第39話 旅愁2 -室戸-
8月3日。
鳴門から室戸岬まではなかなか苦行だった。
特に目ぼしい物も無く、僕らはひたすらに海沿いを走った。
特に補給場所もなかった。
その所為か、久瀬原さんが鳴門を出る時に多めに水分と食料を買い込んだ。
海が綺麗だと思うこと以外何もなかった気がする。
130kmめちゃめちゃ走ることになった。
朝早くに出て、夕日が沈み始める頃に着いたんだと思う。
この日には、もう身体の痛みもだいぶ落ち着いてきていた。
それが分かっていたのか、久瀬原さんがその旅程を立てた。
道中すごくつらかった。
日和佐を越えた辺りからは山岳が増えてきた。
海と言うよりも山を見ることが多くなってきていた。
「尚弥、辛いときは無理するな。
休憩したって良い」
「はい、でもいまは走りたいんです」
「おう、尚弥のペースでいいからな。
俺は、それに合わせるだけだ」
そう言って、久瀬原さんは声を掛けてくれた。
その夜は、室戸岬にある夕陽ヶ丘キャンプ場に一泊した。
久瀬原さんの設営は、とても手際が良くあっという間だった。
ちょうど、キャンプ場に着いた頃。
水平線に沈む夕日が見れたんだけど絶景だったよ。
キャンプ場が、高台にあったからね。
◇
「あ、尚弥くん。もう面会時間終わっちゃう」
「え、もうそんな時間なんだ」
時刻は、もうすぐ17時を回ろうとしていた。
未桜は、しょんぼりしていた。
彼女の頭を、ゆっくり撫でる。
「未桜、僕も会えないのは寂しいけどさ。
明日も来てくれるんだろ?」
「うん、朝から来るからね」
「待ってるよ」
そう僕が言うと、未桜は嬉しそうに笑みを浮かべた。
可愛い笑顔だと思った。
「じゃあ、また明日。未桜」
「う、うん。また明日・・・看護師さんに浮気しちゃダメだからね」
「しないよ、僕は未桜一筋だよ」
「えへへ」
そう言って、手を振って病室を出て行く未桜。
久瀬原さんと一緒に旅したのは8月1日から8月13日の約2週間。
その間に、筋トレと合気道の型を習った。
8月14日に未桜に会って、8月15日から半月を掛けて地元まで戻る間、筋トレも型の練習も休まずやった。
あの日々があったから姿勢も体幹もよくなり身長が目に見えて伸びた気がする。
そう言えば、久瀬原さんと一緒の時にはストレッチもよくしてもらってたな。
あれは、マジで痛かった。
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