第194話 旅望 -ミルクティー1-

僕らは、マンションまで戻ってきた。

車は、担任を含めて駐車場に駐車した。


「えっと、こちらのマンションですか?」


担任は、高層マンションをエントランスで見上げていた。

既に絶句している。


「こちらは、社宅側になります。

尚弥も明花ちゃんもうちで働くことになっていますので。

今日は、オーナー権限で入れるようにしますのでどうぞ」


母さんは、自動ドアを開け担任と入っていく。

僕らは、それぞれ開錠をする。

彩夏さんは、先日登録をしていた。


「防犯カメラを…」


母さんが、志希さんと和希さんに話をしていた。

防犯カメラ?

ああ、外のか。

なるほど、盗撮の件だな。

それを聞いて和希さんが席を離れた。


「とりあえず、部屋へ行きましょうか」


志希さんが、操作してエレベーターを呼び出す。

担任は、キョロキョロしている。


「榛村先生、行きますよ」


僕は、明花を抱き抱えたままやってきたエレベーターに乗る。

だが、担任は動かないので声をかけた。

その声に、エレベーターに乗り込む。


「えっと、何階に住んでいるんだ?」

「15階です」

「え?」


担任は、驚いている。

まあ、そりゃあ驚くよな。

やがて、エレベーターは最上階である15階へと辿り着いた。

エレベーターを降りると、玄関へと向かう。

明花が、鍵を開けたのでドアを開け中へと入る。

それに続いてゾロゾロと入室してきた。

靴を脱いで、リビングへと向かう。

そして、ソファに明花を座らせる。


「えへへ、尚弥。ありがとう」

「ううん、僕がしたいだけだから」


僕らが、そうしているとリビングから見える景色に担任が驚いていた。

初めて来た彩夏さんも驚いている。


「明花、いいとこに住んでいるのね」

「うん、夜景とかとっても綺麗なんだよ」


僕は、全員分の飲み物を用意することにした。

湯呑は…来客用…うん、足りるな。

薬缶に水を入れ、コンロに掛ける。

お茶…うーん、紅茶にするか。

電子体温計の設定を90℃に設定してと。

ティーポットに、ウォーターサーバーからお湯を出して温める。

ティーカップにも、お湯を入れて温めておく。

いつの間にか、リビングにもダイニングにも担任も母さんたちもいなかった。

各部屋の確認に行ったのかな?


「明花、ミルクティーにする?」

「うん」


僕は、彼女の返事を聞いてミルクバンに牛乳を入れてコンロに掛ける。

薬缶側が沸騰してきたので止める。

ティーポットに入れておいたお湯を捨てる。

アッサムの茶葉をティーキャンディスプーンで3杯入れて、薬缶のお湯を注ぐ。

普通は、ティーキャディスプーン1杯で茶葉3gから4g。

お湯の量は、300cc程が目安になる。

のだが、ミルクティーにするのでちょっと濃い目にする予定だ。

蒸らしの為に、ティーコジーを被せ砂時計をセットする。

沸騰しないギリギリの温度の牛乳に、砂糖を加え溶かしておく。

やがて、砂時計が落ち切る。

ティーコジーを外す。

ティーカップのお湯を捨てる。

ティーカップに紅茶アッサムをそれぞれ1/3ずつ注いでいく。

そして、最後にホットミルクをカップに注いで完成。

視線を上げると、明花はダイニングまで来ていてテーブルで頬杖を突きながら僕を見ていた。


「明花、出来たよ」

「ありがとう、尚弥」


僕は、ダイニングにもっていく。

そうしていると、母さんたちが戻ってきた。


「いい匂いね」

「紅茶入れたんだ」


僕らは、それからダイニングで話をしていく。


「榛村先生、確認したいことがあるんですけど」

「ん?なんだ?」

「修学旅行の時の事なんですけど…本当に私が帰ったこと知らなかったんですか?」

「知らなかった。2日目の朝にお前がいないと風見に聞いてな」

「え?私、帰ったのは1日目の夕食のあとなんです。

それも、美加に先生に連絡を頼んでたんだけど」


ここで、符合してくるのか。

確かに不思議な物だな。


「風見か…あいつもおかしな行動をしているからな」

「ん?どういうことですか?」


僕は、気になりすぎて声に出していた。

先生は、ミルクティーを口に含む。

そして、ゴクリと喉を鳴らす。


「如月は知っているな」

「ええ、追いかけ回されましたからね」

「それをけし掛けたのはあいつだ。

生徒の1人がみていたらしい。

私の所に相談が来たんだ。

まあ、これでも生活指導だからな」


なるほど、生活指導だから色々知っているのか。

なんか予想通りな展開だなぁ。







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