2.どう見てもドラゴンな魔法少女

 私達はスキルの確認を行った。

 スキル確認の方法は簡単だ。


 ただ脳内で念じる、それだけ。


「よっしゃああああ!!」


 って私が念じてる途中で、ココロちゃんが突然叫んだ!


「どうしたの!?」


 もしや、強いスキルでも手に入れたのかな!?


「【剣聖】だ!」

「確か……それって、レアスキルの1つだったよね!? 運良すぎ!」


 スキル取得をやり直すことはできない。

 それもあって、一発勝負なんだけど、ココロちゃんは見事凄いスキルを引けたみたいだ!


 私ももう一度念じて自分のスキルを確認する。


 これはっ……!


 【魔法少女】。


 それが私に与えられたスキルであった。


「どうだ?」


 ココロちゃんが興味津々で訊いてきた。


「魔法少女だったよ!」

「魔法少女って……マジか!! 変身後の姿によっては超強いスキルだな!」


 魔法少女……あれ? なんだったっけ?

 ああ、思い出した!


 魔法少女は、変身系のスキルだ。

 「魔法少女」っていう同じスキル名でも、使用者によって、姿や強さが変わるのが特徴的だったね。


「しかも、ただ強いだけじゃないからな! 配信向けのスキルとしても超当たりスキルだぜ!」

「配信ってなんだっけ? テレビ……?」


 テレビの生放送番組かな?


「う~ん……」


 配信……なんのことだろう?


「って、ルカはそういうの見ないんだったな」


 ココロちゃんが「悪い悪い」と言い、眉毛を八の字にして笑いながら頭をかいていた。

 気をつかわせてしまった……。


 あっ! 思い出した!

 確か、ピカキンさんとかのことだよね?


 詳しくは知らないけど!


「配信って知ってるよ! どうもピカキンです! って奴だよね?」

「まぁ、そうだな!」


 気まずくならないで済んで良かった!


「とりあえず、そのスキルはかなり強いし、なにより変身できるからな! 羨ましいぜ!」

「そうなんだ! じゃあ早速!」


 スキルを発動しようとした、その時だ。


「いやああああああああああああああああ」


 誰かの悲鳴がダンジョン内に響き渡った。


「あっちからだぞ!」


 ココロちゃんが声の方向へと走っていく。

 誰かを呼んでいる時間もない。


 まだダンジョン探索に全然慣れてないけど、行くしかない!


「なんだよあれ!」


 悲鳴をあげた人のいる場所は、近かったから、すぐに駆け付けることができた。

 けど、目の前にいたモンスターは凄く強そうだった。


「ゴーレム……!」


 そう、ゴーレムだ。

 RPGに出て来るゴーレムそっくりだ。


 10mあるかないかくらいの大きさで、かなりの迫力がある。


 私はゲームも好きで、RPGもやるけど、この目では初めて見た。

 悲鳴をあげていたのは、白衣を着た見た目小学生くらいの女の子で、壁に追い詰められている。


 助けなきゃ! そう思っていたら、ココロちゃんが初期装備の剣でゴーレムに斬りかかった。


「駄目か!」


 ゴーレムの体は岩でできているからか、剣で攻撃してもビクともしない。

 でも今はやるしかない! 私も加勢だ! そう思っていたら……。


「くそっ!」


 まずい! ココロちゃんが転んだ!

 私はココロちゃんを助けようと、ゴーレムに向って走った。


 私だって初の戦闘だ、怖い。

 魔法少女でどんな女の子に変身するのかは分からない。


 けど!

 ここはやるしかない!


 今助けるよ! 2人共!

 見てて! 私の変身!


「マジカルチェンジ!!」


 ゴーレムとココロちゃんの間に割って入りながら、叫んだ。


 その叫びは【魔法少女】のスキル発動のトリガーとなり、私の体を紫色の光が包み込んだ。


 その後、一瞬にして変身が完了した。

 すると、ドシン! という大きな音を立てて、地面に着地した。


 ドシン……?


 私はゴーレムの両拳をパーで受け止めていた。

 なんか、いつもより身長が高いような……。


 っていうか、ゴーレムの顔が目の前にある!?

 でも、気にしてる場合じゃないね!


「す、すげぇ! すげえええええええええ! めっちゃヤンキーだ!!」


 基本的にココロちゃんが他人にヤンキーって言う時は、誉めている時だ。

 けど、なんで今……?


 もしかして、私ココロちゃんみたいな、かっこいい系の魔法少女なのかな?

 とりあえず、目の前のゴーレムをなんとかしないと!


 私はゴーレムを思いきり押すと、倒れた。


 凄い! 魔法少女になってから、凄い力がみなぎってくる!

 今ならあのゴーレムを倒せそうな気がする!


 ゴーレムが起き上がると、私にぶん殴ろうと走りながら襲い掛かって来た。

 私はそんなゴーレムの拳を受け止め、思いきりぶん投げた。


「ゴオオオオオオオオオオオオ!?」


 ゴーレムは地面を転がり、体の一部が砕ける。


「やったか!?」


 ココロちゃんが叫んだ。

 けど、ココロちゃんの予想は外れていた。


「なにぃっ!?」


 ゴーレムの体は、あっと言う間に再生してしまった。


「くそっ! どうしてだよ! 魔法少女の攻撃でも倒せないのか!」


 ココロちゃんはあたまをワシャワシャして、焦り気味だ。

 そんな時、ココロちゃんの隣にいた、白衣姿の女の子が叫んだ。


「ま、魔法少女なんですか!? で、でしたら……ドラゴンさん! 魔法です! 魔法を使ってください!」


 ドラゴンさん?

 ああ、私の苗字が龍崎だからかな?


 あれ? 私、名乗ったっけ?

 というか……。


 魔法ってどうやって使うの!?


「念じてみてください! 初期魔法が最低1つは獲得できるハズです!」


 ありがとう! やってみる!


 私は念じる。

 私に魔法の力を……!


 すると、頭の中に文字のようなものが流れてきた。


 【マジカル☆ファイア】


 なるほど……これが魔法だね。


 私は両足にしっかりと力を込め、魔法を発動させる。





 マジカル……☆ファイアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!





 私はそう叫んだ。

 すると、口の中が温かくなってきた。


 なるほど、魔法少女の中には、口の中から出るタイプもいるんだね。

 ちょっと変わってるけど……今はそんなことを気にしている場合じゃない。


 私は口を大きく開くと、口内で黒い火球が生成されていく。

 その火球がバランスボールくらいの大きさになると、それを吐き出すように発射する。





 いっけええええええええええええええええええええええええええ!!





 発射したそれは、ゴーレムに無事ヒット。

 ゴーレムは岩盤まで吹っ飛んでいく。


 そして岩盤にめり込むと、ゴーレムの体は耐えられなくなったのか大爆発を起こし、岩盤ごと粉々になった。


「お、おお……」


 ココロちゃんが目を見開いていた。

 かなり驚いているみたい。


 それはそうだ、私だってきっとそんな表情をしているに違いない。


「魔法少女……やば!」

「私、生で初めてみました……これが魔法少女の力ですか……動画と全然違います!」


 ココロちゃんもそうだけど、助けた白衣の子も驚いていた。


「グオ!」


 あれ?


「グオオオオ!」


 って、これ私の声!?

 今の私、私喋れなくなってるみたい。


 というか、さっきはそれ所じゃなかったからよく確認してなかったけど……。


 私の体、どう見ても人間じゃないよね!?


「ルカ! ドラゴン魔法少女……マジクールだな!」


 ドラゴン魔法少女……?

 もしかして私……私! 女の子じゃなくて……ドラゴンになってるうううううううう!?

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