第37話 旅愁2 -高松-
大阪港から神戸までは30分ほどだった。
身体がまだ痛いこともあって今日走ることは止めていた。
そのあと、久瀬原さんとフェリーを乗り換え香川県の高松港へ向かったんだ。
「おし、尚弥。ちょっと服脱げ」
「え、ここでですか?」
僕らは、のびのびスペースで寛いでいた。
流石に、ここは人の目があるんだけど脱ぐの此処で?と思った。
「背中怪我してるだろ、薬塗ってやるからほら脱げ」
「お見通しなんですね」
「まあ、俺は仕事柄な。
ほら、恥ずかしがるな」
久瀬原さんは、僕のシャツの背中側を無理やりめくる。
「おお、だいぶ切ってるな。
大人しくしてろよ」
「いった、痛いですよ。久瀬原さん」
「我慢しろって」
久瀬原さんは、自身のリュックの中から救急セットを出して僕の背中に手慣れた様子で、薬を塗る。
地味に痛い。
「切り傷に打ち身、お前これどっかに落ちただろ」
「えっと・・・」
僕は、振り返ることもなく語尾を濁す。
「なあ、尚弥。
大阪まではどこを通ってきた?」
「伊勢から・・・」
「はぁ、わかった。お前、台風の中走って来たな。
なるほどな、大体わかった」
僕の腹回りに包帯が巻き付けられていく。
手際が良すぎる。そう思った。
バンっと背中を叩かれる。
「ほれ、終わったぞ。
まだ、高松までは時間はあるんだ。
今までのこと話してみろ」
僕は、渋る。
話していいのかと。
でも、結局久瀬原さんには話すことになった。
◇
「その久瀬原さんとはどれくらい一緒にいたの?」
「大体、2週間かな。
四国一周を一緒に回ったから、確か高松に着いたのが8月1日だったと思う。
神戸まで帰ってくるまで一緒だったから未桜と会う前日までかな」
久瀬原さんにはいろんなことを教わった気がする。
未桜は、ベッド脇の椅子に座りながら僕の顔を見ていた。
なんだか、照れるな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます