第18話 看護師に なりたかったと 笑うキミ

 参考書に視線がいっているのに気づいて、あずさが慌てて片付ける。


「未練がましいでしょ? まだ、諦められないの」

「いや……すごいなって思った。偉いよ。俺、夏期講習がなくなって、少しだけ嬉しかったし」

「それも分かる!」


 久しぶりのあずさとのゆっくりした会話。

 心が和む。来て良かったと思える。


「私ね。看護師になりたかったの」

「知ってる」

「覚えていてくれたんだ」

「もちろん」


 あずさが看護師になりたかった理由も知っている。

 憧れていたんだ。

 小学校の時にあずさが入院した時に、接してくれた看護師の姿に。


 俺が見舞いに行った時一生懸命に話してくれたじゃないか。


「なりたかったな……。結構頑張ってたのにね」


 あずさのつぶやくような声。

 俺の心の底に、どっしりと落ちる。


 

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