貴方の意向には従いません。貴方が私を求めるのなら、私は貴方のものにはならない。

 私は、絶対に貴方を愛さない。


 ――ここに幸せがないのなら、遥かの月にはあるのかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る