8.ソラちゃんは、天才ハッカー!?
「バズるって、なに? ダンジョンで無双する様子を配信すること?」
「バズるっていうのはですね、インターネット上で沢山の人に注目される現象ですね」
「おお! なるほど!」
インターネット上で有名人になるってことだね。
でも、それがどうして駄目なんだろう?
やっぱり、インターネットは怖い所だからかな?
「どうして目立つと駄目なの?」
「私達はまだ中学生ですからね。こういう言い方は善良な人に失礼ですが、目立ち過ぎると利用しようとする大人達に狙われたり、変な配信者に絡まれたりしますからね」
「やっぱり、インターネットは怖い……!」
私はゴクリと唾を飲み込んだ。
あれ? でも……ソラちゃんは動画配信してたんだよね?
バズっていたら、マズかったのでは?
「ソラちゃん、顔出しで配信してたよね? 身元がバレたりするの、怖くなかったの?」
「私みたいな底辺配信者、見ている人はほとんどいませんからね……。それに、顔に関してはガードしていたので、大丈夫です!」
「ガード?」
「はい、人の顔を認識して顔を隠してくれるんです。私の表情に合わせてガードの表情も変わりますので、喜怒哀楽も表現できますよ!」
試しにと、ソラちゃんは私にスマホを向けて、動画撮影してくれた。
公開用ではなく、あくまでお試しで。
撮影した動画をソラちゃんに見せて貰う。
「凄い!!」
ソラちゃんが天才ハッカー級の実力を見せつけてきた!
やっぱりソラちゃんは凄い!
「どうやってるの!?」
なんと、私の顔全体が、アニメキャラクターのような3Dの猫の頭で覆われているのだ。
私が口を開いたシーンでは猫も口を開いて、笑ったシーンでは猫も笑っていた。
凄い……ここまでの逸材と私は友達になってもいいものなのかな?
「そ、そんなに凄いですか?」
「凄い! この技術力、まるで天才ハッカーだよ!」
「天才ハッカー!?」
ソラちゃんは驚いて、私から一歩後ろに下がった。
すると、ソラちゃんが真剣な表情になって、私の体を見回す。
「う~ん」
「どうしたの?」
「もしかしてルカさんは本当は大人で、体だけ縮んでしまったのかと思いましてね」
「ええええ!? そんなことないよ!」
ソラちゃん、急にどうしたんだろう?
でも、なんだか照れちゃうなぁ。
それだけ、私が大人っぽい性格をしているってことだよね?
「照れちゃうからやめてー!」
つい両手を前に出して、首を左右に振る私であった。
「ま、まぁそうですよね。すみません」
☆
「という訳で本当はこれを使って、ルカさんの顔を隠そうとしてたのですけど、バズり過ぎると身バレは避けられなさそうなんですよね。本気で特定するような人ですと、些細な情報でも特定されてしまいますからね」
身バレ……身分がバレるってことかな?
「そもそもドラゴンに変身する時点でマズイよね。おまけにあのガードも、あくまで画面越しだけみたいだし」
「そうですね……そこは失念していました」
「それに私みたいに珍しい魔法少女だと、どこかの施設に連れて行かれちゃうかも……」
「それに関しては、多分大丈夫です」
ダンジョン自体が科学で解明されていない不思議空間。
それにダンジョン内に入ったら、ただの人間であっても、火が出せたり水が出せたりが可能になること自体が異常なので、ダンジョンに興味のない人たちにとってはそこまで異常視されないと思います。
というのが、ソラちゃんの意見だ。
「でも、このままだとココロちゃんが言っていたアレができなくなっちゃうなぁ」
実はソラちゃんが言っていたことがある。
「アレとは?」
「動画とか配信でお金を稼ぐ奴!」
「広告収入とウルトラチャットですね」
「そうそれ! 私達でお金稼げたらゲームも買えるよ!」
「確かにそれもいいですけど、難しいですね。動画の広告やウルトラチャットを稼ぐには厳しい条件があるんです。特にダンジョンを動画や配信に使う場合は……」
☆
ダンジョン配信者が配信で投げ銭、又は動画投稿で広告収入を得るには通常の条件に加えて、厳しい条件がある。
それはクランに所属する、又はクランマスターになった後、365日が経過すること。
クランに所属するにはクランマスターの許可が必要だ。
クランを設立する場合は、18歳以上で更には3年以上のダンジョン活動歴が必要となる。
要するに今の状況からお金を稼げるようになるようにはなるには、ベテランの大人の元で、1年間活動しなくてはならない。
これには理由がある。
ダンジョン探索というのは、危険な行為だ。
ダンジョン内で死亡しても、外部の体は無事だ。
しかし、痛みは感じ、死の恐怖も当然あることから、精神的にダメージを受けてしまう可能性もある。
バズり目的で無茶をして、そうなった者も存在する。
それもあり、厳しい条件が設けられた。
なぜ禁止されないのかは、命に危険のあるスポーツが禁止されないのと一緒だろう。
☆
って、感じのことをソラちゃんが言ってた!
けど、折角だしお金は欲しいなって言うのが正直な所。
それをソラちゃんに言ってみると、提案してくれた。
「あっ! そうです! 試合の賞金とかで稼げるかもです!」
「試合ってそんなのあるの!?」
「ありますよ! とは言っても、ここではできませんけど、興味あります?」
「ある!」
けど、試合って痛そう。
ここはゲームの世界とは違うからね。
「試合って危なくないの?」
「その点は大丈夫ですよ! えーとですね、とりあえず実際にスタジアムがあるダンジョンに行ってみましょうか!」
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