第23話 復讐 -タイマン-
男の右ストレートが、僕の顔目掛けて放たれた。
僕は、半身で避けて彼の手首を取る。
そして、瞬時に力を籠めた。
「くっ、放せ!」
僕は、男を力いっぱい投げ飛ばす。
彼は、カラスの破片の上に叩きつけられる。
「ぐはっ!いてぇ」
男の身体には、所々ガラスが刺さっている。
「それで?誰?」
「はぁ?ふざけんな」
何をふざけるななんだろう。
本当に知らないんだけど。
「お前、瀬里の幼馴染みのぼんぼんだろ」
「『元』だな、あんなのと幼馴染みだったなんて汚名でしかないけど」
男は立ち上がり、僕に駆け寄ってくる。
タックル?
そう思わしい動きで体当たりしてくる彼を避ける背中に掌底を叩き入れ男の身体を崩す。
彼は、頭から床へ盛大に転ぶ。
「それで、誰なのかな?」
「九鬼 猛知らないわけないだろ」
「え?知らないけど、誰?自意識過剰な不良?」
男・・・九鬼 猛?は、再び立ち上がりポケットから何かを取り出した。
それは、バタフライナイフ。
明らかな殺意。
肌が、ピリピリする。
相手の呼吸が聞こえる。
僕の脳裏に、ふと四国で共に旅をした帽子の男性 久瀬原 時雨さんの顔が過った。
そうだ、こういう時こそ冷静にならなきゃ。
ですよね、久瀬原さん。
相手の呼吸と僕の呼吸を合わせる。
荒々しい呼吸の音。
そして、彼は急に大きく息を吸った。
「死ね!」
九鬼は、僕の腹を目掛けて刺そうとしてきた。
ギリギリまで、引き付け彼が右手で持つナイフを避け彼の後ろに入り込む。
それと同時に、左手で腕を掴む。
そして、側頭部に手刀を叩き入れる。
彼は、床に倒れ込む。
「くそ、当たらねえ」
だって、動きが単調なんだからそりゃあそうだよ。
「なにが、虚弱体質の陰キャだ。瀬里のやつ嘘つきやがって」
「それで、九鬼・・・猛?だったっけ?何の用なの?
お遊戯に付き合うほど暇じゃないんだけど」
「うるせぇ、雑魚が」
九鬼は、ナイフを振り回し始めた。
やけくそになってるな。
ちょうど彼の背後には非常口があった。
そこが、少し開いているのが僕の側から見えた。
僕は、少しずつ後方へ避けていく。
それは、すぐに終わりを迎える。
僕の背が、窓ガラスにぶつかる。
そして、ドスンという音と共に九鬼は気絶した。
彼の後ろには、父さんが立っていてダブルスレッジハンマーが脳天に直撃したからだ。
僕は、倒れてくる彼のナイフの軌道から避ける。
「こいつは、例のリーダー格の九鬼 猛だな」
「父さん、助かったよ。
しぶとくて倒し切れそうになくてさ」
「良く言う・・・余裕そうだったじゃないか」
「そうでもないよ」
僕は、九鬼から離れたところで腰を下ろした。
父さんは、その間に彼を縛り上げ通報していた。
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リーダー格 九鬼 猛。
九鬼組の次男で、頭の足りないただのチンピラ。
彼が捕まることで九鬼組は家宅捜索に入られることに。
次回、復讐 -記憶喪失-へ続きます。
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