第13話 逃げ水に 悪態をつく 登り坂

 俺は旅立った。

 駄菓子屋の婆ちゃんが言っていたように、引きこもっていたって仕方ないんだ。


 スマホが通じなくなって、連絡が出来なくなった幼馴染のあずさの元へ。

 最期の瞬間に、隣にいたいのは誰か。それを考えた時に、無性に会いたくなったのだ。


 母さんは、少し寂しそうな顔をして、親父は「行ってこい」と言ってくれた。姉ちゃんは、「愚弟よ。この彗星の騒ぎが終わったら、生きて会おうな!」と言って、ハイタッチで送り出してくれた。


 リュックの中には、水か数本と食料。今では貴重品だ。

 まさか、ほんの数日でこんなことになるとは思いもよらなかった。


 自転車で登る八月の坂道は、とんでもなくウザいけれども、それでも僕は、前に進んで行く。


 電気がなくなって、情報もほとんど入って来なくなった。

 最後のニュースはなんだっけ?


 たしか、テロリストが世界中のセレブのシェルターを襲撃して、無理矢理奪っているという話。

 もし彗星が本当に衝突したとして、自分達がいなくなった地球でセレブ達が生き残ろうが、テロリストたちが生き残ろうが、もうどうでも良い。


 今はただこの道を真っ直ぐ走り抜けるだけだ。

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