第157話 旅懐 -昼休憩-
僕らは、中庭の芝生で弁当を広げていた。
中庭に来るときに、明花に改めて紹介してもらったから名前を知っている。
明花の幼稚園時代からの幼馴染みで、例の彼 久賀 隆志とも知り合いらしい。
「ねえ、どうして2人のお弁当の中身が一緒なの?」
「あ!」
明花が小さな声を上げる。
顔は、仕舞ったとバツの悪い表情をしている。
確かに、弁当の中身まで一緒は流石にまずかったな。
「…尚弥とは、一緒に住んでるから」
「え?どういうこと?」
僕らは、かいつまんで僕らの関係を話していくことにした。
といっても、僕の事をあまり話すことは出来ない。
説明がし辛い。
「えっとね、尚弥のお母さんと私のお母さんが友達だったの」
「へえ、おばさん同士が知り合い…でも私新藤くんのこと知らないけど」
「うん、だって尚弥とは京都で初めて出会ったんだから」
「明花、どういうこと?」
風見さんが首を傾げる。
まあ、そうなるよな。
「僕も同じ日に京都へ修学旅行だったんだ」
「尚弥と会ったのは京都タワーなの」
「じゃあ、2人はちょうど京都で出会って帰ってきたら偶然親が知り合いだったってこと?」
「「うん」」
風見さんは、呆れた顔をした。
まあ、出会って数日で付き合っているのだから呆れるよな。
「そのあと、僕らはちょっと修学旅行に居辛くなって二人だけの修学旅行をしてたんだよ」
「え、旅行?2人で?…ああ、だから仲良くなったのね」
彼女は、何かに気づいたようだった。
まあ、2人で旅をして確かに絆を強めたといっても過言ではないだろう。
「…新藤くんも明花と同じ感じなの?」
「うん…一緒に住んでいた彼女が音信不通になってね」
「それは、同級生?」
「うん、同じクラスで修学旅行にいくその日の朝までは家の中で顔も合わせて話もしたよ」
「なにそれ、酷い人もいるんだね」
僕の話に憤りを感じたのか声を荒げる風見さん。
ホント、未桜はどうしていなくなったんだろう。
今では、彼女がしてきたことが怖い。
「2人は、偶然出会って、同じ痛みを知って仲良くなったと。
なんて恋愛小説?」
冗談めかして話してくる風見さん。
でも、少し助かったと思ったのは確かだ。
「でも、良かったね。明花。いい人に出会えて」
「うん、尚弥に出会えてよかったよ」
満面の笑みを浮かべる明花。
僕は、その笑顔を見て笑みを零すのだった。
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