彷徨える金月の娘

雅郎=oLFlex=鳴隠

死に切れない生涯

 私は、不幸だった。

 何をやっても、決して上手くはいかない。天運は、いつでも最悪の結果を指した。妥協は、決して許されなかった。全ての準備を完全にこなして、それでも天命は必ず私を裏切った。得られたものは、最低限だった。


 私の不幸は、周囲の人も巻き込んだ。私の近くでは、偶然は必然となった。起こり得るならば、事故は必ず起きた。機械は壊れて、安全装置は働かなくなった。ほんの些細な失敗は、いつでも致命的な結果に繋がった。

 死は、いつも私の傍で口を開けて待っていた。気を抜いていい瞬間なんて、どこにもなかった。……父さんも母さんも、私のせいで死んだ。


 不幸中の幸いで、降りかかる災禍を払い除ける力はあった。運命に抗うために、可能な努力は全てやった。潜む危険は、予知出来る未来になった。かかる被害は、回避出来る事象になった。


 それでも、私の周囲には、もう誰も居ない。

 私に愛をささやいた者は、皆居なくなった。ある人は、事故で死んだ。ある人は、私に嫌気が差して逃げた。ある人は、私を欲した別の人に妬まれ、殺された。

 ……ある人は、不幸の根源わたしを殺そうとして、失敗して死んだ。


 お友達は、元々居ない。私は常に、求められるか妬まれるか、そのどちらかしかなかった。対等の相手は、この世のどこにもいなかった。


 『幸運のアリスアリス・フォーチュン』は、託された名前ねがいに反して、だった。定められた死運デッドラックが、私を愛していた。運命が私を欲して、私を殺そうとし続けた。


 ねえ、神様。こんな人生は、あんまりだと思いませんか。

 どうして神様は、私を虐めるんですか。


 私は、私への仕打ちに納得出来なかった。だから私も、神様の意向に背く。私は、命の還るところライフストリームには還らない。


 ――納得が出来るまで、私は何度でも生まれ続けるの。

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