第35話 旅愁2 -熊野古道 女鬼峠-

伊勢を出て数時間。


大雨で視界が悪くなってきた。


熊野まで辿り着くと僕は、ホテルを探したが空きはなかった。


天候が悪いけど僕は仕方なく、テントを張ることにした。


そして、それが一番悪かった。


僕は、天気予報を見ていなかった。


朝から天気がいまいちなのは気づいていたけど。


そして、僕はその日の夜、台風に巻き込まれた。


紀伊半島に上陸した台風の影響で僕が寝床に選んだ場所は近場にあった湖が増水し・・・いや、あれは違うな氾濫かな。


寝ている間に僕は、湖に放り出された。


流木や石なんかで身体中傷だらけになった。


それも、背中が異常なまでに傷だらけになっていた。


幸い、その湖は他の河川とは繋がっていなかったから流されることまではなかったんだけど。


気絶から目が覚めて、僕は明け方に意識を取り戻した。


まあ、流された地点はそこまで離れていなかったから自転車もテントもすぐに回収できた。


着ていた服はズタボロだったから、着替えて僕は熊野を後にして、そこから西へ・・・大阪へ向かったんだ。



「その時の傷・・・残っちゃたんだね」

「うん、前側はそんなに目立たないんだけど・・・背中はだいぶね」


僕からしたら背中は、まったく見ることができない。


背中に触れた時に分かる程度だ。


それでも、最初の時ほどは感じられない。


傷口はもう閉じているから。


「そういえば、その台風って7月31日くらいだったよね?」

「そうだよ、未桜と京都で会うまでにまだ半月位あるかな」


未桜と京都であったのはお盆だった。


まあ、そこまでいくまでに僕は何度も怪我をした。


四国にいた時間もとても長かった気がする。


僕の脳裏に、ガタイの良い男性の姿が過る。


久瀬原 時雨さん。


彼との旅も2週間近くあったんだと不意に思った。


いつも野球帽を被っていたな。


今どうしてるだろう。久瀬原さん。


「その後は、僕大阪に向かったんだよね。

確か、2日くらい掛かった気がする」


大阪・・・久瀬原さんと出会った場所だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る