第78話 旅先 -米原1-

『本日も、JR東海道本線をご利用くださいましてありがとうございます。

まもなく、終点 米原へ到着します。

お出口は、左側です。

ドアから手を放してお待ちください』


到着を告げるアナウンスがされる。

秋山さんは、僕の右肩でまだ寝息を立てている。


「秋山さん、米原に着くよ」


肩を優しく叩く。

うーんと唸り声を上げる彼女。

やがて、むくっと起き出す。


「あれ?私、寝てた?」

「うん、おはよう…まあ、まだ夜だけど」

「あ!ごめんね、新藤くんの肩枕にしてたよね」

「いいよ、今日は大変だったんだし」

「それは、新藤くんもでしょ…あ、着くの?」

「うん、米原に着くところだよ」


ちょうど、ホームに入車するところだった。

少しの揺れがあり停車する。


「じゃあ、行こうか。

一応、ホテルの予約はしていたから」

「え!ありがとう、新藤くん。そっか、ホテル…全然考えてなかった」


横並びに、電車を降りながら話をしていく。

終点だといっても、それほど人はいない。

時刻も23時半を回った所だ。

母さんの話では、米原駅前にあるビジネスホテルらしい。

修学旅行を早退すると話をした後で、僕の電子マネーにちょっと驚く金額の入金があった。

秋山さんの分は、僕が立て替えておこう。

ここで、彼女を遠ざけるのは僕としても違う気がする。

母さんには、明日詳しく話をしよう。

ホームから階段を上がり、改札口へと向かう。

時間も時間なので閑散としている。

僕は、秋山さんの荷物をトランクケースに載せて引いていく。

彼女は、僕の隣をついて歩いている。

今まで気にしていなかったけど、秋山さんって背低いんだな。

今日一日大体一緒にいたのに気付かなかった。

いや、気付くタイミングはあったが心に余裕がなかったのかもしれない。

彼女の身長は、150cmほどかな。

僕とは、頭一つ分くらい違うから。

母さんの話だと西口から出た所と聞いているので西口へ向かい、階段を下りる。

西口を出ると、大きなロータリーと背の高いビル…東横INNと書かれていた。

母さんから聞いたのもここだった。


「秋山さん、あのホテルみたいだよ」

「めちゃ駅前なんだね」

「そうみたいだね」


秋山さんは、首を傾げた。

まあ、僕が予約したわけじゃないからな。

流石に詳しいことは知らないんだよね。

てか、ここって電子マネー使えるのかな。


「新藤くん、お弁当屋さんだって」

「明日買いに来ようか」

「うん、気になるよね」


井筒屋という看板が見えた。

やっぱり、その土地のご飯を食べるのは魅力的なんだよね。

それから、僕たちはホテルへと向かった。


ホテルのエントランスへと入ると正面にあるフロントへ行く。

フロントには、人がいなかったがすぐにスーツの男性がやってきた。


「先程予約しました新藤ですが…」

「はい、承っております。

シングルルームを2部屋ですね」

「はい」

「料金は…予約時にいただいております」


母さんが、予約の時にオンライン決済をしてくれていたようだ。

良かった、ありがとう。母さん。


「では、こちらにサインをお願いします」


僕は、宿泊名簿に住所氏名などを記入していく。

あ、領収書貰っておいた方がいいかな。

えっと、うちの名刺ってあったかな。

僕は、記入後に財布を確認する。

そこに、僕の名前で作られた名刺を発見する。

別に役職があるわけではない。

ただ、買い出しとかの時にお店の名前言うのがちょっと気恥ずかしくて。


「すいません、領収書貰えますか?」

「畏まりました。宛名は如何されますか?」

「この名刺のここで」


そう言って、男性に名刺を見せウチの会社名を記入してもらった。


「では、こちらがお部屋の鍵になります。

朝食券は朝右手の朝食会場でお出しください。

ご不明な点がありましたら、フロントまでご連絡ください」

「ありがとうございます」


僕は、鍵を受け取る。

鍵には、『502』『503』と書かれていた。

5階のようだ。


「じゃあ、秋山さん」

「あ、うん。ごめんね、いろいろ。ありがとう」

「ううん、いいんだよ」


僕らは、エレベーターで5階に上がる。

そして、それぞれの部屋へと向かう。

部屋の前に着くと、鍵を通す。


「じゃあ、秋山さん。また明日。

おやすみ」

「うん、新藤くん。また明日。

おやすみなさい」


僕らは、それぞれの部屋へと入った。

僕は、ベッドへ倒れ込むように眠りに就いた。


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米原一日目の夜でした。

次回は、米原観光します。

ちょっと、話数長くなるかも。

今までの旅行の話は、回想だったので会話調でした。







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