第10話 初旅 -拡散-
僕らは、クラス総出でカラオケに来ていた。
あ、総出じゃないな。
瀬里はいないんだから。
カラオケルームは、パーティールームがちょうど空いていたのでそこに10人ずつで入っていく。
ただ、入れ替わりで僕のいるルームにみんな集まってきていた。
「それで新藤、なにがあったんだ?」
「うーん、まあみんなも気づいてるとは思うけどさ。
終業式の日に前嶋さんにフラれたんだよ。
『は?別に尚弥の事なんか好きじゃないし』って言われて」
「「「ひどい」」」
女子から声が上がった。
僕は、その反応に驚いていた。
そして、一人の女子が口を開いた。
「新藤くんが、いつも前嶋さんにひどいこと言われてもいろんなフォローしていたの知ってるよ。
私だけじゃない、ねぇ」
「うん、みんな知ってるよ。
それなのに「なんか」ってひどすぎるよ」
「それに、アイツは今日僕のことがわからなかったんだ」
「それは、仕方なくねぇか?
こんなにも容姿が変わってれば」
そう、男子の一人が言った。
僕は、そんなに変わってるんだろうか。
「でも、新藤くんと前嶋さんって幼馴染みでしょ。
ずっと一緒にいたんだからわかってもおかしくない?」
「確かに・・・まあ、そんなことよりもさ。
その後の話聞かせてくれよ」
何人かがスマホを僕に向けていた。
どうやら、別のルームに動画を送っているようだ。
たしかに、これなら全員が知ることになるか。
・・・あれ?それにしては多いような。
「ああ、これ?みんな知りたいみたいだから他のクラスの子達にも見せているのよ」
「なるほど・・・なんだか、みんなありがとう。
結構長い話になるけど大丈夫?」
「まだ、お昼だしフリータイムで入室みんなしたから大丈夫じゃね」
そう言われて、確かにと思った。
今が12時で、フリータイムは20時まで。
なかなか、時間がある。
「じゃあ、まずは最初の日の話かな。
最初の日は、浜松を出て豊橋まで行ったんだ」
そうして、僕はこの1か月半の旅を振り返っていくのだった。
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次回から第1章 追憶がスタートします。
尚弥が1か月半どんな旅をしてきたか、お楽しみください。
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