第20話 復讐 -無銭飲食-


事務所の中には、母さんが事務仕事をしていた。


「あら?尚弥?どうしたの?」


母さんが首を傾げている。


ただ、その視線は未桜を捉えていた。


「彼女は、篠田 未桜さん。えっと、僕の友達?でいいのかな?

未桜、僕の母さんだよ」


「あのあの、初めまして篠田 未桜です。

えとえと、私としては尚弥くんとお付き合いしたいです」


「あらあら、尚弥にこんなに可愛いお友達がいたなんてね。

安心したわ、あーんなどうしようもない子より貴女の方が信じられる気がするわ」


未桜は、両手で口を覆って涙を浮かべていた。


僕の胸が、ズッキンと痛んだ。


僕は、無意識に未桜を抱きしめていた。


「・・・尚弥・・・くん?」


「ごめん、僕」


「ううん、いいの。尚弥くんならいいの」


僕らは抱き合っていた。


いつの間にか、僕は未桜に惹かれていたのかもしれない。


あの日出会ったあの子に雰囲気の似た彼女に。


「うふふ、尚弥。そういうことは、後にしなさいな。

まずは、用件を教えて」


用件?あ、すっかり忘れてた。


未桜を紹介することで忘れちゃったよ。


僕は、彼女から離れる。


そして、母さんに視線を向ける。


「僕が、旅に出てた理由話してなかったよね?」


「ええ、聞いてないわ」


「僕は、瀬里に告白してフラれて失恋旅行に行ってたんだよ」


「そうなの?じゃあ、誠二のとこの尚弥にツケてる飲食代って払うことないわよね」


母さんは、分厚い書類を僕に渡してきた。


そこには、レシートが張られていた。


「1枚ごとに1日の清算分よ、全部で35枚くらいあるわ」


35枚・・・35日分あるってことか。


僕は、1枚ずつ見ていく。


合計金額だけでも凄い額の日がある。


「母さん、弁護」


「その辺は、実は手配済みで貴方の返事待ちなのよ。

もう、いいのよね?」


「これはダメな奴だから、いいよ」


「じゃあ、あっちの親御さんにも連絡してっと。

あ!あの子の治療費も必要よね」


「治療費?」


「ええ、彼女が連れてくるグループの人に怪我を負わされた子がいるのよ、警察も呼ばないとね」


母さんが、対策を練っていく。


とても、怖い笑みを浮かべている。


「あの、お義母様」


「あらあら、なにかしら未桜ちゃん」


「あの、これとかどうですか?」


未桜は、母さんのそばへいき何かを見せていた。


母さんは、目を丸くした。


そして、飛び切りの笑顔を浮かべる。


凄い怖い。


「このデータもらってもいいかしら?」


「はい、もちろんです」


そして、未桜が母さんに何かのデータを渡す。


何のデータなんだろう。


気になるけど、少し怖い気がする。


それから、母さんはいろいろなところに連絡を入れていった。


-------------------

1日の清算金額

最低でも2万円から10万円前後

最低でも4人

最大で20人くらいで利用していた。

清算金額に含まれていないもので

器物破損&傷害などもある。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る