17.目標!
☆龍崎ルカ
「私の社畜生活に彩を与えてくれた」
黒マントの人はそう言った。
えーと、社畜……ってなに?
「社畜ってなに?」
「社会人のことだ。正確には特定の社会人を指す」
「働いてるんですね! 見た目若かったからてっきり大学生かと!」
「敬語はいい。というか、私が大学生だったらタメ口なのかよ!」
確かに!
でも、敬語ってなんだか私らしくないし、ダンジョン探索者同士ってタメ口でも構わないみたいな風潮もなんとなくあるみたいだし、まぁいいよね!
「とにかく、お前らの配信はこれからも見させてもらう。楽しませてくれよ!」
「えっ!? それって私達のファンになってくれるってことだよね!? 嬉しい!!」
まさか、目の間にファンがいるなんて。
貴重な経験だね。
「それにしても凄かったっす! 私も見習いたいっす!」
そう言ったのはココロちゃんだった。
確かに、この人の動き凄かったよね。
私達より大分ベテランっぽい。
「師匠! 頼むっす! 弟子にしてください!!」
「弟子!? 確かお前は剣聖だったろ!?」
黒マントの人、驚いてるよ。
それにしても師匠ってなんかいいね。
私もそう呼ぼうっと!
「気持ちはありがたい……けど、私は大した実力を持っていない」
「そうなの?」
「ああ。スキルだって弱い。【切れ味アップ】だ。その名の通り切れ味がアップするだけのスキルだ」
「弱いの?」
弱いスキルなのか、私全然分からない。
「ソ……ミラクルちゃんはそのスキルのこと知ってる? 本当に弱いスキルなの?」
ソラちゃんと言いかけてしまった。
危ない危ない。
「えーとですね、強いか弱いかは人によりますが、珍しいスキルではないですね」
「なるほど!」
汎用性が高そうだね。
「と言う訳だ。私から剣を習うのは諦めた方がいい」
「残念っす……」
「まぁそう残念がるな。剣聖ならばいつか私を簡単に追い越すだろう。それに、私にはそんな時間なんてないんだ」
時間がない!?
はっ! まさか……誰かとのデートとか!?
「仕事があるからな」
「仕事かぁ」
社会人だから忙しいんだろうね。
私は大人になりたくないなー。
「今日みたいな日曜は駄目なんすか?」
「駄目だ。仕事があるからな」
「日曜も仕事っすか!?」
「仕事が終わらないんだ。仕方ないだろ」
ココロちゃんは驚いたようで一歩引いた。
でも、できる人ってきっと仕事を沢山任されちゃうんだよね。
「師匠……プロだね!」
「プロ?」
「有能過ぎて沢山お仕事任されちゃうんでしょ?」
「そんなでもないさ」
「またまたぁ!」
「ふっ、そんなでもない……けど、お前達のおかげで私はまだまだ仕事を頑張れる」
まだまだ頑張る気なの!?
日曜も仕事やってるくらいなのに、いくらプロでもやばくない!?
「睡眠時間も更に削れるくらい元気が出た」
「やばっ……」
「やばくない。社会人として当然なんだ。社会人として、社会人として頑張る社会人として」
この人大丈夫かな?
「楽しい?」
「楽しくない」
「なるほど!」
楽しくないってさ!
「でも、マジでありがとな」
「まぁ、元気になるんだったら良かったのかな?」
「ああ」
そう言うと、その人は去っていった。
「く~っ! 私も師匠くらい強くなりたいぜ!」
「ココロちゃんの目標?」
「そうだな! 私はダンジョン探索者としてはまだまだド素人だからな!」
ココロちゃんは強くなるのが目標なんだね!
「私はもっと、良質なポーションを作りたいですね。後はもっと色々なアイテムを作りたいです!」
なるほど!
それで私達をサポートする役に回ってくれるって訳だね。
「ですが……果たしてポーションは必要になるのでしょうか? と、心配が……。なので、攻撃用のアイテムも作れるようになりたいですね!」
「頑張って!」
色々できるようになりたいんだね。
強くなる、もっと沢山のアイテムを作れるようになる。
私はどうしよう。
そうだ!
「だったら私はダンジョンを攻略する!」
「攻略って普通じゃないのか?」
「確かに、ココロちゃんもソラちゃんもダンジョン探索はするだろうけど、私はもっともっと色々なダンジョンを探索して、攻略する!」
「凄いやる気だな! 気を付けろよ? 普通にダメージ食らったら痛いし、死んだらやばいんだからな?」
「分かってるって!」
でも、私はもっと冒険してみたい!
そう思うようになったんだ!
勿論、趣味のアニメ鑑賞も忘れずにやるけどね!
よしっ! いいよいいよ!
ってことで!
「ソラちゃん! 難しいダンジョンって私達が行ける範囲でない?」
「難しいダンジョンですか……? 秋葉原とかどうですかね?」
「秋葉原! なるほど!」
詳しい場所はソラちゃんから聞いた!
「1人で行く気かよ!」
「うん! ソロって奴!」
「そいつはヤンキー過ぎだろ!」
「大丈夫だって!」
ココロちゃんは心配してくれたけど、どうしても行ってみたい!
「私も怖いけど行くか……?」
「大丈夫! それに、ソロにも挑戦してみたいんだ!」
「分かった……無理はするなよ?」
「勿論!」
私は1人で秋葉原のダンジョンへと向かった。
ソラちゃんにはポーションを貰ったよ。
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