第12話 旅愁 -蛙化-
「さてと、続きいいかな?」
「え、新藤・・・台風の話が気になるんだけど」
男子の一人が僕にそう言った。
気になるのか・・・。
「僕さ、三重・和歌山辺りにいる時に巻き込まれて滑落したんだ」
「え、大事じゃん」
「そこで、生死の境をさまよっていたみたいでさ。
気が付いたときには、丸一日くらい時間が経っていたんだ」
「良く生きてたな」
「増水した川に落ちて、偶然流木に引っかかってたんだ」
「それ、一歩間違ったら死んでる奴だから」
僕は、あの日。
死んだようなものだ。
「たしかに・・・でも、だからこそ変わろうと思ったんだ。
まあ、その後から前嶋さんアレルギーになったんだけどね」
「くすくす、アレルギーって」
「なんだっけ、あれじゃない?蛙化現象」
かえるか?
なんだろう、それ。
女子たちがなぜか盛り上がっている。
「なにそれ?かえる?」
「蛙化現象よ。
好きな人がある日突然気持ち悪くなるんだって。
そんな感じじゃないかな?」
「確かにそんな感じかも。
その日から、前嶋さんからのメッセージ見るだけで気持ち悪くなったから」
なるほど、これが蛙化現象って名前があるのか。
僕は、台風の後から瀬里からのメッセージは既読すらしなくなった。
それが、今日削除した2000件のメッセージだった。
「でも、よかったよ。
ずっと、心配だったから。新藤くんの事」
「心配?」
「そうだよ、前嶋さんの横暴さや傲慢なところ一身に受けてたの新藤くんだから」
「私達、ずっと助けてあげたかったんだよ。
でも、前嶋さんが怖かったから・・・今日、尚弥くんが彼女が来たら行かないって言ってくれた時、胸がすっとしたんだ」
そう言ってのは、いつの間にか来ていた未桜だった。
彼女は、僕の隣に座っていた。
「え、未桜?」
「はい、未桜さんですよ」
「いつからいたの?」
「え、割と最初からいました。
気付かなかったんですか、ヨヨヨ」
未桜が、ウソ泣きをしている。
でも、可愛いと思ってしまう僕がいた。
「新藤くん、顔顔赤いよ」
「え、そ、そんなことないよ」
なんだか、顔が熱い。
未桜にペースを握られてる気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます