第20話 彗星は来た 審判は下された 

 あずさの両親を説得して、俺たちは、風穴洞へ。

 この家にいるよりも、生存確率は、上がるはずだ。

 ネット情報では、戦時中は防空壕としても使われていたらしい。


 俺たち非力な人間は、どの時代でも、結局は自然に頼るらしい。


 姉ちゃんに連絡を取れば、「ナイスアイデア! 私達も、近くで探してみる!」と返信がくる。俺の家の辺りにも、たしか、昔の僧侶が祈りのために掘ったという洞窟があったはずだ。


 あずさのお父さんの車で風穴洞へ。

 パニックになった人を避けながら進むのは、思った以上に大変だったけれども、それでも何とかたどり着いた風穴洞。


 同じようなことを思った家族が何人かが、既に暗い洞窟の中に、身を寄せ合って座っていた。


 ひんやりとした洞窟の中。

 皆、静かに運命の時間を待つ。


 俺は、あずさの手を握る。


「あずさ……絶対、生きような!」

「うん!」


 生き延びられたら、全てが終わったら、俺は、あずさに告白するんだ。

 絶対に生き延びる!

 その気持ちを込めて、今は言わない。


 ゴゴゴゴゴゴゴ……


 外で、轟音が響く。

 一瞬、外で何かが光ったような気がした。


 怯えた小さな子が、母親にしがみついて泣き出す。

 

 バアアアン!!


 大きな爆発音。

 大地が揺れて、小石が頭の上にバラバラと降り注ぐ。


 洞窟が崩れたら、俺たちは、ぺしゃんこだ。

 お願いだ。洞窟よ。耐えてくれ!!


 彗星は、どこに落ちたのだろう。

 世界はどうなったのだろう?


 あずさが看護師になる未来は、あるのだろうか?


 俺たち……まだ、生きているよな? 死んでいて、気付いていないとか……ないよな?


 ――外が静かになった。


「お、終わった?」

「どうだろう……」


 俺は、そっと外を覗きに行く。

 まだ外は暗い。スマホの時間は、午前4時を指している。


 科学者のひょっとしたらの予想では、粉塵の巻きあがりで、太陽は見えないんだっけ?


 それでも、日の出の時間には、そっと薄い光が差す。


 折れた木々。彗星の衝撃で火事になったのか、焼け焦げた幹が、そのまま立っている。

 あずさのお父さんの車は、ひっくり返ってぺしゃんこになっていた。


 街は、壊滅した。

 世界は無に帰り、運が味方した僅かな人々が生き残った。





 

 

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