第155話 旅懐 -土日-

榛村先生は、ボールペンをテーブルに置いた。

もう、ペン回しはしない様だ。


「えっと、浜松に戻ってうちの親に明花の家へ行ったんです。

そしたら、うちの母親と明花のお母さんが幼馴染みだったんです」

「え?なんだ、その偶然」

「ですよね、私もびっくりでした。

えっと、付き合い始めたのもそうなんですけど、昨日から一緒に住んでます」

「それは、親公認ということか」

「「はい」」


はぁっと大きなため息を吐く先生。

そして、天を仰ぐ。


「じゃあ、学校からは特に言うことはないな。

事情は大体わかったからな…ただ、今度家庭訪問はさせてもらうから」


家庭訪問…うちに来る?

あれ?入れるのかな。

後で確認しておこう。


「わかりました」

「で、どこに住んでるんだ?浜松か?」

「いえ、磐田駅前です」

「じゃあ、割と近いな。

とりあえずは、これでいいだろう。

もうすぐ、一限目も終わるな。

2人共教室に戻っていいぞ」


僕らは、生徒指導室をあとにする。

ちょうど、出た時にチャイムが鳴った。

僕らは、教室まで戻るのだった。

いつも通りに手を繋ぎながら。

当たり前すぎて忘れていた。

教室に辿り着くまで…。

そして、それが失敗だったと気づくのはほんの数秒後だった。

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