第19話 明日への 希望をつなげ 風穴洞
生きなきゃ。
俺は、あずさの言葉で、自分がどれほど諦めていたかを思い知る。
彗星が来たって、必ず死ぬとは限らない。
ひょっとしたら、とんでもないチート英雄が、彗星回避方法を考えてくれるかもしれないし。
ひょっとしたら、生き延びる方法があるかもしれないし。
科学者だって「ひょっとした」と仮説を立てている現状だ。
じゃあ、俺たちが、「ひょっとしたら」に縋ったって、何が悪い。
「生きなきゃ! なろうよ。看護師!!」
「でも……私たちは、シェルターを持っているわけではないし、宇宙ステーションにも行けないし。彗星を回避する力もないのよ?」
「それはそうだけれども……少しでも、生き延びれるようにあがこうよ」
「どうすればいいのよ」
「どうしよう……」
ノープランの俺に、あずさが笑う。
「ええっと、シェルターってどんなの?」
「待ってね。調べる」
誰かがプレゼントしてくれたライフラインの賜物で、インターネットも正しく機能してくれている。だから、スマホを叩けば、普段通りに検索結果が手に入る。
ネットは教えてくれる。
分厚い壁に囲まれた部屋を地下に作っているらしい。
そこに食料を持ち込んで……なるほど、自宅の地下に隠れている人、ワイナリ―のワイン蔵に隠れている人。わ、古代の墓に隠れている人もいる。
世界中のみんなが、あの手この手で命を明日へつなぐためにあがいていることが分かる。
でも、この建物に地下は無いし。荒れ狂った街で、地下鉄に潜むのは……どうだろう? 駄目だ。地下鉄の構内は、すでに人でいっぱいだとSNSであげている人がいる。
何か、何かないか?
「地下……」
「分厚い壁……」
「洞窟とか?」
「「風穴洞だ!!」」
俺とあずさは、同時に思いつく。
富士山のふもと。ひっそりとあいた洞窟。
大昔は、氷室として使われていたというから、丈夫なのだろう。
この家から、そんなに離れていないはずだ。
昔、あずさが引っ越す時に、二人でこの辺りを調べた時に、観光地として紹介されていた。
「行ってみよう!!」
俺たちは決意した。
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