第15話 旅愁 -岡崎-
翌日は、朝早くから竹島というところに向かった。
神社があるらしいから寄ってみようかと思ったんだ。
大きな橋があって・・・えっと、これこれ写真だとこんな感じ。
橋の先には、小さな島があるだけ。
島は、神社だけしかないんだよ。
でも、神社は上の方にあるから島をぐるっと階段で巡っていく感じなんだよ。
境内は空気が違う気がした。
お参りした後は、心がだいぶ落ち着いた気がした。たぶん。
この頃も、前嶋さんからずっとメッセージが来ていたからうんざりしてたんだ。
その後、岡崎に向かって走り出した。
岡崎までは、20kmくらいだったかな。
お昼頃には、岡崎に辿り着いていたと思う。
◇
「新藤くん、岡崎だとなにしたの?」
「えっと、お昼は味噌カツ食べて岡崎城に登城したよ」
僕は、スマホを操作して写真を表示する。
お昼に食べた味噌カツ定食に、岡崎公園の写真。
「これを撮った後にスマホの充電切れちゃったんだよね」
「そっか、前嶋さんから頻繁にメッセージ来てたんだもんね」
「うん、なんとか電気屋で太陽光から充電できるバッテリー買ったんだけどさ。
流石に無限じゃないから次の日まで電源を落としておいたんだ」
あれ少し高いんだよね。
これからも使えるからいいけど。
「あれ?尚弥君、バイトしてるんだよね?
旅行の期間って?」
「あ、それは店長に夏休みは忙しくなるかもって言ってあったんだよ。
名古屋に着いたあたりかな、店長に事情を話して明日からバイト復帰することになってるよ」
「何のバイト?」
僕の隣に座る未桜が興味津々と言う感じで僕をじっと見ていた。
この目に見られるととてもドキドキするな。
「ファミレスだよ」
「え、どこどこ?」
未桜が勢いよく僕の肩を掴み、身体を揺する。
そんな、彼女の姿をクラスメイト達は暖かな目で見ている。
なんで?
「スポーツジムの隣の」
「え、あそこなの・・・今度いくね」
未桜が、ニッコリと笑う。
可愛いな。
スポーツジムの隣というか併設のファミレス。
実は、父さんが働いているジムにある。
店長も実は親戚だったりする。
ジム内から来ることもできるけど、外からも利用できる。
「未桜は、なんでそんなに僕の事構うの?僕、君に何かしたかな?」
そう言うと未桜は、凄く真っ赤な顔になった。
そして、視線が行ったり来たりしている。
「ずっと、好きだったんです。
ひどいです、尚弥さん、こんな大勢の前で告白させるなんて」
僕は、絶句した。
未桜は、両手で顔を覆った。
僕は、バカだ。
彼女の好意に気づかないんて。
僕は、未桜の頭を撫でる。
ビクっと肩を震わせる。
「未桜、ごめん。僕、気付かなくて。
ありがとう。でも、まだ未桜の事あんまり知らないから友達からでいいかな?」
「はい、よかった。今日勇気出して」
周りの視線が痛い。
未桜は、覆っていた両手を離した。
まだ、彼女の顔は赤い。
「でも、いつから?」
「うぅぅ、私ずっと尚弥君のそばにいたんだよ。幼稚園からずっと」
「え!」
「尚弥君はずっと前嶋さんと一緒にいたから気づかなかっただけなんだよ。
だから尚弥君が優しいこと知ってるよ。
さりげない優しさも、みんながやりたがらないことも陰でしていてくれたことも」
知らなかった。幼い頃からそばにいたことに。
僕は、どれだけ前嶋さんしか見ていなかったんだろう。
「今日だって、尚弥君が屋上に行ったの見えたから後を追ったんだよ。
やっとお話しできてうれしかったの。
いつもは、前嶋さんが怖かったからずっと尚弥君が一人になるのを様子伺ってたから」
未桜の気持ちが嬉しかった。
僕のことを理解してくれる人がいたことに。
「新藤くん、篠田さんって普段大人しい感じだから私達も驚いてるくらいだから、ホントの事だと思うよ」
「篠田さん、今日すごく可愛い」
「恋する乙女ってかんじだよね」
「みんな、もう辞めて」
絶叫する未桜を尻目に女子たちが盛り上がり始めた。
彼女は、涙目になり顔を真っ赤にしていた。
うん、未桜は可愛い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます