9.デパートのダンジョン
私達はバスに乗って、デパートにやって来た。
とは言っても、デパートの中には入らない。
デパートの駐車場の更に隣のスペースに、ダンジョンへ続くゲートがあるので、そこから通称デパートのダンジョンへと入る。
ダンジョン内に入ると、人が大勢いた。
それに森のダンジョンのハズなのに、人の手で整備されているみたい。
「久しぶりに来ましたね。半人工ダンジョン」
「私は当然ながら初めて!」
半人工ダンジョン。
その名の通り、人の手が加えられたダンジョンのことだ。
スタッフさんみたいな人も、徘徊しているし、アトラクションみたいな場所だね。
「あっ! あの魔法少女の子、配信をやってますよ!」
ソラちゃんの視線の先には、フリフリの衣装を着た、いかにも魔法少女って子が、少し大きなサイズのスライムと戦っていた。
周りには、スマホを構えたその子の知り合いと思われる人や、生でその子の活躍を見ようとしている人達がいた。
「いっくよー! 【バチバチ☆スパーク】! 連射~!」
すると、その子は手から小さな黄色い電気が発射された。
相手にヒットすると、星のエフェクトが出て綺麗だった。
『魔法【バチバチ☆スパーク】を覚えました』
えっ!?
今、私の脳内に謎の声が!
ソラちゃんに訊いてみようっと!
「おお! それはラーニングって言われる現象ですね! 魔法少女が他人の魔法を見て、覚えることがたまにあるみたいです。とは言っても、覚えられるのは、初期魔法と呼ばれるあまり強くないもの限定みたいですけどね」
「ありがとう! なるほど!」
強い技じゃなかったみたいだけど、かわいい感じだったし、いいよね!
私も早く使ってみたいな!
「グルルルルル!」
モンスターが!? って、ダンジョンだから当たり前か!
整備されていて、このエリアではモンスターが出現しないようになってるみたいだったから、急にうなられてビックリしちゃった。
でも、このモンスター、犬みたいでかわいい。
「ごめんなさい。ほら、行くよ、ポチ」
その人はモンスターを抱えて、どこかへと行ってしまった。
ペット……?
「あれはテイムモンスターですね。ダンジョン内でモンスターをペットみたいにしたり、モンスターを戦わせたいと思った人が、【テイム】っていう特殊な手段を踏んで、ああいった関係になれたりするんですよ」
訊こうと思っていたら、解説してくれた!
それにしても私、訊いてばっかりだね。
「実は私も昔はテイマーになろうとしていた時期がありましてね。私にとっては高い【ゴールド】 (ダンジョン内専用のお金)を出して、テイム用のアイテムを買ったりもしましたけど、全然駄目でした」
苦い思い出なのか、眉を八の字にし、苦笑いしながら話してくれた。
モンスターをゲットして戦わせるゲームみたいに、テイムするには条件があるのかな?
「どっちにしても私、モンスターには嫌われるタイプなので、仕方ないですね」
「嫌われる?」
「体質的なものですよ。そういう人、マレにいるみたいなんですよね」
「そうだったんだ……」
「でも、今は錬金術師として、ポーションの調合にハマっていますからね! 気にしなくても大丈夫ですよ!」
☆
その後、スタジアムのあるエリアへとたどり着いた。
思ったよりも凄い大きかった!
観客席なようなものはなく、遠くから見るか、巨大モニターに映し出されるのを見る形だ。
スマホでも見ることができるみたい。
今も誰かが戦ってるみたいだね!
「楽しそうだけど、危険じゃないのかな?」
ダンジョン内部で死んじゃった場合、ダンジョン外の体は無事だけど、痛いのはねぇ。
それにそうなっちゃったら、2度とダンジョンに入れなくなっちゃうみたいだし。
「そこは心配いりません! こういったフィールドには特殊なアイテムが使用されていますからね!」
「特殊なアイテム?」
「はい! それにより、フィールド内やその一定の周囲、または上空では痛みも感じませんし、死ぬこともありません!」
「えっ!? 確かにそれだったら安全だけど、どうやって決着を付けるの?」
「それはですね」
ソラちゃんが巨大モニターを指差した。
すると、試合をしている人達の頭上に、ゲームのHPゲージみたいなのが表示されていた。
実際にHPゲージって呼ばれているみたいだね。
互いの体力を数値化して、HPゲージにしているみたい。
先に相手のゲージを0にした方が勝ちみたい。
「これだったら、危険はありませんよ!」
「そうだね! 確かにこれだったら!」
やってみたいかも!
完全にゲームだしね!
「ってそうでした!」
「どうしたの?」
「皆の前に出て戦うので、これはこれで、身バレの心配があります……」
結局身バレは避けられなさそうだね。
いや、待って?
「どうぞ~!」
「ありがとうございます!」
丁度いい所に、ヒーローのお面を無料で配っているお姉さんがいた。
多分、スタッフさんだろうね。
「これを被って、試合に出る!」
「なるほど! 物理的に隠すんですね! けど、体の方が……」
確かにバレたら……って気にしてても仕方ないよね!
そもそも、私なにも悪いことしてないし、大丈夫だよね?
苦労してまで、私みたいな一般人の身元を特定しようとする人はいない……と信じたい。
「でも、私出たい!」
「私が心配し過ぎな気もしますし、止めはしませんけど、運良くスタジアムで対戦できますかね? 確か抽選で倍率低いですし……」
そういう感じかぁ。
と思っていると、お面に紙が挟まっていた。
そこには当たりと書かれていた。
「当たり……って! 私ラッキー!」
その紙には今から30分後にスタジアムが使えるって書いてあった!
対戦相手は、同じく当たりを引いた人みたい。
「頑張って来てください!」
ソラちゃんも最初は驚いていたけど、応援してくれている。
負けてもどうにかなる訳じゃないけど、勝とうと思った。
「今回のスタジアムはここです! 市街地です!」
視界のお姉さんがそう言うと、スタジアムはビルや家が建っている市街地に変化した。
スタジアムがかなり広いから、本当の市街地にいるみたい。
「リアルですが、人は住んでいないので、ご安心を!」
司会のお姉さんの冗談交じりの解説に、見ている人達の笑い声が聴こえる。
「では、選手の紹介です! 赤コーナー! 匿名希望とのことです!
そして、青コーナー! ビッグさんです!」
ビッグっていうのは、多分リングネームみたいなものだろう。
対戦相手は高校生くらいの男の子だった。
「対戦相手はっと……えーと、男の子? 女の子? 仮面被ってるから分からないや! 女の子だったらやりづらいけど、試合だからな。本気で行かせて貰う!」
私とビッグさん、互いに指定の位置についた。
視界のお姉さんが手を挙げる。
「それでは……試合開始です!」
ビッグさんは叫んだ。
「出し惜しみはなしだ! スキル発動! 【巨大化】!!」
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