第153話 旅懐 -指導-

僕らは、一階にある生活指導室へと連れていかれた。

なぜ僕までとは思ったが、明花一人にするのは可哀想すぎる。

だから、まあいいだろう。

僕としては、あっちの学校から逃げれたのだからそれだけで助かっている。

それも、明花のおかげだ。

あの日出会わなければこんな『今』を迎えれていなかっただろうし。

そして、僕らは先生と向かい合わせに座っている。

間には、机があり調書でも取るかのようにバインダーされた紙を持っている。


「とりあえず、秋山の修学旅行バックレの件…新藤は共犯でいいんだよな?」

「…まあ、そうですね。僕も、前の学校の修学旅行を途中でバックレているので」


榛村先生は、目を見開いた。

そして、腕を組む。


「あー、浜松の高校…ああ、なるほど。

鹿賀のとこか」


鹿賀というのは、僕の通っていた高校の担任だった人だ。

えっと、知り合いなのか。


「鹿賀は、大学時代の友人でな。

ちょうど、修学旅行の時に京都で会ってな。

そうか、向こうの学校の逃亡者はお前か」

「僕は、早退すると言っておいたはずなんですけどね」

「だが、鹿賀は捜索してたぞ…私も一緒に探していたからな」


ん?鹿賀先生って男性…あれ?結果的にデートしてないかこの人たち。

ああ、あの人わざとだな。

ダシに使われたみたいだなぁ。


「でだ、ちょっとバックレた後の事を教えてくれるか?」


榛村先生の目が、ちょっと鋭くなっている。

これは正直に話さないとダメだよな。

僕らは、お互いに顔を見合わせる。

そして、頷き合った。


「えっと、まず前提に僕の事はどこまで知ってますか?」

「いや、あんまり…そういえば鹿賀からは聞いてなかったな」


鹿賀先生あのひと、榛村先生とデートしたかっただけじゃないよなぁ。

どうやって、話せばいいのかなぁ。悩む。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る